第4話 「───っちィ、うざってぇ」
闇ウィウィ「めんどくせぇ奴だからな、アイツは。
ウィウィの力を借りてでもぶっ飛ばしてやりてぇ…!」
~モノ視点~
『ありゃ、ワタシの力…見えてタ?』
「見えてた、というか。知ってるんだよ。君…具現者の特徴はね」
風貌を見る。
黒と赤の派手なチェック、半袖のスーツのようなものを身につけていて、イメージはどちらかというとピエロ。目には光が宿っておらず、その点だけ見るなら死人と変わりないほど。
見える範囲のすべての肌に紋章が書かれていて…でも、それらはまったく意味不明な言葉…いや、文字の羅列だ。一つ一つさえでたらめで、まるで魔法文字を素人が書いたようにさえ見える。それともこれが彼の文字なんだろうか。
「自分の属性を…今回は闇か。それをマナ以外の力で操る。でたらめな力だけど、それは世界に確立された存在だからこそできること…当人の力は関係ない。今回とかは、闇そのものが付与された技だからできたことだよ」
『君たち、何者なのサ?』
「それはこっちが聞きたいよ。君たちは何を目的に、この施設を作ったのさ…あの主サマを一番上に仕立て上げて」
相手と睨み合う。
「上下関係というより、あれは協力関係だ。トップにする態度にしては、軽すぎるから。ってことは、君はあの人に大して何かしていたんじゃないかな。君にとってのみ、利点になることがあったはずだ」
『へぇ?面白く考えるんだネ』
「とりあえず適当に考えているだけだよ。人と人との関係なんて、想定が出来ない環境ではないからさ」
『でもザンネーン、違うんダ。ワタシは好きなようにしてル。ついてきたのはあっちサ』
彼が指差した先には、こちらを少し睨んでいる主サマの姿が。言葉を紡ごうと口を動かしているけど、こちらまで空気を震えさせることはできていない。
しかし近くにいたフェイアンには、ギリギリ聞こえたようだ。
「…裏切るのか、じゃと?」
「そう言ったのかい?」
「うむ。何か契約をしていたのではないか?」
『ンー…口約束かナ?』
「その程度でここまで言うはずないよね。まあいいけどさ、これ以上話は出来ないだろうし。とりあえず決めとこう、君がこの場所の諸悪の根源でいいんだね?」
『それはさすがに言い過ぎだヨ?でも…ま、似たり寄ったりかナ』
「ならよし。ウィウィ、任せたよ」
「…分かった。遠慮する必要は無いよね」
『へー、やる気なんダ。でもちょっとだけ足りないネー…じゃあついでニ。もうちょっとやる気にさせちゃった方がいいかナ?』
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~ウィウィ視点~
「どういうこと?」
『君たちのお仲間さン。探してるんでしょ?ワタシが取り込んでるのサ!』
「…は?」
取り込んでる?どういうこと?
───おそらく俺と同じ状態にある。精神体になってやがるんだ
「…なら、取り出すことはできる?」
───無理だ。闇によって抑圧して、その隙間に別のを埋め込む…まあ堕天使のやっていたこととかなら、埋め込んだ側のみなら取り出すことはできるが…
「今はカラダまでそのまま取り込まれてるから、取り出す枠がないってことだね」
『何を独り言喋ってるのかナー?とにかク。ワタシを後悔させないト、返すこともしないよーダ!』
「厄介だn───っちィ、うざってぇ」
ちょっ、待って!?
あ、少し遅かった。主導権を奪われちゃった。
「しばらく引っ込んでな。まずは潰した方がいいだろう?」
『あっはハ!そうこなくチャ!』
「待ってウィウィ!まだ何か…」
「うるせぇ!おらァ!」
手から白炎が溢れ出してきた。最初から遠慮ないね!?
闇はそのまま相手…モノさんが言っていた、ヴィヴィへと向かい…
『いただきまース』
「よし当たっ…ぐっ!?」
その拳は、当たる直前に開いた闇へと一直線。その中へと何か手応えを感じたけど、でもすぐに違和感を覚えて引っ込ませていた。
「ちっ…闇ってだけあって、いろいろ厄介じゃねぇか」
『まーだまダ!遊ぼうヨ?』
「モノ!」
「【思考短化】[dwe-4b4b4:@g]・・・っ」
『甘いナー』
呼ばれた直後に突如懐から現れたモノさんは、四肢の節々を一瞬にして打ち抜くように攻撃。でもそのすべてが同じく闇に呑まれていく。
「こいつ…力を奪っているんだ」
「いやそれだけじゃねぇ。この手応え…柔らかいっつーか、男性のそれじゃねぇ。フィフィだ」
「なっ!?」
『よく分かったネ!?』
「いやなんでお前が驚いてんだ」
『まさかあの子ト…』
「何をどう思ったのかは知らんが、予測がついただけだ…はぁっ!」
───【パキイィィィン………】
…あ、時間が止まった。思考時間みたいだ。
───おい、ウィウィ。
やっぱり止めていたのはそっちだったんだね。どうしたの?
───次俺が奴に手をブチ込む際に、してほしい事がある
…なるほど。フィフィたちは、別の世界にいるんだね。だから今の感覚があったってことか
───おそらく。闇の場合、二極属性の一つであるレベルなんだ…加えて精神に直結する属性。精神世界が現実に効果を及ぼせるほどの力を持っているかもしれねぇ
肉体を精神に閉じ込めるなんて、そのレベルでしか出来なさそうだしね。分かった…でも何をするの?
───選択肢は二つ。一つはあの世界の計算をしてくることだ
それなら、思考時間を止めればできそうかな?
───まあそれは後だ。どちらかというとこちらの方がいいんだが…
へ?
───あの世界に飛び込んでこい。あれは精神世界だ。肉体が入る余地があるといっても、精神体で入った方が本来の形に合うはずだからな
…え、でもどうやって
───前に一回やっただろ?あれを再現すればいいんだよ。堕天使の記憶を見に行ったときの話だ
…ああ、あれだね。わかった、やってみる。手は触れていないけど、世界には入っているし…何とかできるかな
「…はぁ、クソ」
「どうしたのウィウィ…いや、闇のウィウィか」
「気にすんな。作戦を立てていただけだ」
『気合入れガ?精神論かナ?まあ意味はないだろうけどサ』
「あー…精神論…まあ近いな。うん」
「へ?」
「…(モノ。しばらく体力を消耗させるぞ)」
「…(狙いがあるんだね。分かったよ)」
「んじゃ、いこうか…オラぁ!」
───────────────
~フィフィ視点~
「・・・っ」
…ふわふわと、ゆらゆらと。
闇の中を揺らめいていた。
「・・・──」
先ほどまで、私は何を考えていたのか。
「・・・──、───」
忘れてしまった。独り言にかき消されて…
「・・・──!?───!!」
違う!独り言じゃない、闇のせいだった!
「・・・──」
ぼーっとしていたら。
どこからか飛んできた謎の炎。
「・・・」
それにぶつかり、私は目を覚ましていた。
痛かった。
「・・・──、───」
まさかお腹に当たるとは。
「・・・」
でも、またすぐ気を失ってしまいそうだ。
意識が朦朧とする。
「・・・──」
どれくらいここにいるのやら。
そろそろ気が狂いそうね。
「…─」
…そういえば、この世界の計算をしていなかった。
「・・・」
少し怖いけど、やって暇を潰しましょうか。
ありがとうございました。
天気の差が酷くてお腹壊しました。




