第6話 『残念だけど、まだ終わらないヨ』
ヴィヴィ『ワタシを倒して彼女たちを助けル?
無理無理、無理だヨォ。例えワタシが気絶してモ、
あの子たちにハ…世界が届かないんだからサァ!!』
闇ウィウィ「はっ、それはどうかな!(ウィウィ、行ってこいっ…!!)」
「…くくっ…はははは!!」
『…はぁ、あレ、どうしたノ?』
「いや、喰らったといった割にはそんな感じがちっともしなくてな」
今もなお、戦いは続いていた。
相手もそこそこ疲れてきているみたいだ。
『…うぐっ』
「ああん?」
『君の力、ほんとよく分からないヤ。さっき食べたのが原因かナ、力が入らなくてサ』
…確かに。少しだけ闇を展開する速度が遅くなっている気がする。
もしかしたら中で何かがあったのかも。
それが原因か、先ほどから攻撃はよく当たるようになっていた。
でも俺の炎は原因じゃ無いと思うんだ。
「それは敵に教えていいのか?こちとら元気なのによ(マジか。何でだ?光が宿った炎なんだからよ、闇を消せているんじゃねぇのか?)」
具現者の力はまず消せないよ。相手も自然そのものだもん。だから…
…なんだろう。胸騒ぎがする。
「まだまだ戦えんだろ?ならやろうぜ?(何でもいいが、そろそろだ。行くぞ)」
『無尽蔵だよネ。ソの体力』
「んじゃ、その無尽蔵な体力で…(ちょっとだけ手助けしてくれよ)───
───さっさと終わらせてやる!【爆炎】!!」
強烈な勢いを持つ炎を手に宿した闇の俺。そこへ俺はマナと具現者の力を送り、さらに加速させる。それを見たヴィヴィは…
『残念だけど、まだ終わらないヨ。【悪夢ノ彼方】』
狙い目とした心臓部へ闇を展開。そこへ俺の拳は突き刺さり…
「うおぉぉぁぁああっ!!(いまだ!いけえぇぇぇ!!)」
突き刺さった闇の中に世界が見えたのを確認した!予想通りだ!
そこへ力を流し込もうとするヴィヴィの勢いに乗って、俺は精神体となって精神世界へと飛び込んでいった…。
───────────────
飛び込んだ先には、広く暗い世界が。
そもそもこれ明かりとかあるのかなぁ…。
いまさらなんとなく不安になって、でも後戻りはできないし。とりあえずふわふわと浮かんでいく。
「…んー、何か目印があればいいんだけどなぁ」
と口に出した矢先。
何かの違和感を目の前から感じる。
「…あれ、なにこの感じ」
あの純粋な闇とは違う、マナの風に近いもの。それに引かれるように、自分の手の先も見えないような暗闇を漂っていくと。
『…うぅっ』
「ウィリー?!」
目の前に浮かび上がったファイアラットから、うめくようなマナの声。間違いなくウィリーだ。
『あうう…あれっ、ウィウィの声が…?』
「ウィリー!?大丈夫!?」
『ええ、元気よ…でもどうしてかしら、目の前が見えないの』
「えっ…?」
姿勢を戻したウィリー。でもこちらへ目線を合わせていない。
ううん、違うな。目線が合わせられないんだ。
ぷかぷかと浮いたその体には力が入っておらず、目にも光がともっていなかった。
「…本当にそうみたいだね」
『あら…外から様子がわかるほどに酷い状態なの?』
「ううん。外見ではわからない…でもこっちに目が合わせられていないし、なんとなくわかる」
『あらら…』
ちょっと残念そうな表情をするウィリー。
『仕方ないわね。とりあえず姿を【第四形態】にしておいてっと…』
ウィリーはそういうと、自らのマナを放出し、それをきぐるみの様に自分の体に纏っていく。それはやがて4つの属性を持つ人型になっていった。
『…あら?』
と同時に何かに気づいた様子。
手をにぎにぎさせて、足をばたばたさせたあと、こっちを向いた。
『あー、こっちなら見えるのね』
「えっ、どうしたの…って思ったけど、そっか。マナ経由だからこの世界も見えるんだね」
『もっと早く気づけば良かったわ…』
『ところで、どうしてここに私もあなたもいるのよ?』
「あー…それはー…」
とりあえず、状況を説明。闇の具現者についてのこと、ウィリーたちが消えた後のことを説明した上で、今の場所のことを教える。
『…えーっと、つまり私はー…』
「食べられちゃったって感じかなー」
『だめじゃないの!!』
「あはは…」
『…まあいいわ。それが本当なら、ティティとフィフィも探さないといけないって事ね』
「そうなってから、ここから出る方法を探そっか」
『ふむ…マナを経由すればティティも見つけられるのかしら?』
「フィフィはわからないけど…やってみる?」
『ええ。感知範囲をできる限り広げて…』
目を閉じてじっとするウィリー。ある程度して、ウィリーは目を開けた。
『…居たわ。こっちよ』
「良かった。行こっか」
『ええ。かなり衰弱していたから、急ぎましょう』
―――――――――――――――
「…」
「ティティ!」
『ティティ、しっかりして!』
しばらくして着いた先に、一匹の黒猫を見つけた。確実にティティだ。力なく闇に浮いている。黒いせいで少し見えにくいけど、体に気力が無いのは感じられた。
目を閉じてゆらゆらとしているその元へ、ウィリーがかけよった。というか浮いていった。小さい体を抱え、声をかける。
「…!」
『ティティ!目が覚めたのね』
「でも、こっちの姿が見えるのかな。ウィリーは【第四形態】があるからまだいいけど、ティティはマナで物を見ることはできたっけ…?」
「…!…!?」
『…ティティ?』
どうやら必死に、何かを口に出そうとしているみたい。だけどその言葉は俺たちには届いていなかった。
…あっ、これってもしかしてマナでしか会話できないんじゃ!?
