第6話 外の世界、初めての依頼
一人称だとどうしても会話回が続いてしまう。
これが普通なのだろうか?
「おぬしら、しばらくこちらで住むのかの?」
冒険者のカードを一枚、冒険者の証を俺とウィリーの二人分くれたセイドさんは、そう質問してきた。
「んー…どうだったっけ?ウィリー」
『あれ?そのあたりとかって、その手紙にかかれてたりしなかったの?』
「いや、大体をウィリーに丸投げした、といった旨がかかれておるのう」
『…あの村長め…!』
「で、どうするのじゃ?」
『…そうね。流石にすぐ戻るってのは味気ないし。しばらくここに滞在することにするわ。冒険者とやらの仕事も見ておきたいし、ね』
「やはり知識人じゃのう、ウィリーは」
『私は魔獣よ…』
「なら知識獣かのう?」
『それもそれでおかしい…!』
「まあ、それらはさておき。滞在するとなれば、部屋は必要じゃろう?用意はしておる」
『おお、ありがたいわね』
「本来ならば金を払ってもらうところじゃが…」
『まあ、私たちが持ってるはずもなく』
「しばらくは依頼をこなしてもらうことにするが、いいかの?」
『いいわよ…ってなんで私が答えてるのよ!』
「保護者だからではないかのう?」
『いつ保護者に…』
「最初から、じゃろう」
「ええっと、これどういうこと?」
『しばらくこっちに残ることになったの。そのついでに、冒険者としての仕事をしていくのよ』
「わかったー」
「…ところでウィリーよ」
『…なにかしら』
「ウィウィが寝てからの対策なんぞしとらんぞ…?」
『何のこと?』
「あの火のマナが云々の件じゃ」
『…ああ、あれは最近は落ち着いてきてるから、木に発火するとかはないわよ』
「それならいいわい」
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「えっと、ここでいいんだよね?」
『あってるはずよ』
今日は、冒険者としてはじめての仕事をしにいく日。少し緊張はするけど、モノさんが一応見に来てくれるらしくって、その待ち合わせをしているところなんだ。
「ああ、いたいた」
「あ、モノさん!」
『今日はお世話になるわね』
「こちらこそ。まずは冒険者になったことを祝わせてもらうね。おめでとう」
「ありがとー」
「あはは、今まで他人だったのに、急に同居人になるなんて思わなかったよ」
「え?」
『同居人?』
「あれ?聞いてないのかい?二人がもしこちらに滞在するってなったら、二人とも特殊だし、誰か事情を知っている人が必要だったらしくて。ある程度会話している、僕が行くことになったんだ。よろしくね?」
「よろしくー」
『…よろしくね』
「ん?どうしたの?ウィリー」
『…なんとなくモノさんに違和感を感じたのよ』
「あらら。もしかして気づかれちゃったかな?」
『ってことは、あたり?』
「たぶんね。まあウィウィもいるし、今は秘密でね?」
『…はーい』
「なんの話?」
「『秘密』」
えー。
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とりあえず依頼を取りに行こう、ということになって、冒険者ギルドに戻ってきた俺たちだった。今度はなんだか紙がいっぱい貼られているところにきた。
「さて、手ごろなのはーっと…懐かしいなあ」
『懐かしい?』
「僕もなんだかんだでCランクから冒険者始めてるからね。今でこそ副ギルド長だけど、昔はこうやって簡単そうな依頼を手にとってみて、食い扶持を稼いでたものだよ」
『へえ、モノさんも苦労してたのね』
「そっちこそ」
『…まあね』
そうやってしばらく探してもらって・・・
「お、これならちょうどよさそうだね」
「見せてー?」
『何々?【イファルの実の採取】…って、イファルの実ってさっき食べてたものじゃないの?』
「イファルの実は割と使用用途が多いんだよ。食べるだけじゃなくて、硬い皮を利用して、簡単な容器にしたり、それ自体が何かしらの素材になったりする。さっきのはもう剥けてたからやわらかかったけどね」
「で、それを取りにいくの?」
『そうみたいね。それじゃ早速、依頼受注の手順について教えて頂戴』
「…本当に保護者だね」
『それは言わないでほしいわ…』
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「まずはとりあえず、依頼書をこの掲示板から剥がす」
モノさんは、さっき読んだ依頼書を取った。
「次にこれをあっちの受付に見せにいくよ」
そういって、初めて来たときにモノさんが向かった場所に皆で行った。
「さて、このまま僕が持ってると、僕が受注しちゃうことになるから、ウィウィ?」
「?」
「これを受付嬢に見せて、受注することをきちんと言うんだ。いい?」
「わかったー」
『んー…そのときって私が言うことはできないの?』
「いや、一応できるよ。ウィリーはウィウィの召還獣って扱いになってるはずだからね」
『わかったわ。まあ今はウィウィに任せるわね』
「はーい。お姉さん、これ受けるね!」
「はい、C級のウィウィさん、依頼の受注を確認しました。詳しいことはモノさんに聞いてください」
「…ヴィアさん、丸投げはよくないと思うんだけど」
「事実詳しいじゃないですか。パーティーとしてついでに受けさせておいたので、心置きなく行ってらっしゃい、です」
「そうかい…。まあ、助かったよ。ありがとう。それじゃ行こうか」
「『おー!』」
じゃあ、初めてのお仕事、がんばろう!
ありがとうございました。