第12話 創られる炎の魔法
むう。そろそろ1章終わらせたい。これからは大体2000~2300語が基本になるかも。
ウィウィは、5歳になった。
あのミルとの闘いの時から、格闘技術の訓練もかかしてはいなかった。マナを体にまとわせながら闘う、というのは意外と難しいらしく、ウィウィでさえもあまり進歩は見られていなかった。もちろんほかの人にやらせようにも、たいていの場合はそこまで頭が働かないか、そもそも腕を守れるだけのマナがないだろう。
「ふと思ったんだけどさ」
『なによ?』
今日も今日とてウィウィとウィリーは訓練をしていた。もちろんウィリーはファイアゴーレムに乗っている。最近はウィリー自身でファイアゴーレムを製造することにしたらしい。ウィウィのものに比べたら耐久度は低いが、代わりに繊細な動きができるのは、乗っているのが製作者ゆえの慣れか、それともウィリーの魔法が繊細だからなのかはわからない。
「どうして最初って合わせてくれたの?」
『…最初っていつよ』
「初めて出会ったとき。喋れなかったでしょ?俺」
『ああ…って!なんで覚えてるのよ…あ、ウィウィだからか』
「なんだろう、俺の名前が不本意な意味を持ってる気がする」
ウィウィはどうやら一人称を【俺】としたようだ。
『あの時は、ああやって単純に動いたほうが、私を「普通の魔物じゃない」っていう程度の意識で止められる、と思ったのよ』
「まあ、ウィリーは心は大人みたいだけど、見た目は魔物だし子供みたいだよね」
『だから、ね。こんな見た目でいきなりテレパシー使い出して、こんな口調で念じてたら、確実と言っていいほど倒れるわよ、みんな』
「まあママは止まったけどさ」
『それは言わないであげて頂戴…』
聞こえる内容自体はまるで世間話である。ここに、ウィウィの拳とファイアゴーレムが何故かぶつかり合う音が聞こえてこなければ、普通の人とネズミの会話なのだが。
いや、それはそれでおかしいが。
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『むむむ…そろそろマナの量が限界ね』
「あ、じゃあここできゅーけー」
暫くして、ウィリーのマナが生活に支障がでる一歩前になったあたりで休憩を始める彼ら。
「むむむ…」
『ふぅ…どうしたの?ウィウィ』
「魔素の原理がよくわからない」
『それでよく創炎魔法できたわね…』
ウィリーよりはマナを使っておらず、また疲労自体もそんなにないウィウィは、魔法の研究をする余裕もあるようだ。自ら創り上げた創炎魔法を見て、先生であるウィリーに疑問点を挙げている。
…聞く内容が自分の作ったもの、というのはおかしい気もするがスルーだ。
『魔素っていうのは、要するにそれに似たなにかなの。火の素も、火の持つ熱を表すのか、火の発する赤き光を表すのか、そのあたりもいまいち研究が進んでないらしいけれど。ただ、火。それに類しそうなものを作り出すものよ』
「なんで研究が進んでないの?」
『あまりにもいろいろなものに変わりすぎてるのよ。これ自体が炎になることもあれば、溶岩になることもある。空気をものすごく熱くすることもできるし、一点だけ光らせることもできる。もはやエネルギーとか物体とかの関わりが壊れてるのよ。原子説からすればね』
原子説や魔素説については5話をみてほしい。
『ほかの魔素と組み合わせれば、熱湯から精鉄、無理をすれば太陽だってできるわ』
「なにそれ…こわいなあ」
『正直この辺りは、定義によって使われる素が違うっていう意見を信じるしかないわね』
何でもできるというのは非常に怖いものである。
「…あれ?ふと思ったんだけど。なんで俺の魔法って【創炎魔法】なんだ?」
『…もともと、魔素は変化することはまずあり得ない。せいぜいの可能性を言うなら、「鉄は土からできた」って定義して土の素を大量に使って精鉄を作り上げたのち、それを分解するときには、「精鉄は火と鉄鉱石という土を使って作る」と定義して土の素と火の素を作り上げる、こんな具合程度ならあり得るの。』
「へー」
この場における「定義」とは、魔法陣の書き方である。
『ただね、ウィウィのその魔法陣はちょっと…』
「…歯切れ悪いね」
『まあそうなるわよ…『水や土などのありとあらゆる素を火の素に変える』なんて定義してるんだもの』
「…えっと、それがどうしたの?」
『どうしたも何もないわよ!なんでさらりと変化してるのよこれ!「土の素は世界の創造のときに熱から始まった。」とは確かに本には載ってたし、「水の素は火の素を飲み込む力をもつ。」ってあるから一方的ではあるけど繋がりはあるのかもしれないし、「風の素は土の素がもともと持っていた動く力を受け継いだ」って書いてあるから確かに熱ともつながるかもしれないけど!』
どんどんハイペースになっていくウィリーの喋り声。というかテレパシー声。
「ちょっと!落ち着いて!」
『落ち着いてられないわよ!ああもう!最初この魔法陣を見てからあまりにも謎で夜もずっと悶々としてたのよ?1か月くらいしてやっと落ち着いたっていうか意識の外に追いやれてたのにぃ!!』
「あの時かなり落ち着いてたじゃん!」
『人は強いショックを受けた時は逆に落ち着くのよぉ!!』
「ウィリーは人じゃないよ魔物だよ!」
その日は訓練どころではなくて、家に帰ることにした。家で待っていたミルが、ウィウィの頭の上で荒ぶるウィリーを見て止まったのは言うまでもないだろう。
ありがとうございました。