第17話 外へと向かう道
淡白に終わらせようとしたら短くなって、割と早くできた。
やっぱりシリアスは似合わないね。
ウィウィが産まれて早7年。ウィリーというファイアラットの友達(?)ができたり、ミルとの戦いで勝利したり、ご先祖の具現者である、ウィウィ夫妻と会ったり。いろいろなことがあったために、少なくともこの村に、本来あるべき量以上の活気があった7年だっただろう。
しかし、それも今日で一時の終わりを告げる。
「ウィウィー!ウィリー!早く来てー!」
「『はーい!』」
一階から聞こえる呼び声に答える声二つ。この二つの声こそがウィウィとウィリーだ。尤も、ウィリーの声はマナを震わせ、擬似的に音を出しているだけであるため、声といっていいのかは定かではない。
「持ち物ってこれでいいんだよね?」
『待って、これ無いんじゃないのかしら?』
「…おおう」
どたばたと音を出しながら、荷物整理らしきことをやっている二人。
「…よしオッケー!」
『急ぐわよ!』
「おー!」
そしてまたどたばたと音を出しながら降りてくる二人。そこには、ウィウィの母、ミルと・・・
「…って、誰だ?」
『あら、見知らぬ顔』
眼鏡をつけた、茶色の髪の男性がいた。
「母さん、この人だれだ?」
「…ああうん、この子が昨日の今日で覚えてるはずなかったか…」
『んー…たしかこの人に、ふもとの町まで連れて行ってもらう…だったわよね?』
「ありがとうウィリー。それではそろそろ自己紹介をお願いします、モノさん」
そういってミルは茶髪の男性のほうを向く。
「こんにちは。グレウス火山のふもとの町、エルスから来ました。冒険者ギルドの副ギルド長を務めさせていただいている、モノです。よろしくお願いします」
「『よろしくおねがいしまーす!』」
「はい、では…粗方のことはミルさんが教えた、ということで、これからのことだけ話しますが、いいですか?」
「お願いします」
『ウィウィには私が教えとくわ』
よくわからないという表情で視線を動かすウィウィをよそに、話は進む。
今日は、ウィウィが7歳になる日だ。そして、炎溶人は、7歳の頃に一度火山の外に出る、という習慣がある。社会を知る、という理由もあるが―――――
―――――「冒険者適正」を判断してもらう、というのが大きな理由だ。
炎溶人は基本、他の種族よりもしぶとく、また力やマナが強いことが多い。炎の適正があることが割と重要な冒険者という職業は、炎溶人という種族にとっては天職なのだ。ただ、冒険者になるためにはいくらかの手順が必要な上、成長しきった時に急に冒険者になりたい、と言い出して、力が足りない、なんてことになる可能性も捨てきれない。そのため、大人になっておらず、また成長の方向性がわかるちょうどいいタイミングである、7歳で適正の判断をしてもらうのが一番いいのだ。
『―――――ということなの。わかった?』
そんなことをウィリーから聞かされたウィウィは…
「・・・」
『…どうしたの?』
「・・・zzz」
寝ていた。
―――――――――――――――
『話を聞いている途中で寝ないでほしいわ…』
「すいませんでした…」
あのあとウィリーに冷水にぶち込まれたウィウィは、震えながらウィリーの話を聞いていた。冷水は炎溶人にとって地獄である。
「…話は終わりましたか?そろそろいきますよー」
「『はーい』」
「ではミルさん。しばらくお二人を預かります」
「お願いします。手紙の件、ギルド長によろしく言っておいてください。ウィウィはいろいろと自重すること。ウィリーはウィウィのブレーキかけてやってね」
『わかってるわよ。それじゃあ…』
「『いってきまーす!』」
「いってらっしゃい!」
こうしてウィウィたちは、村を出発した。
これから何が起こるのか。
これから何を起こすのか。
まだ、この地に立つ、誰もが。
この地を見守る、神でさえ。
誰も、知らなかった。
ありがとうございました。
さて、これで第一章が終わったわけですが。これから先の予定は正直よくわかってません。ウィウィたちが最後にたどり着く場所と、それまでの大雑把な道はあるんですが、あいにくとその道中まではわからない現状。
どんなことをしでかすのか?第二章、乞うご期待!
追記※ギルド長に手紙を渡してほしい、ということを追加しました