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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第7章 辿り巡るは果ての先
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第1話 【ヒト・マナ・死】

―――伝エテイナイコトヲ伝エヨウ。

グルリグルリト廻ッタ先ノ話ヲ。

 【空を舞う】。


 言葉で表せば簡単なんだけど。


 その一つの行動すら、()にはできなかった。


「ふぁああ・・・」

「ミー?『ウィウィ、眠いのかな?』」

「あれからずっと空を飛んでいるのよ。途中途中で休んでいるとはいえ、疲れるでしょう」

『…そういいながら疲れ知らずのごとく空を飛んでいるのう、フィフィは』

「私は浮いているの。マナを切らさなければいいだけだから楽なのよ」


 …ま、俺はヒト(・・)じゃなくなっちゃったからいいんだけどさ。


 荒地から抜け出した後、俺たちはすぐさま準備を整えて、壊世大陸の中央にある違和感へと飛び立った。

 最初はここに来た時と同じように飛んでたんだけど…


 ―――――――――――――――


 ~少し前~


『ウィ、ウィウィ…お主少し早くないか…?』

「あれ?」

『私たちがギリギリ追いつけるかどうか、ってとこね…。具現者としての質が上がったから、普通に行うマナ操作も上手くなったのかしら…?』


 その言葉を聞いて、ちょっと止まる。

 ウィリーとフェイアンも、同時に止まった。

 …ウィリーはホバリングしてるね。


「そこまで早かった?」

『かなりな。妾にとっては全力移動の少し手前くらいの速度じゃったが…このペースで飛び続けるのは不可能じゃぞ?』

『私もね。もっと別の方法があればいいんだけど…』

「光の力はそういったところに対応したものがないからなぁ…」


 悩む俺たちに、闇ウィウィが手を挙げる。


「月の力を…フィフィの力を合わせて使えば少しは楽になるんじゃねぇか?」

「というと?」

「フィフィ。俺たちの出てきたときと同じ力だ。ウィウィの力も借りるといい、そこは俺の分野じゃねぇ」

「へぇ…面白そう」

「どういうこと?」

「月のマナを使って、出てきたときみたいに体を浮かせるの。力の向く方向をウィウィに変換してもらえば、後は簡単にみんなで飛んでいられるかも」

『つまり…妾の体に全員乗り、妾は楽にして居ればよいのか?』

「そうね。マナを使って飛ぶ必要もないわ」

「面白そう!俺の仕事ってフィフィの月の力の向きを、太陽の力で変換すればいいだけ?」

『そうなるわね…次の大陸からやってみましょうか』


 ―――――――――――――――


 その目論見は成功したんだ。

 フェイアンは一本の棒になるように伸びて、みんながそれに乗る。

 俺は操作をするために、フェイアンの前で空を飛ぶ、そんな感じ。


 負担は俺とフィフィだけにかかる形になったね。


『足手まとい感がすさまじいのだけれど…』

「ウィリー達が居るから頑張れるんだけどなぁ」

「そうよ」

『そうなのかしら。でもやっぱり待っている間何もしていないのは癪だし…』


 そういうと、ウィリーは手元で何かをこねくり回し始めた。

 …ゴーレムの一部?


