第3話 戦闘技術と、ウィリーの形態
ウィウィもウィリーも化け物なんだろうか?
「では早速じゃが。おぬし、マナがない空間を経験したことはあるかね?」
突然質問される俺。マナのない空間?
「…?ないよー」
『…あれ?確かあの時って…』
「どうしたの?ウィリー」
『いや、魔法を使った後の空間って一時的にマナ消えるんだったわよね?』
「そうじゃが?」
『…じゃあ毎日経験済みなはずだけど…ああ』
「毎日経験済みってどういうことじゃ…」
「ああ、ってなに?」
『そういえばいつも寝てたわねえ…じゃあ意識ある時のマナ無し空間はやってないのね』
「ふむ。それならやる価値はあるのう」
「?」
ウィリーは知っているみたいだ。でも教えてくれないみたい。まあいいけど。
「では気を取り直して。今からは、マナがない状態を人為的に作り、その中でモンスターと闘ってもらうのじゃ。闘いにおいての技術を持っている、ということについてはすでに手紙で証明されているので問題ないぞい」
『ところでどうやって闘うの?』
「ふむ。本来ならば、技術云々のときに証明書が必要なのじゃが…いかんせん体術における基準なんぞ存在せぬ。使用する者が少ないからの。よって…」
「よって?」
そこでセイドさんは一拍置いて、話した。
「先ほどのマナを元に内容を決めようと思う…のじゃが。如何せん8桁なんぞ聞いたこともない。アテ、あるかの?」
『そこで私に振らないでほしいわ…まあ、一番いいのは闘い慣れている私ね。それの様子を見てもらって、ある程度の判断をしてもらってから本番に移ったほうがいいと思うわ』
「ふむ。ではお願いできるかの?」
『任せなさい!』
えっと、ウィリーと俺が闘って、その結果で闘う相手が決まるの?いいのかな?
『少なくともそれくらいしか、実力を安全に見る方法がないのよ。いいかしら?』
「…まだよくわからないや」
『セイドさんはギルド長だってことは覚えてる?』
「うん」
『つまりそういった戦いの経験も十分あるってわけ。でも、一応年ではあるし、おまけに型としては魔法使いに部類される。そんなセイドさんが接近型のウィウィと闘って、安全なまま実力を確認できると思う?』
「…難しいね」
「もしおぬしの実力が7歳相当だとするなら、まだわしにも勝ち目はあるんじゃがな。如何せん既に大人、それも全盛期に等しい炎溶人と闘って勝つ、そんなおぬしの実力が7歳相当なはずないわい」
『でも、私なら、一応この中でウィウィと打ち合うこともできる。おまけに私は魔獣よ?冒険者の実力の確認にも使われるほどのものよ。十分、今の条件にあっているはずだわ』
そこまでいうなら・・・
「…お願いします」
『よろしい』
「では早速始めてもらっていいかの?」
「『はい』」
「では、魔法陣展開・・・よし。はじめ!」
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空気中のマナが、ゆっくりと消えていくのを感じつつ、ウィリーと俺は向かい合っていた。
『じゃあ、始めようかしら?』
「どっちが先に出る?」
『それも自由なんじゃないの?』
「それもそうだね…ッ!」
『!』
いきなりだけど、行かせてもらうよ、ウィリー。俺は自らの呼吸を整えて、思いっきり突っ込んだ。もうマナは周りにはない。己の中のマナこそがすべてなんだ。
『甘い!』
「ッ!」
でもウィリーだって魔獣だ。マナの量は、普通の人のそれを上回る…らしい。それに、小柄なせいか、どうも人より反応速度は速いみたいだし。もちろんこの攻撃に対応して、ファイアゴーレムを当ててくる。
「てあっ!」
『はあっ!』
既にウィリーは、あの人型ゴーレムに変化しているから、お互い格闘戦でぶつかり合う。炎だけど、形ある炎だとかなんとかって前教えられたように、十分な硬さは持っているみたいだ。
『へえ、前より速くはなってるのね』
「ウィリーと訓練してるおかげだよ」
『それはありがたいわ』
でも俺たちは何度も闘った経験があるんだ。会話しながらでも、相手の流れは掴めるくらいに。
『じゃあ、ちょっとだけ変わったほうがウィウィの為かもしれないわねぇ…』
「・・・」
え?
『慣れてはいないんだけどね。暴走する直前に抑えれば問題ないかしら?』
「…えっと、ウィリー?何言ってるの?」
『見せてあげるわ。この紋章の力…偶然見つけたこれ、あんた相手なら試せるわよね?』
攻撃をやめたウィリーは、なんとなく楽しそうな声色で、そう俺に話しかけてきた。・・・なんだか寒気がするなあ。
『さて。さっそくだけどウィウィ』
「なに?」
『今までは人型だったけど、今回は変えさせてもらうわね・・・ッ!』
そう言うと、ウィリーは自らの体を改めて火で包み始めたんだ。その炎は、今までも見たことはある。けど、いつもとは違う様に回っていた。今までのような人の形ではなく、弱き獣を狩る、強き獣の様に。
『最近気づいたことなんだけど…』
その仮初の肉体は、歪な爪を持った四足にて立ち。
『この紋章、いくらか別のものになれるようになってたのよ』
肉食獣として持つかのような、鋭い牙を生やして。
『ウィウィ、あんただけが強くなったわけじゃないってこと…』
長い長い、殺意に満ちたとげを持つ尻尾を持っており。
『この闘いで証明してあげるわ…!』
背中から生えた、一対の翼によって、空に浮こうとしていた。
『この、炎獄竜形態で!』
それは、まさに獄炎を宿した、竜だった。
「・・・わーお」
ありがとうございました。
どうでもいいことですが、空気中のマナは基本無属性です。でも変換は効くんやね。