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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第7章 辿り巡るは果ての先
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第8話 【魂・瞳・情熱】

―――聞コエルカ、コノ魂ノ声ガ。

情熱ノ神ハ、今ココニ具現スル。

「と…とにかく。光の力そのものは、純粋なエネルギーなんだよね。炎とも違う特別な力。これ自体には生命が持つべき理由はないんだよね」

『ええ。もし持っていたら、夜に明かりは必要ないでしょう。自分たちの体から漏れ出す光で事足りますから』


 まあそうだよね。

 でも、これはあくまで前提の確認。


「じゃ、これは?」


 そういって、俺は右手を掲げる。その手には何も見えない。


『…む?』

「あ、ツェルは気づくか」


 目には見えないはずなのに、ツェルはそこを凝視する。

 確実に何かが見えている。


『この光は…先ほどのものとは違いますね』

「そりゃそうだよ、俺は見えてないもん」

『えっ?』


 驚くツェル。これ、俺もどのくらいの力で光を出せているのかわからないんだよね。

 

 だって、【魂ノ声(ソウルハウル)】…()()()()を出しているんだもの。


「ツェルも無意識でその視点になっちゃってるのかな。一回、マナの流れを介してじゃなくて物理的に見てみてよ」

『わかりました…おや、消えた』

「この光が、俺たちにとっては大切なものなんだと思う」

『ふむ…私が触れたらどうなると思います?』

「大丈夫じゃないかな?光としての属性の効果はないはずだもん」

『そうですか。どれ…』


 ツェルが手の上の何も見えない空間に、手を伸ばす。


『…おぉ、なんだかフワフワとした感覚が』

「…成仏に近づいてないよね?」

『まさか。それとは別ですよ、人の温かい心に触れているような感覚です。言葉も何もないですが、なんだか安心できます』

「これを技として、名前をつけるなら…【魂ノ声(ソウルハウル)】【照ラス(サンライト)】かな」


 心の中に、声を響かせる。ほんのり暖かい、聖なる光のように。

 俺の持つ、光に対する性質が高まっているのは明らかだ。


『これなら、光の力も使いこなせるということでいいのでしょうか?』

「だと思うよ。物理以外の力が使えるっていいね」

『心にまで語りかけられる力…これなら、闇だけでなく、それ以外の存在に対しても有効に使うことができるでしょう』

「だね。ここまで出来たら…いよいよだ」


 …さて。ついにこれに触れるときがきた。


「じゃ、そろそろ本当にやりたかったことに触れようかな。この俺の目…【太陽(ウィウィ)()具現者(リベルクロス)()表の赤眼(情熱の印)】。この力がどういうものなのか…改めて知らないといけないと思う」


 これが最後だ。俺たちの力である、【太陽(ウィウィ)()具現者(リベルクロス)】。それのひとつ先に存在する、【表の赤眼(情熱の印)】。闇ウィウィの持つ【裏の赤眼(破壊の印)】も同じかもしれないけど、この力が何なのか。

 本来なら、【太陽(ウィウィ)()具現者(リベルクロス)】の力は俺にだけ使えるはず。闇ウィウィは、俺と同じとはいえ力自体は闇のものだし、もう今じゃ肉体的にも離れてるしね。

 でも、アイツは今でも闇の力を使えている。というか、俺の太陽(ウィウィ)の光部分が闇に変わっただけの力を使えてる感じがするなぁ…それってなんでだろう?


 …そこは今はいいか。まずそもそも、俺の力がしっかりこっちでも使えるか確認しておかないと。


「具現者としての能力じゃない、この紅き眼を持つ者(レッド・アイズ)としての力。具現なんかじゃ到底表せないのかも、って思ってるんだよね」

『…()()()()?どういうことですか?』

「言葉で説明してもアレだから、ちょっとやってみるね」


 そういって俺は立ち上がる。ツェルから少し離れないといけないからね。


 数歩離れた後、もう一度ツェルの方を向いた。


「じゃ、いくよ」

『…ええ』


 ―――――――――――――――

 ~三人称視点~


 彼自身が望むことで得られる力、ではない。

 神様から託された力。だからこそ、知らなくてはいけない力。



 これが、()()の赤眼が持つ力だ。


「…はぁぁぁぁああああああっ!!」


 彼の叫びと共に、地面が揺れ動き始める。


『これは…っ!』

「さすがにツェルも揺れには気づくかなっ!」


 思わず立ち上がったツェルを見て、ふとみんなを起こしてないかなと考えたウィウィ。

 しかし、すぐ考えを振り払って力をため続ける。


「ぁぁぁぁあああああ!!」


 この大地は独立した小さな島だ、言ってしまえば土の塊。溶岩なんて地面の中に流れているはずがない。

 それなのに、彼の周りの地面にはピシピシとヒビが入り、中から赤い光が漏れ出している。



 ―――ドゴオオォォォンッ!!


 その光が…マグマが一気に噴出する。

 そのすべてが、大地に還ることなく彼の体に降り注ぐ。


「はぁっ!!」


 纏わりついたマグマに対し、左腕を一振り。

 それだけでマグマは消え去った。でも、赤い光だけは残っている。


「…不思議な現象だよね。そして、この光もまた熱なんかはないわけで」


 赤い光たちは、俺が右手を掲げるとそこに吸い込まれていく。

 彼自身が発光し始めるくらいに。


「…これが、俺の赤眼。【情熱(第一の感情)】だ」


 燃え盛るような、でも包み込めるような暖かさ。

 人として持つべき、行動のための熱量、エネルギー。それこそがこの赤眼の力によって引き出された力だった。


「はああっ!」


 右手の光は、情熱の光。それを取り込んでいく。

 世界から受け渡された感情の力を、彼は制御していく。


「…燃え盛れ、湧きあがれ!情熱の炎よ!」


 タンッと飛び上がり一回転。

 遠くにすら見えなくなった、水平線に自身の座標を合わせる。

 世界と接続した状態にある彼にとって、世界の作った()()()()()()()()は、たとえこの壊世大陸にいようとはっきりわかる。


 空に浮いた上体で、天に右手を掲げた。

 そこから吹き上がる光は、属性として当てはめられない色をしていた。


『…これが。炎でもない、光でもない力』

「太陽の具現者としての力でもないからねー…はっきりとした色をしてるでしょ?」




 それにもしも題名をつけるとするのならば、銀朱色の情熱(赤き眼の覚醒)と、はっきり言える情景だった。

 神々しさを背に乗せて、ウィウィはそこに浮かんでいた。

ありがとうございました。

属性のない力…って、属性が力になる世界だとどう扱うんだろう。

別ベクトル?

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