第11話 【内・外・思考】
―――不可思議ハ時トシテ思議ニヨリ起コル。
成シウルハ如何ナル思考カ。
「これが…」
俺たちの前にあったものは…いや、感じたものは。
明らかな異質さを持ちながら、世界に馴染んだナニカだった。
「目には映らないね。マナで見なくちゃ、僕たちでは見れないや」
『何よこれ…ダンジョン、なんて感じとはまったく違うわ』
黒い、とは言い切れない闇。
暗い、とは言い切れない空間。
マナを通して見た印象は、この二つだった。
「それじゃあ、入ってみようか」
「やれやれ…いけるかどうかわかんねぇぞ?」
今回の飛び込み方法の案は、ひとつ。
マナを使いまくって、自分の体をエネルギーでぼやけさせること。
何も視界的にぼやけるってわけじゃないよ。
自身のエネルギーを外に大量に放出して、自身の存在と周りの空間の、エネルギーの差を縮めることが目的なんだ。
こうすることで、「ここにいるのは世界の一部だ」と誤認させる。要らないかもしれないけど、外部からの影響を受けることは既にフィフィが確認済み。だったらその結果に合わせてこっちが動くまで!
『それでは、各員行きますよ…せーのっ!』
掛け声に合わせて、自分の体を使って強い光を放つ。
ほかのみんなは全員闇だから、俺を覆っているね。
「大丈夫そう!?」
「こっちはな!このまま飛び込むぞ!!」
目の前のマナでできた壁を見ないよう、目を閉じて。
俺たちは輝きながら、闇へと消えた。
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~外側~
「…行っちゃったか。というか、行けたんだ」
『ウィウィの考えることはわからないけど、なんだかウィウィの選択肢に合わせるとしっかり進めるのよね…』
「ミー『ウィウィが正解ってこと?』」
「ウィウィが正答率100%というわけではなく、ウィウィの選んだ回答が答えになる…と。ま、間違いではなかろう。件の神様とやらが話していた内容を想定すれば、そういう予想が付かんでもない」
外で待つことになった4人は、ただ待つだけではない。
まず、3人を追いかけるためにフィフィがこの後飛び込むのだが、そのサポートを。
全員が飛び込んだら、ティティを介して外から中の様子の確認をしつつ、ウィウィ達への補助を。
外と中の二手から、この謎のエリアの攻略に向かう。
これが、今回の作戦の一番のポイントだ。
「フィフィ、大丈夫かい?他三人は同時にマナの放出を行っていたけど、フィフィはそれを全部一人でやらないといけないんだよね?」
「大丈夫。そもそも単純な話だったら、一番マナの性質的に入りやすいのは私。実際にマナだけを入れる経験をしたのも私が最初だったし、あの三人よりは簡単よ?」
『それならいいんだけど。ティティ、契約の感覚は掴めたかしら?』
「ミュー…ニャア!『大丈夫!フィフィの場所、わかる!』」
「それじゃあ行ってらっしゃい。気をつけて!」
フィフィはこくりと頷くと、ピョンっとひとっ飛び。
壁に当たったかと思うと、一瞬にして闇がフィフィの体を覆い…次の瞬間には消えていた。
『…これ、足踏み外して落下してないわよね?』
「フィフィに限ってそんなヘマはしないよ。たぶん」
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〜ウィウィ視点〜
「よっと!」
シュタッと飛び降りた先は、イメージとは少し違っていた。
まるで、洞窟というより城の通路だ。石レンガでできた壁で覆われた通路。
確かに闇の様なオーラは全体に感じるけど、辺りはしっかり明るさがある。
灯りはないんだけど…うーん。
それはいいとして、最初にすることを確認しよう。
「まずはフィフィを待つんだっけ…って、あれ?」
周りを見て気づく。
みんなが見えない。
いや、存在は何となくわかるんだけど…
飛び込んだ位置が同じはずなのに、かなり今の位置がずれている。
「予定変更、まずはみんなを探さないといけないか」
具現者の能力を少しだけ解放しつつ、歩いてみる。
みんなは…動いていないか。
「うーん…俺の方から送れる連絡手段がないからなぁ。困った」
こればっかりはフィフィ待ちかな。ティティ経由でみんなの状況を教えてもらいたい。
俺と闇の俺は良いとして、ツェルはこっちの場所を知らないだろうから…まずはそっちに向かうべきだ。
「よし、それならこっちに移動しよう」
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しばらく歩いていると、ふと違和感に気づいた。
「…あれ?」
なんというか…望んだ方向と逆に向かっちゃってる。
頭の中の地図が、常に鏡を向いているような認識というか…
それに気づいて反対方向に向かっても、やっぱり遠くなるような感覚が。
「認識できている情報が狂ってる…にしても、ちょっと変だなぁ」
しばらくぐるぐる動き続ける。
頭の中の地図が反転しているなら、それに従って移動を変えれば修正できるはず。
なのにどうしても、望んだ方向に向かうことができない。
何だったらぐるぐるしてるだけで離れていくみたい。
「…これ以上離れたら困るや。俺はここで止まって待とう」
それと、このぐるぐるの謎を解く方法を考えないと。
ありがとうございました!
・・・あれ、生きてた…?