『ちょっとだけアイテム製作でもしてましょうか』

『ふむ、面白そうじゃ。ツェル、モノ。こやつの手伝いをしてやれ!』

『仰せの通りに』

(ぼく)は君の(しもべ)じゃないんだけど…まあいいや、確かに面白そうだね」


 そういって、ツェルとモノもウィリーの元へ。

 ティティもきょろきょろと辺りを見渡して…フィフィの方をジッと見て。


「…やってみたい?」

「ミャ!」


 と、確認の一鳴きをしてウィリーに向かっていった。


「気になるなぁ」

「私たちは魔力の調節をするのに特化しましょ。フェイアンはあまり姿勢を動かさないでね」

『流石に分かっておる。というより、意外と体への負担が少ないおかげでしばらくはゆっくりと過ごせそうじゃ』

「話し相手はお願いしていい?」

『うむ』


 そうやってフェイアン達と話をしていると、少しウィリー達の様子を見ていた闇ウィウィが戻ってきた。


「ふむ…ありゃアイツらの作るものに俺がテコ入れすると、逆に大変なことになるな」

「そうなんだ…結構繊細なものだったってこと?」

「というより、得意分野をかき集めてるイメージを感じる。マナのバランスを合わせている以上、俺らの力が入ると濃すぎて他がつぶれるかもな」

「へぇ」



『ところで闇の。お主が現世に具現している理由は分からぬじゃろうが…その状態からウィウィに戻ることはできるのか?』

「んあ…イメージ体だったからこそウィウィの身体を奪い取ることもできたが。こっちに体が生まれた以上、俺はウィウィに戻れねぇと思うぜ」

「そうなの?」

「ウィウィ。お前もお前の精神世界に潜るとき、一時的だが体のすべての所有権…操作権とでもいうべきやつを捨てて来たイメージがあるだろう?」

「んー…うん、そういわれるとそんな感じかも」


 と俺が言うと、急に闇ウィウィの眼の色が真っ黒に変わる。

 完全に闇を…自身の精神をむき出しにした、真剣な表情でこちらを見ている。


「言っておくぞ。俺たちは本来ここにいない。特例中の特例が働いてる、って言っていいんだぜ」

「…どういうこと?」

「生の輪廻を…【太陽(ウィウィ)】を宿すお前には、神様から伝えられていない事実がある。精神体となって精神世界にいる間は、現実の体を動かすことはできないのは当たり前だ。だがな、一回でも現実の体を動かせなくなった奴ってのは…」


 顔を近づけてくる闇ウィウィ。

 宣告とも忠告とも言える声色で、




「この世界に死亡した(・・・・)と判別されるんだ」





 そう告げた。



 ―――――――――――――――


「………ど、どういう…」

「お前は一回死んだんだ。俺に会うためにな」

『…闇の。少々言葉の選び方を間違っているのではないか?』

「大体あってるだろ?フィフィはそれを完全に理解しているはずだ、聞いてみりゃいいさ」


 待って待って待って。頭の整理が追い付かない。

 フェイアンの方向制御が少しブレちゃった…直せるけど。


 俺が…一回死んでいる(・・・・・・・)って?


「フィフィ…もうちょっとだけ詳しく説明して。俺が今ここに居ることの理由とか、いろいろ」


 フィフィは、こちらをゆっくりと向いた。


「そうね…ウィウィ。この世界で死んだ人って、見たことある?」

「ツェルは死んでるけど…そういうことじゃないよね?」

「ええ。身近なところで過ごしている人たち。ああいう普通の人って、いつまであの姿でいられると思う?」

「んー…分かんない」


「答え。彼ら自身の手によって変わる。でも大抵の人は、自然のマナに合わせて変化するの」



 フェイアンの重力制御をしている右手をそのままに、左手に水と風のマナを流すフィフィ。



「環境の変化を受けて、ぐるぐると回るマナ。それを取り込んで、吐き出して。繰り返しているうちに、多くのマナの経験を受けた体が、記憶を紡ぎだすようにして老いていく。あなたの知っている生の輪廻(・・・・)はエネルギーの循環だけど、私の知っている死の輪廻(・・・・)は違うものなの。それを…」



 ふわり、と髪を一撫で。



「この中で最年長のフェイアンへは、その身に感じる記憶の理由として」



 俺と同い年のはずなのに、どこか大人びている理由を…



「この中で最年少のウィウィへは、貴方の中に宿っていた闇についての理由として」



 …きっと。ここで、理解することになるんだろうな。



「…今から二人に、伝えてあげる(・・・・・・)。この世界の、もう一つの輪廻を」

ありがとうございました。


………え、ウィウィ?どうなったの?

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