第2話 「…つくづく恐ろしいのう」
フェイアン「ここは敵陣。こちらは少数精鋭とはいえ、
少しは多勢に無勢…が効果を成すとは思うとったんじゃがなぁ…」
~フェイアン視点~
「貴様、なにをす」
「てい!」
「むぐっ!」
「たあっ!」
「ぐえっ」
───ドサッ…
「…少しは忍ぶべきではないかのう?」
「え?」
せんさーを越えて、普通の道を往く妾ら。辺りは廊下の様でもあり、しかし坑道の様でもあった。入り組んだ細い道の途中には幾多もの見張りが。
あまりにも数が多いため、道中の見張りに見つからないほうがいい。そう提言したツェルの言葉を無視するように、ウィウィは火炎弾の如く吹っ飛び、同時に見張りも殴って吹っ飛ばしておった。
いや、完全には無視をしていないのじゃろう。吹っ飛ばす際に声が大きくならないよう、相手の口を覆った状態で攻撃していた。しかし、かなりバレる寸前な気がするのじゃが…。
とりあえず、その点を考えてウィウィに声をかけた。
「このままでは、いつ他の兵に見つかるとも限らぬ。多少危険性を吟味しておくべきじゃと妾は思うぞ…」
「それもそうだけど、今は素早く行くべきだと思うよ。警戒が薄い今だからこそ、この時間を有効に使いたいんだ」
『…なるほど、センサーに反応がないことから敵は油断していると。しかし、親玉さんは確実に侵入には気づいているはずだから、時間が経てばセンサーの無反応を危惧して警戒をさせるはず。こういうことですか?』
「そうそう。だから急がないと」
「あの者たちを早く救いたい気持ちは分かった。しかし、このままでは事故が起きる可能性がある。せめてそこに倒れた者を隠すことくらいはせぬか?」
「…それもそっか」
そういうと、ウィウィは倒した見張りを細い道の角に隠した。
「殺さぬのか?」
「それこそ他の人に警戒されるって。それに、この人たちだって人だし・・・え、甘い?それはそうだけど、あんまり命を奪いたくはないんだよ。闇の俺も、俺の事は知ってるでしょ?」
外で結構暴れていたのは、無視して考えた方がいいのじゃろうか。
そう思いながら、警戒して先へ進んでいく。
「それにしてもここは綺麗じゃな。整理がされておる」
「壁や床の石の質も、中々悪くないね」
「この辺は、上流の人たちが集まって仕事をしている場所だから。上のようなところとは違うのよ」
『上流、ですか。座標的には下なのに…』
「そこはいいの。問題はここの連絡網よ」
「連絡網?」
「マナによる特殊な回線を使って、一瞬で互いの状態を確認できる連絡網よ。これがあるから、倒しつつやり過ごすってこともしたくはないの」
「…先に言っておいてほしかったなぁ」
もうすでに、一人倒した後であった。
「ここは重要なデータが保管されていたり、優秀な実験体が主様に送られたりしているから。いつ何が起こってもおかしくないように行動されているのよ」
『管理はしっかりしている、と』
「じゃ、行きましょうか。何かが起きてもおかしくはないわ、早く主様の下へ向かいましょう」
「おー」
―――――――――――――――
それからはウィウィも見張りを倒すことはせず、隠れてやり過ごすことが多くなり…
時折妾やツェルが幻影の魔法を放ち、それを堕天使とウィウィが補助をして、その隙にモノが道を見つける。この連携が功を奏し、案外素早くかの闇の主とやらの下へたどり着けたのじゃった。
が、ここからがかなりの難関であった。
「…ドアの前に見張りが二人」
鉄の扉。その前に、真っ黒な鎧を着けた二人の門番。それを確認した妾らは、近くにあった柱に隠れることにした。
そこからわずかに顔を出し、門番の様子を確認するモノ。その陰に隠れる妾ら。
