第14話 「…お前ら、さっきから黙ってりゃ…」
闇ウィウィ「謎は積み重なるばかりだ。ウィウィ経由で神様の話は理解したが…それでもまだ分からねぇことしかねぇな。特に…」
「はぁ、表に出て初めて使う月の力がこんな形になるとは…」
「わー…結構色々な世界を旅してきたけど、こんなものもあるんだ。初めて知ったよ、僕」
あのあと。ウィウィが単独で空を飛び抜けようとしたのを抑え込み、全員でうまく外に出る方法を考えていたモノたち。当のウィウィは空を舞って待機していた。
なにせあの時開けた穴があまり大きくなく、フェイアンもウィリーも空を飛ぶための龍(竜)形態が使えない。結果空を飛べるのがウィウィだけとなるが、そのウィウィも他全員を連れて空を飛ぶことはできない。
そこで手を挙げたのはフィフィ。
―――「ちょっと、試したいことがあるんだけど…」
恐らく今なら使える。そう言うフィフィの提案に賛成した皆。結果その力を受け入れ…
今、皆は先ほどの足場に戻ってきて立っている。
ただし、本来立つべき場所の逆側だが。
先ほどウィリーが見ていたエネルギータンク側である。
「妾もじゃ。重力操作とは、粋なことを考えたのう?」
「ミー…『気持ちわるくなる…』」
『面白いですね、これは。フェイアン基準の立ち位置になるため、私はあまり重力の影響を受けることはないのですが…』
『軽い逆重力を発生させて宙を舞い、結果空を落ちることになる…ってことね。面白い技術…でも、闇の力に類するのかしら?』
「ちょっと違うわね。確かに重力の要素を持っているのは闇だけど、闇そのものは重力を強く発生させる程度の力しかないみたいなの。それを風経由で重力エネルギーを操作できるように転換、水の一部流転を起こしてそのエネルギーを逆方向に向けて、最後に…」
そういうと、フィフィは手をかざす。
その手には、水色の淡い光…いや、闇が輝きだした。
「この【月】の力で、全て繋げて転換させる。私が神様から託されたこの力は、何かと対になる力。今はこの板にかかる本来の重力に対して、私たちに力をかけているのよね」
『ってことは、この穴を落ちたら…』
「おそらく本来の重力によって、私たち側に落ちてくるはず。往復して落ち続けるんじゃないかしら」
「それなんだか楽しそうだね?」
「酔うと思うのだけど…」
そう話すフィフィとウィウィだったが、ふと思い出したことがあった。
「そうだ!イナゴヤがこの裏にまだいるんだよね?」
「うむ?そうじゃが…」
「あの子を部屋に戻してあげないと。ウィウィ、話はしてたのよね?」
「ありゃ。一応内緒話だったんだけどな」
「あの者と話をしていたのは、それが理由じゃったのか?」
「ミャー?『一緒に行っちゃだめなの?』」
『だめでしょうね…一応監視をされているらしいので』
「とはいっても…多分これからは素直に聞いてくれると思うよ?」
「どういうことじゃ?」
「怖がる原因になっているのは看守や主サマじゃなくて、どうやらヴィヴィだったみたいなんだ。とはいえ看守の人も乱暴はしてたみたいだし、注意はしておくってさ」
そういうと、ウィウィは一人空を飛び、床の裏側へと向かっていった。
『苦労しますね』
「本当にね。さて、僕たちはどうしようか」
「うーむ…ひとついいかの?」
「ミー?『フェイアン、どうしたの?』」
「実は一つ疑問に思ったものがあってな。あの主とやら、途中でふらっと闇のマナを作る技術がどうこうと言っておったはずじゃ…」
その言葉にハッとなる一同。
「…言ってたね、そういえば。冷静に考えてみれば凄い技術…」
「どうやって闇など作り出せるというのだろうか。精神的な力じゃろう?」
『適正者から抽出するという方法なら…』
その会話に対し、反応したのは。
「…お前ら、さっきから黙ってりゃ…」
右目にウィウィと鏡写しになる紋章を宿った、闇に染まる者。闇ウィウィだった。
先ほどから静かにこちらを見ていたが、闇に関係することが話題になったため話に参加したくなったようだ。
「なぁに話してんだ」
「闇のウィウィ?ウィウィは裏に行っちゃったよね?どうして今もここに…」
「考えてみればお主もおかしな存在じゃな。何故ウィウィが現実に居るのに表に残っておる?」
「俺も分かんねぇ。なんで今も残っているんだか…まあいい。闇を生成する技術だが、ウィウィの創炎魔法と同じ原理を利用できるのなら…今の俺もできるはずだ」
『どんなマナも炎に変換するっていうウィウィのあれね。でも、闇は二極属性…もし属性を変化させる方法を使うなら、四大魔法とは違って光からしか作れないんじゃない?』
「そこがキモなんだよ。アイツ、四大魔法に関しちゃウィリーのイメージした通りの…言うなれば属性のループに乗せる方法を使ってる。だが光属性や闇属性に関しちゃ変え方が違ったんだ」
手を出し、そこに一瞬で闇を呼び出す闇ウィウィ。
「奴が魔法で炎を作る際に必要なものはたった一つ。マナだ。つまり、光だろうが闇だろうがそれを【無】属性にしてしまえばいい。あとはそれを炎に変えるだけ。取り込めていたかどうかは別として、奴は一瞬にして光や闇の力を無に還せていた」
「…無属性に?理論的には不可能じゃないけど、できるの?」
「普通の奴にゃ不可能だ。そもそも二極属性を操ること自体が難しいってのに、それから要素を取り除くなんざまず出来ねぇ。俺もこの身じゃ出来ねぇからな…―――」
そういいながら、闇のマナを集めボール状にしていく闇ウィウィ。
「―――…が、赤眼の力はそれを可能にする。はァッ!!」
次の瞬間、闇のボールが透明になった!
