第1話 「あの3人を助けに行こう」
区切りが唐突だけど6章スタート。
ウィウィ「具現者って何だろう?なんて考える暇もない!
まずはいなくなった3人を助けにいかないと!」
~ウィウィ視点~
あの3人がいなくなってから。
上から他の4人が乗った泡がゆっくり降りてきた。
どうやら俺が一人でここにいることに違和感を覚えたようで、みんなすこし真剣そうな表情で泡から抜け出してきた。
「ウィウィ、他の3人はどうしたのじゃ」
「わからない。多分攫われたと思う」
「攫われた、ですって?あの3人が?」
『…ウィリーやティティは感知能力も高いはず。フィフィにいたっては具現者ですし、基礎的な力は普通の人の数倍はあると思うのですが…』
「そのスペックを掻い潜って攫えるほどの力…」
「相当な手慣れだよね。どうしよっか、3人ともきちんと救いたいんだけど」
「これは、闇系の魔法が使われたとみていいかしら?」
「それだったら、マナの残痕から俺にも分かるはずなんだけど…」
その話を聞いて、モノがふと声を出した。
「…あっち、具現者居るとか?」
「へ?」
「簡単な話だよ、闇に関係する具現者が居るかもしれないってこと。僕は分からないけど、ウィウィやフィフィに対抗できる力なんて具現者級じゃないと無理だよ。それに、この世界には四大属性や二極属性がある。属性は6つもあるんだ。それなのに炎と水に関係する具現者だけしか居ないなんて、おかしいと思わないかい?」
『…話はなんとなく分かるのですが、いまいち実感が…』
「ま、僕の想像によるものだから。気にはしなくていいよ」
「…ううん、モノ。それ結構いい線行ってるかもしれない」
「もし闇に関係する具現者級の力の持ち主が居たとして…」
「それに対して俺が対抗できるかって話だよね」
「少なくとも妾らは最初からその者と戦うことはあきらめておる。力の差があるのは知っておるからな」
『だから、フィフィやティティ、ウィリーを助けることを私たちは最優先事項としますね』
「わかったー」
「…まさかとは思うけど、主様が?」
「あの実験の結果の力とか?」
「最近の力は知らないから、もしかしたらそこまで力がついていたりするかもしれないわね…」
「いずれにしても俺はぶっ飛ばすよ!」
―――ちげぇだろ…
「あ、間違えた。というかちょっと交代しようよ」
―――ンなホイホイ交代すんなっての…はぁ。
もはや慣れきったようにスッと交代。俺の方は精神体へ。
「―――よっと。とりあえずお前の記憶を探った時からして、お前の主さんだっていう可能性は極めて薄いぜ?」
「そうなの?」
「そもそも闇の質がまだマナ寄りだった。具現者の力は中途半端にはできないんだよ。俺たちの炎の中にもマナは混じっていなかっただろ?」
―――具現者の力にはマナが混ざらないもんね。
「混ぜようと思えば混ぜられるが、そんな面倒なことはまずしねぇ。だからあれはその主サマ自身の力だろうな」
「なら、いったい誰がやったというの?」
「んなもの…あー…誰なんだろうな。俺ァ分からん」
「えぇ…」
「ただ」
そこで闇の俺は、人差し指を立てた。
「一つだけ可能性がある。そいつに闇を『教えた』やつだ」
『・・・教えた?』
「知っているだろうが、闇は普通じゃわかんねぇ。俺たちだってフェイアンが居なけりゃ気づかなかったかもしれないからよ。ウィウィの場合、俺が居るから話が違うが」
「だとしても、そんな強者を遣う奴なんているのかな?」
「いるんじゃねぇか?俺たちは国やらルールやらとかを吹っ飛ばしてここまできたようだが、ここの奴らもそうとは限らねぇ。特にこんな監獄チックな場所じゃ、それを監視する頭のいい最強がいて、それを中心とする集団がいてもおかしくはないはずだ」
「簡単な集団なら、実力は私と同じくらいのはず。親衛隊くらいならあなたたちは簡単に倒せるはずよ。でもその先はどうかしらね」
「ふむ…ウィウィ。中ボス格が居た場合、俺の力も多少は使わないといけないんじゃないか?」
―――それは大丈夫だよ。こっちも強くなったんだし、俺の方で何とかできるはず!
「どうだかねぇ。甘くは見ないほうがいいかもしれんぞ、ある意味初めてお前が失敗した相手なんだからよ」
―――うぐっ。
「まあいい。俺たちも道中の戦闘は参加する。主サマとやらの場所は分かってるのか?」
「一応。私の記憶が間違っていなければ、その装飾のついた入り口にセンサーがあったはずよ」
「センサー?」
「侵入者のためのものと、主様専用の入り口を作成するためのものの二つ。センサーなしでも辿り着けるけど、主様専用の入り口には主様のマナが必要になるから無理ね」
『侵入者用のもの、とは?』
「呼んで字のごとくよ。通常よりも警備段階が上げられるようにって」
『では、このまま入ると危険視された状態になる?』
「そうね。喜ばしくはないわ」
―――あ、そろそろ交代してー
「自由だなおめぇ!?…はぁ、分かった」
というわけで闇の俺とは交代。率直な行動に感謝します。
「よっと。んー、そのセンサーだけどさ」
「何かしら?」
「魔法でできてるの?」
「えっと…そのはずね。おかしなマナを感知したら反応するタイプ」
「よし!間を通り抜けたら誰でも反応するとかじゃなくてよかった。それなら俺がさえぎるよ!」
『ああ、フィフィと同じことをするんですね?』
「そうそう。でもこっちは炎だから、きっちりジャンプしてね?」
というわけで、炎よ!結界を作り、マナの流れを遮れ!
俺がそう念じると、俺から炎が溢れ出す。その炎はセンサーに触れて…
何も起こらない。そのままセンサー射出部分を、ぜんぶ炎で覆っていく。
「よし!これでいいね!」
「ほう、これはなかなか」
『具現者としての属性の力は…やっぱり研究したいものですね』
「俺の力はいくらでも見せられるけど…実験はいやだなぁ…ってそうじゃない!」
首をブンブンと振って、意識のリセット。
皆の方向へ向いた。
これは俺のミスから生まれたことだけど、それでも皆の力を借りなきゃ!
「よし!それじゃあ、あの3人を助けに行こう!」
「「「『おう!』」」」
―――――――――――――――
~フィフィ視点~
「・・・?」
私は、ふと目を覚ました。
闇の中で、私は一人だった。
何があったのだろう。
「・・・───…?!」
みんなは?と声を出そうとして、気づいた。
声が出ない。
「──っ、───!!」
いや、喉は動いている。
口も動いている。
その実感はある。
この状態でいつも通りの空気の中にいれば。
声は聞こえるはず。
でも、声はない。
必死で大声を出そうとしても。
ずっと暗闇の中に消えたまま。
「───・・・──っ」
これ以上は無理だ。
とりあえず諦めよう。
「・・・」
…そうなると。
この空間そのものへ謎が出てくる。
「・・・?」
空気もないのに。
何故息が出来る?
「・・・?」
足場もないのに。
何故落ちることがない?
「・・・?」
何で私は。
この中で生きているんだろう?
答えを虚空に問いかけても。
飲み込まれるだけで。
返されることはなかった。
ありがとうございました。
数年ぶりに時間が取れた。書き溜めしちゃおうかな。




