第12話 「如何にも。俺はこの―――」
???「…コイツ等、こっちに来れることを想定してたんだな」
???「すごいね…でも、いいのかなこれ」
???「…さあ?俺は知らんよ」
~現実、第三者視点~
『グッ…があああぁぁぁアアア!!』
「ちぃっ…埒が明かな…んあ?」
地上での戦いの末。疲弊しきったであろうヴィヴィが突如発狂しだした。
それを形態変化と感じた闇ウィウィだったが、すぐ戦闘状態を解除していた。
ヴィヴィの体から黒い帯のようなものがあふれ出し、それがヴィヴィを縛り付けていく。
もがき苦しむヴィヴィだったが、その体をへし折る勢いで帯が巻かれ、球体のようになっていき…そして縮んでいく。
『ギャァァバアァァぁぁぁああううウウガアアアアア!!!』
「これは…ウィウィ、終わりかな」
「警戒はしておくべきだ。闇から何が生まれるか分からんしよ」
そう言う闇ウィウィだったが、彼もなんとなく終わりのように感じていた。
その直後。近くで闇の主を診ていたフェイアンと堕天使は、ヴィヴィの近くに二つの力が現れ始めたのに気づいた。
「…む?何じゃあの光は」
「闇も集まり始めたわ」
それは少しずつ大きくなり、そして収束する。
まばゆい光と底なき闇の中から現れたのは…
「ふぅ、あの人もよく分からなかったよね」
「一応あの人神様なのよ?少しは敬いなさい…」
ヴィヴィの闇に飛び込んでいって姿の見えなかったウィウィと、そのヴィヴィに取り込まれていて消息不明だったフィフィだった。
まるで今までのことが何もなかったかのように現れた二人をみて、モノたちは驚いた。
『きゅぅ…』
「ミー…」
二人の手には、こちらも何処かへ消えていたウィリーとティティが。
二匹とも気絶していて、現状に反応することはできなさそうだ。
「おお、戻ってこれたのじゃな!」
「うん、ただいまー」
「…フィフィ、ウィウィ、色々と聞きたいことはあるけどさ。とりあえず僕たちへの状況説明は後にして、目の前にいるコレを何とかしてほしいんだ」
「へ?」
ウィウィが振り返る。そこには黒い繭に包まれたナニカがあった。
「どわあっ!?」
「…闇の暴走ね。喰らう力が極端に働きすぎた結果、自らも喰らう存在になってしまったというわけよ」
フィフィの説明を聞き、考える堕天使。
「じゃあ、コレには触れないってことなの?」
「ううん、そんなことないよ」
堕天使の言葉を否定して、近づくウィウィ。その闇に手をかざすと、
「光よ集え!【照ラス】!」
ウィウィの手から光のレーザーが放たれる。レーザーは闇に触れ、それをゆっくりと溶かしていく。
『ガアアアァァァアウアウアうあうぁうぁうあぁああ!?』
「んー…ちょっと違うかな。【輝ク】!」
面倒だと感じたのか、ウィウィの手から放たれる光の量が増す。レーザーが帯となり、広い範囲を照らした。
これが有効だったのか、ヴィヴィの闇はゆっくりと消されていき…そしてヴィヴィの姿だけが残った。
『うぐああアっ、あああぁぁァ……』
「ふぅ。これでいいね」
「ふむ…ウィウィ、光の力を使いこなせるようになったということじゃな?」
「元々使えてたけどね。でも、これで根底まで触れられたと思う」
それなら良い、とフェイアンはウィウィとの会話を締め、話はフィフィやティティ、ウィリー…闇に呑まれていた方へ。
ウィリーとティティは目を覚まして、外に出てきたことを喜びつつ、それぞれウィウィとフィフィの肩に飛び乗った。
「それじゃあ、あなたたちはどうやってあの闇の具現者から脱出したの?」
「それは気になるな。ウィウィ一人の力で何とかなると思ったが…あの空間から出た様子を見る限り、どうやら闇が関わっていた様だしな…」
疑問点を挙げる堕天使と闇ウィウィ。
「フィフィ、お前がやったことなのか?」
「ええ。そうなるわね。闇ウィウィとウィウィの機転でこっちへ干渉してくれたおかげかしら、あの世界の中で無事目を覚ませたのよ」
『あの中は闇で満たされていたから…闇に強い適正を持っているフィフィが呑み込まれ易いのは仕方ないことよね』
闇ウィウィの言葉から、先ほどの様子を思い返すフィフィ、ウィリー。
「ミャ!『でも、ウィウィ助けてくれた!』」
「光の力を全力で使ってみたんだよ。そしたら急に炎との親和性が良くなってさー」
「…ウィウィが変化あったっつーことは、もっと力があるんじゃねぇか?フィフィ」