「世界に干渉する力。元々具現者だったあいつは、その力を使って無から炎を呼び出すことは簡単に行えていたが…神様と接触した結果、その範囲を広げ…」
透明にしたボールの中心には、微かながら太陽のようなものが浮き上がっている。
「無から炎へ…その逆、炎から無へ。自身の持つ力を、無に還すことができるようになったんだよ」
「無に還す…つまり、世界にマナを返却する…ということか!?」
「ああ。赤眼のもつ【情熱】と【破壊】の力は、感情そのもの。そして同時に、神様に渡された世界の意志でもある。この世界が存在する理由としてこれらの感情があり、それに干渉できる能力として赤眼があるのなら…これを介して世界にマナを返却することは可能だろう」
『えっと…ちょっと待って。つまり…』
すこし頭を抱えるウィリーだったが、すぐ冷静な表情で話し出した。
『あなたの言う話を整えて、ウィウィの創炎魔法を考えると…まず、マナが存在する環境を用意。これはどんなマナでもいい。フィフィ、ちょっとやってみて?』
「え?えぇ、わかったわ…【水弾幕】、止まれっ!」
フィフィがかざした手から飛び出る無数の水。しかしそれらは空気中で止まる。
「弾けてっ!」
ぎゅっと手を握ると、それらは全て細かい霧と化した。フィフィたちの頭の上で、ふわふわと白い靄を作っている。
「これで水のマナが発生しているはず」
『ありがとう。それじゃ、闇のウィウィさん?』
「ったく、ウィウィみてぇには素直に聞かねぇ可能性もあるってのに…そらっ!」
闇ウィウィが手をかざす。すると。
―――ドッゴオオォォォォン!!
「のわぁっ!?何をするのじゃ!!」
突然起こった爆発に吹き飛ばされるフェイアン。心なしか地面も吹き飛んで上昇し、地上に近づいているようだ。
「あ」
『ちょっとフィフィ、マナ多すぎない!?』
『加減を間違えましたか…?』
「…今のは、水弾およそ200発分に相当したマナの量だったね。フィフィのことだから、1発でも10発分の火力になるんだよ?」
魔法の一種、【〇弾幕】。〇弾を束にしたようなものを召喚する魔法だ。一発一発放つより発動時間もマナの効率も高い技だが、狙いはつけにくくなる上一発の威力が魔法の精度に左右される、難易度の高い上級魔法である。
しかしフィフィの精度と保有マナ量により、通常よりもマナを込められた弾が一瞬で発生したのだった。
「うぅ…ごめんなさい。でも、これでいいの?」
『…えっと、想定外だけどいいわ。確認には丁度いい』
爆発が残した塵を見ながら、ウィリーは話す。
『マナの種類が四大属性であるときは、それに直接干渉し、属性循環を利用して炎に変える。こっちの方法でやる場合はタイムラグなしみたいね』
「ああ。流石に水から作り上げる際には、ごくわずか…ヒトじゃ認識できねぇほどのラグはあるがよ。壊世大陸に来るまでのウィウィはこっちしかできなかったようなんだが…問題は二つ目の方法だな」
『ええ。それじゃ、やってみましょうか』
ありがとうございました。ただいま。
時間これから先取れるかな?
追記※取れてないですね。はい。
申し訳ないですがお待ち下さい。