「…!ティティ、マナで喋って!」
「?…『あー、あー…わぁ!』」
『よかった、聞こえるわ!』
「やっぱり!ここは精神世界だけどちょっと特殊なんだ!」
『ウィウィ、それはどういうことよ?』
「さっきも言ったとおりここは精神世界なんだけど…そっちは生身でここに連れてこられてるんだよね。俺は精神体としてここに来ているから普通に喋れてるのかもしれないけど、ウィリーやティティは精神に直接語りかけられるマナの声じゃないと聞こえないんじゃないかな?」
『へぇ…ってことは、物がマナ経由で見えるのも?』
「心で物を見るのと同じことをしているんじゃないかなって思うわけ」
「…『むずかしいけど…がんばる!』」
『それがいいけど、できないうちは私に掴まっていなさい。急がないといけないのは事実だから』
「…『はーい』」
「さて…それじゃあなんとかフィフィを探そうかな」
『どこに居るのかしらね。さっき探そうとしたけど、私じゃ無理だったわ…』
困ったなぁ。それじゃあアテがないよ…
と思っていると、ティティがきょろきょろし始めた。
「…『んー…こっち!』」
『ティティ、分かるの?』
「…『私、使い魔!』」
「あれ、召還されたわけじゃないんだよね?」
「…『フィフィと私、つながってるの』」
『それならきっとそっちね。つながってるってことは契約でしょう。軽くても、互いの居場所が分かる程度のものにはなるはずだし…』
「じゃあ、ティティを信じてそっちに行こう!」
―――――――――――――――
~フィフィ視点~
「・・・あー」
声が出せる。手足が動かせる。
どうやら感覚が戻ってきたみたい。
「・・・ふぅ」
【深遠】を見るためとはいえ、闇に自らを投げ出すとは…
我ながら、変なことをやっていたわね。
「・・・あら」
と思っていると、ふと手足に違和感が。
…いや、違う。
手足じゃない。
「・・・これは、何?」
手であろう部位にあるものは、闇。
形も見えないけど、何かがそこにある。
「・・・っぐあぁ!?」
それを見たとたん、【何か】が私を締め上げた!
息が止められ、内蔵が口からこぼれそうなほどに圧迫してくる!
「あがっ・・・っはあ、はぁ」
と思うと突如消え去る【何か】。
何が私の元に居るのだろう…
と思ったのもつかの間。今度は目の前に複数の気配を感じる!
「・・・っ!今度は何!?」
もやもやとした気配。でもそこには何も映らない。
…流石にここまで経験すると分かる。おそらく私は今、目が見えていないのね。
それを知った上で。私はニヤリと嗤う。
先ほども思ったこと。すなわち私という存在の終了。
多少なりともそれが引き伸ばせるなら、ある意味楽しいことよね?
魔法を使うためのいつもの準備とは違い、私が具現者として戦うための構え。自分のマナの流れを水として置き換えて扱うためのもの。爪先立ちをし、手を揃えて突き立て、不安定な揺らめきを自らに宿したその構えで…見えない気配に対峙した。
私が不利な状況にあるのなら、それを上回るだけの圧倒的暴力で環境を押しつぶさなきゃ。
「目が見えない?ちょうどいいハンデね。お相手しましょう。あなたたちが誰かは別として、私が生き延びるために…今ここで足掻きましょうか!!」
ありがとうございました。
どうなるんだかなー。
 




