「調律」の存在
いーつーもーのー。
そろそろまたクリスマスですな。
「どーこ行ってるんですかねぇウィウィ達は…!」
ガチャリと、何も音のしなかった書斎に変化が訪れた。一人の男が入ってくる。
「無事赤眼の能力は覚醒して、神様からもお墨付きを受けて」
その男は、ボサボサの頭を掻きながら、パソコンを起動させた。
「やっとこさ望んでいたレベルの力を手に入れてくれたわけだが…」
やけに多いアプリに目を通しつつ、彼は一つのフォルダを見つけた。
なぜか、それには紅い眼が描かれている。手作りのようだ。
「なーんか嫌な予感がするんだよな。闇の奴も想定外に分かれちまったし」
そういって彼はそのフォルダを開く。中はいくつものデータがあったが、彼は迷うことなくテキストファイルを取り出す。もう位置も覚えているようだ。
「…書き記す先は俺も知らない。だが先だけは確実に存在する」
目には僅かな光が宿る。その先に見ているものは果たして何なのだろうか。
「…赤眼の魂のもとに!追加世界、接続!」
彼は作家だ。すこしアレな人ではあるが。
彼自身は現実にいる。この世の焔の一つも、己の力で操ることもできない現実にいる。
だが。仮にそれが。とあるもう一つの道をたどっていたとするなら?
”もし、彼がその力を操れる体を持っていたとしたら?”
ウィウィ・リベルクロス。
それは、自分と違うもう一つの道を辿ったとされる、もう一つの自分、もう一つの生き方。
生まれながらにして人を外れた者である彼の道のりを。
まるで、己が聞いていたかのように。
まるで、己が見ていたかのように。
彼はまた、一つの物語を創る。