「ええ。取り込まれた後目は覚めたけど、結果的に私には闇が残った。というより、ものすごい闇を扱えるようになったのよ」
フィフィの手から、わずかに溢れ出す闇。
それを前にしても、特に誰も動じていなかった。
それに安心したのか、少し頷いて闇をしまうフィフィ。
「あのフィフィ、強かった…」
「冷静になっても使えるってことは、もう力としては完全に覚醒したってことよね。そこであそこの状態をふと思い出したんだけど…ヴィヴィの精神世界?あそこって、脱出不可能だったのよ」
戦いの様子を思い出すウィウィと、目をつぶって腕を組み、状態を思い出すフィフィ。
話した内容に、闇ウィウィは驚き、ウィウィは納得していた。
「…マジでか、俺たちの世界のときとは事情がちげぇんだな」
「フィフィと話している最中にそれをふと考えてたんだよね…やっぱそうだったんだ。じゃあ、あの時すぐ脱出の体制に入らなかったのも…」
「ええ。そもそもウィウィのいう【脱出】はできないと確信していたから。それに、まだ足りないといっていたのは、あなたと私の力のバランスが一致しなかったからなの」
「…ふむ?何をしようとしたのじゃ?」
「…力のバランス?まさか」
疑問を持つフェイアンに対し、かつての実験を思い出した闇ウィウィ。
「光と闇を混ぜ合わせようとしたのよ」
やっていたことは、少し前にしていたことと同じだった。光と闇を混ぜ、最強の力を生み出す。その実験は謎の存在によって失敗した、と闇ウィウィは覚えている。
「マジか…ん?それだけじゃ色々足りねぇんじゃねぇのか?そもそも脱出と組み合わさるのかそれ…?」
「それが、合っちゃったんだよねー…というか、辿り着いちゃったというか、なんというか」
「ええ。その実験自体は私もモノと組んで行ったから、結末は知っていたの―――
―――神様と会えるっていう、結末をね」
「今回俺たちは、そっちを目的に光と闇の融合を起こしたんだ」
「…神を、呼んだってことか?」
「そうなるわね。互いに互いの限界まで光と闇を混ぜ合わせて、神様が登場した時点でそこに飛び込むって流れを想定したの。神様が来る場所はきっとどこでもいいはずだって思ったから」
「神様が来るっていうことは、そこに入り口があるってことなんじゃないかなって思ってさ。入り口が存在するなら、そこが開いているうちは入れるだろうって」
「ウィウィもその結論に至れたからこそ、私たちは実験を起こした。もちろん、このことを神様に知られないようにこっそりと起こす必要があったから…」
「互いに意思の疎通はできなかったけどね。でもできてよかったよ」
「…わ…わけわかんねぇ…」
二人の具現者の話に頭を抱える闇ウィウィ。
「…まあいい、その後はどうなったんだおめぇら」
「神様が無事登場して、その隙に光と闇の収束する地点へ飛び込んだの。ここは、私たちが精神体であることが幸いしたわね…―――」
―――――――――――――――
~少し前、フィフィ視点~
「っぷはあああっ、あっぶなかったー!!」
「はぁ、殺す直前で助かったわね…」
本当に危なかった。力加減を一つ間違えれば、ウィウィを取り返しのつかない状態にしてしまうところだった…
…まあ、ウィウィに限ってそんなことあり得ないけど。
「…いや、驚いたわホント。ここに直接来る馬鹿があるかよ…」
「「っ!」」
一息ついて油断したのか、急に聞こえる声に、ふと後ろを振り返ると。
「なーんで光と闇のフュージョンスタイルを最初っからブッパしていくんだか。俺には分からんね」
「…あら、聞き覚えのある声」
黒色を基調として、角張りながらピッタリとした、胸元に謎の細い布がリボン代わりにつけられた服。
「そりゃそうよ。本来ならこんなことにゃあならん予定だったんだが…」
腰ほどまで長い黒髪、右手に赤、左手に緑の丸い水晶が埋め込まれた人間。
「ま、着いちまったもんは仕方ない。自己紹介と行こうじゃねぇの」
「…神様?」
左目は新緑に染まり歯車の紋章が残され。
右目は赫く染まり、目の紋章とそれを包む雷が描かれている。
その人物はウィウィの問いに頷き…
「如何にも。俺はこの想造世界の主、■■■っていうんだ。よろしくな」
もっとも重要な部分が抜け落ちた形で自己紹介をしたのだった。
ありがとうございました。
何故にこんなことが起こったのさね…?
 




