第16話 いつか来る崩壊の報せ
はい、遅れました。十月です。
消えてませんよー。
『さて、と…選ばれし子よ、こちらに来い』
「…あ、はい」
何故か男に急に呼ばれたウィウィ。ゆっくりと近づいていくと、頭に手を置かれていた。
「えっと、これはどういうことですか?」
『しばし待て。改めてお前を視させてもらうぞ』
何もわからないまま止まるウィウィ。そして…
『ふむ、やはりお前が次の具現者か』
そう言う男。
「ねえ、本当に誰なの?」
本当に誰だか分からなかったウィウィは、男に問いかけた。
男は答える。
『我は、始まりの【炎】の具現者、グロウス・ウィウィ。この地に魂として残る、【炎帝】なり』
「えん…てい?」
『左様。お主は知らぬだろうが、後ろの者…そこの女性は知っておろう?』
「…本では知っていたのですが、実際に会うことができるとは思っていませんでしたね」
『ふむ。まあその考えが妥当だろう。普通なら死んでここにはいないのだからな』
「ごめんママ、よくわからない」
この場にて理解をしているのは、ミル、ウィリー、そして炎帝…と、その後ろに立つ炎妃の4人(ウィリーは人と言っていいのか?)。ウィウィだけが分かっていなかった。
『まあ、この空間について、ウィウィは教えられてないしね』
「この空間…ってどういうこと?なんとなく普通とは違う気はするけど」
『ふむ。神力を感じられるのか?それは面白いことだが…まあ、説明だけはしよう』
そういって、炎帝は話し始める。
『この地は、神域と現実を繋ぐ、一種の精神世界。この地より神に言伝がされ、この地より人に言伝が為される。神託がある、などといったものはこういった地で行われているのだ』
「精神世界…か」
『我はここ、【炎の地】を護る者。』
「この方がこの火山を護っているのには理由があるの。それは―――――」
『「―――――彼(我)が、この火山を創り上げたから」なのだ』
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「つまり、意識だけで存在するためにある世界なの?」
『そうだ。我は元々人間だった。今もその意識は大体変わらぬ。だが、人の躰で数百年生きることは無理難題に等しい。よって、神は我に、精神世界と、そこで生きるための手段を与えてくれたのだ』
暫くして、ある程度仲良くなったウィウィとグロウス。マナの多い(多いで済むのか?)二人が一緒にいるせいで、若干周りがマナの暴風に見舞われているが、その中で暫く会話を楽しんでいた。
『ほう、やはりあの時の違和感はお主だったか。しかし、ファイアラットの身でよくぞこの地に辿り着いたな』
『む。あの時の見られてたような感じ、もしかしてあんたのだったの?』
『ははは!偶然だったが、希少種クラスの魔物の出現する、その瞬間の魔力波なぞ、そうそう感知できるものではない!いいものを見せてもらった!』
『人権なんてなかった…』
『そもそもお主、人ではないだろう?』
『…それもそうね』
頭の上にはいつもの如くウィリーが。そのウィリーも、グロウスとは仲良くなれたようだ。
『…と、そんなことを話している暇はない。お主ら、今から起こりうることについて、グレウスからきいてもらいたいのだが、いいか?』
「グレウス?」
「炎帝の妃。炎妃ってよばれてる、後ろの女性だよ」
『…起こりうることってなによ』
『…そこからは私が説明しましょう』
そういって後ろの女性が前にでる。
『こんにちは。どうやらこの村の歴史については、そこの女性の方が詳しいようですので省かせてもらいますが、その時の礎となった、グレウス・ウィウィです。以後お見知りおきを』
「あ、どうも」
『さて、前置きは面倒なので、単刀直入に話しましょう。この村はあと少しで散ります』
「「『・・・えっ』」」
『この村は、あと少しで、とある者に襲撃されて、散ります。それまでにいろいろと対策をしておく必要があるのです』
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「ふふふ・・・」
今も活発に動いている、グレウス火山。それを、上から見下ろす者が、一人いた。
「紅き眼を持つ者の血筋…」
黒い強膜を持った眼と、黒い髪、
「かの地への鍵…」
そして、黒い翼をもつ、一人の女。
「逃さないためにも、道は塞がなきゃね…」
闇に堕ちたかのような見た目をした彼女は、
「ふふふ・・・」
何かを考えながら、どこかへと飛び去っていった。
―――――――――――――――
「この村が・・・」
『あと少しで・・・』
「・・・散る?」
『そうです。後数年。とある崩壊者が来ます。その者の襲撃により、この村は滅ぶでしょう』
グレウス火山内の像、そこからつながる精神世界の中で、ウィウィ、ウィリー、ミルの三人は、ウィウィ夫妻から、火口の村の襲撃の未来についての話を聞いていた。
『神託はなかったですが、これはほぼ確実だといえますね・・・』
『根拠もないのに、どうしてそう言えるのかしら?』
『・・・昔の、宣言のようなものです』
「宣言?」
『我らは、一度かの者の襲撃を受けている。その者が最後に言い放った言葉が、どうも今につながるような気がするのだ』
「・・・その言葉って?」
『【この地には逃せないモノがある。それを手にしない限り、戦いはやめない】・・・そういっていたはずだ』
そういうグロウスの話の中に、どうやらウィウィは引っかかるものがあるらしく、
「逃せないモノ・・・か」
そうつぶやいた。
『・・・どうした?』
「いや、なんとなくだけどさ。その、この地にしかないって言ってるみたいなこととか、モノってとこに変に感じるとことかさ。なんか、こう―――――
―――――なんとなく、他人事じゃない気がするんだ。俺」
そういうウィウィの、眼の中に。
微かな、紅い、不思議な輝きが見えていた。
ありがとうございました。
次がこの章の最後ですね。さあ、ここからはアドリブだぜ!
(追記※"黒い眼"だったところを"黒い強膜を持った眼"に変えました)