「どうじゃ、隙はあるか」
「ぜんぜん。あの様子、かなりの精鋭だと思うし…」
モノの目線の先には、闇のマナがわずかに見え始めておった。
「この僕でさえ見えるんだから。相当の保有量だと思う」
『となると、生半可な魔法は効かないでしょうね』
「闇魔法なんてもってのほかね。幻惑をかけられたことがすぐにばれるはず」
「ならどうするというのじゃ?」
悩む妾ら。そこに出たのは、ウィウィじゃった。
「んー」
「ウィウィ?」
「ここまで来たら、警報も何もないんじゃないかな?」
『どういうことです?』
「仮にあの二人を倒し、即座に警報を鳴らされたとして…」
ウィウィの目は、門を完全に捉えておった。
「あの門の距離。流石に十分届くよね」
「…じゃとしても、念には念を入れる必要があると思うが?」
「それに」
「む」
「マナが見える人は、よく見てみて」
いわれるとおり、門番をもう少し強く確認してみる。
「…何もないが」
「じゃ、後ろにいた普通の人たちは?」
「ふむ?」
今度は少し戻り、先ほどまで捌いてきた監視の者を見てみる。すると。
「…ほう、なるほど」
こちらには少しマナの線が見えていた。先ほどまでの話からすると…
「あの線はあれじゃな?通信機器がどうこうとやらの…」
『フェイアンが見たのはおそらく連絡線でしょう。あれが何故か、門番にはない…と』
「うむ。なるほどな。これなら倒しても問題はなさそうじゃ」
ということで、柱の陰で作戦会議。
「ではどうやって倒すか、じゃが…殺すのは今回も不味いかのう?」
「黙らせるならそれがいいけど…どうなの?堕天使さん」
「そうね。自爆されると困るし…殺さず気絶で抑えましょう」
「一瞬で済ませられる方法はあるかのう?」
「ウィウィの力は?」
『倒せることに関してはだれも疑問を抱かないんですね…』
「まあ、ここまで人がいるしね」
『そういう問題じゃないです』
「じゃ、俺が行く?」
「うむ。最初のときと同じように頼むぞ」
「実力は段違いだから、気をつけるのよ」
「はいはーい、補助はお願いしまーす」
そういうと、あっという間に敵の下へ。
文字通り敵の真下にたどり着くと、
「とうっ!」
誰も気づかぬうちにしゃがんだまま相手の足に軽い蹴りを入れ、直後に飛び上がって首筋へ直撃。
そこで何をするか気づいた妾は、即座に周囲に黒い霧を張った。
「ナイス!」
「はっ!だれd」
「ちょっと黙っててね!」
その様子に気づいた門番がウィウィを目に捉えようとした瞬間、ウィウィは炎を自分の後ろで爆発させて吹っ飛び…
「よっと!」
「ぐえっ」
相手の後ろに回りこんだかと思うと、今度は地面スレスレを爆発させて。こちらも首の後ろへ手刀を浴びせたのじゃった。
「…ふぅ」
「…つくづく恐ろしいのう」
そうかなー?とのんきに話すウィウィの後ろは、きれいな床のまま。それでいて門番は完全に気を失っている。後でここに来る者も、門番さえいなければ何事もなく通り去るだろう、と思えるほど傷がついておらんかった。
「具現者ということを抜きにしても、あまりにも洗練されたマナ操作技術じゃ。直感が導く答えであろうことは確かじゃが、それでも素晴らしいのう」
「思ったようにやってるだけだからね、俺は。考えるのは苦手だし」
「…左様か」
「それと、フェイアンありがとね」
「うむ」
爆発を起こそうとしていたことは予測できたからの。音を消し、光を覆うこの霧を張ったのは正解じゃった。
「さえぎるものはなくなったわね」
「急ごう、フィフィたちが待ってる」
ありがとうございました。
まさかの予約投稿のし忘れっていう。ごめんなさい。