第11話 連なりあう母と子の意志
すいません遅れました時間なかったですorz
「さて、1か月経ったわけだが。お互い準備はいいな?」
「うん、いいよー」
「こっちも大丈夫ー」
『似てるわねえ、二人とも』
「得物は違うがな。まあ親子なのだし、似てもいいだろうな」
遂に闘いの時はやってきた。
いつもの訓練場の真ん中に、ウィウィとミルが向かい合って立っている。ウィリーとルガルトは、見学と、念のための救護要員として訓練場の審判の位置にいた。
「ママは調子どう?」
「わが子がものすごい強敵に見えて怖い」
「うん、ならよかったー」
『ちょっと待てそこおかしいでしょ』
今日はなんと、ミルは昔使っていた本物のハルバードを使っている。昔使っていたもの、ということはそれだけ殺生能力があるということなのだ。
どうやら、今回はウィウィに殺気というものを教える機会でもあるらしいが、初めての経験が実践というのはどういうことなのだろうか。ハルバードを振り回す速度は、前回の模擬戦の時よりも上がっている。体力的にも問題はなさそうだ。
「でもママのほうが強そうだよ?」
「それは肉体のスペックを考慮していないから言えることだよ…」
対するウィウィは、無手だ。しかし手にうっすらと空気の揺らぎが見られる。そこに何が隠されているのか、それはウィウィしか知らない。手を握ったり開いたりして、動きを確かめているウィウィは、まるで熟練の格闘士だ。多少子供の体格にあった構えをしているあたりにおいてのみ、未だ彼が4歳であることを示している。というか4歳でここまではっきりと地に足をつけている時点で何かがおかしいがスルーだ。
「これが初めてだねー」
「というか本物使ってるから危ないんだけどなあ…」
「まあ大丈夫だと思うよ?」
「ママは怖いです…」
そして、闘いは唐突に幕を開ける。
「じゃあそろそろ始めようか…ねっ!」
「っ!」
10歩ほど離れた位置取りだった彼らは、ミルの突撃によって急激に差を縮められる。彼女の持つハルバードに最も適した3歩程の距離となり、彼女の得物は最初からトップスピードであるかのようにウィウィに斧の刃を近づけていった。
「はっ!!」
「うわっ?!」
しかし彼もまた、一か月で我流格闘術を(ウィリーを巻き込んで)鍛えたのだ。勢いよく振られるそのハルバードを、勘ではなく眼で見て、斧の腹に掌底をぶち当てる。バランスを崩したミルに、姿勢を低くして急激に近づき、お互いに手で触れあえるほどの位置となった。
「くっ!」
「うえっ?!」
だが、もともとウィウィが格闘を使ってくるということは既に知っていたうえ、格闘士との戦闘経験自体は傭兵時代にあったことから、長めの武器を使っている彼女にも対策はあった。
刃を自分側に向け、ハルバードの持ち手を利用した、少し自分に危ないながらも素早く攻撃できる棍術で牽制。今までウィリーが操縦していたファイアゴーレムが武器を持っていなかったがゆえに、武器に対する経験の少なかったウィウィが、突然の棒の攻撃に驚き、後退する。
「えいっ!」
「くうっ!」
その隙を逃さず追撃するミル。重い武器を使うミルは、昔からその速度に悩まされてきたのだ。それが故に、彼女は武器の運動エネルギーを使い、どんどん加速していく戦法を自然と習得していったのだ。今回もそれは活かされており、少しずつ早くなっていく武器の速度にウィウィは防戦必死となった。しかし。
「…」
「…な…なに?」
加速していくその刃に対しても、最初少し驚いただけで、あとは無言で眼を細め、さばき続けるウィウィ。少し恐怖を感じたミルは、彼に問いかけたが…
「…」
「何か言ってよ…」
何も言わないウィウィ。その間にも速度を上昇させるミル。
「!ってあっ!」
「きゃあっ?!」
しかしウィウィは急に眼を限界まで見開いたかと思うと、刃に真正面から手を押し当てた。突然の前方からの衝撃に、またバランスを崩すミル。
「おりゃああああ!!」
「あ、これまずい」
今度は姿勢を低くすることなく、棒術さえもさせない位置にたつウィウィ。彼の手と足の速度から繰り出されるラッシュを見て、彼女は負けを確信した。
------------------
『勝者、ウィウィー』
「やたー!」
「あれは勝てないって…」
試合終わって。ウィリーのだした判決に純粋に勝利を喜ぶウィウィと、潔く負けを認めるミル。ルガルトが唖然としているのは、最後のウィウィのカウンターだろう。
「というかあれどうやって刃を跳ね返したの?あれ本来だったら痛いよね?」
「うん、マナで跳ね返した」
『「「えっ」」』
「マナで手を守ってたんだ。武器使って指の可動範囲狭めるよりはこっちのほうがいいって思ったんだよ?」
「ああうん、やっぱウィウィだったか」
『もう驚きたくないわ…』
「まあウィウィだしな」
「?」
元々マナには硬さなどない。強いて言うなら微かに強度はある。だがそれは、本来人間などが使う量で固めた程度だった場合、その硬さはせいぜいが紙である。
しかし、ウィウィが使ったがゆえにその硬さはダイヤモンドさえも超えていたのだろう。おまけにダイヤモンドのように割れるわけでもないため、その守りは最強クラスとなっていたのだ。
「でもそれって全身に付けられないの?」
「それは無理。まだマナが足りないよ…」
『まだってそれ届かせる気なのね…』
改めて、ウィウィの異常さを実感した彼らなのだった。
ありがとうございました。
次回は少し時間をください。