炎獄の闘士は何を見る
二章の前に、ひとつどうでもいいことを。
スルーはしても支障は出ません。
「あーあー、喉痛い…」
ガチャリと、何も音のしなかった書斎に変化が訪れた。一人の男が入ってくる。
「風邪かね?よくわからんが。」
その男は、ボサボサの頭を掻きながら、パソコンを起動させた。
「さーて、今日も書きますか…んあ?」
やけに多いアプリに目を通しつつ、彼は一つのフォルダを見つけた。
なぜか、それには紅い眼が描かれている。手作りのようだ。
「メール?まあ今はスルーだ。炎帝、炎帝っと」
そういって彼はそのフォルダを開く。中はいくつものデータがあったが、彼は迷うことなくテキストファイルを取り出す。もう位置も覚えているようだ。
「…そういえばここまで進めたんだった…想像力働くかね?これ」
そのファイルの中身を確認しつつ、それに編集を始めようとしていた。
「仕方ない、はじめなきゃな。追加世界、接続!」
彼は作家だ。すこしアレな人ではあるが。
彼自身は現実にいる。この世の焔の一つも、己の力で操ることもできない現実にいる。
だが。仮にそれが。とあるもう一つの道をたどっていたとするなら?
”もし、彼がその力を操れる体を持っていたとしたら?”
ウィウィ・リベルクロス。
それは、自分と違うもう一つの道を辿ったとされる、もう一つの自分、もう一つの生き方。
生まれながらにして人を外れた者である彼の道のりを。
まるで、己が聞いていたかのように。
まるで、己が見ていたかのように。
彼はまた、一つの物語を創る。