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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第5章 Legend、開幕
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第29話 How to Do ―成事―

事を成す。それは積み重なりと、わずかな運が関わることだ。

常にそれは変わらず、されど時として度合いを変えるだろう。

 ~ウィウィサイド~


 地下で謎の牢から出した子供、1758番…イナゴヤと仮で名付けられた彼は、ウィウィたちにどうして牢にいるのかの話をした。


「―――ふむ。つまり、お主らはこの地にて母を持たず育ち、そしてこの地で教育を受け、家の代わりにかの牢に入れられたと」


 その内容を聞き、フェイアンは少し過去の、堕天使との話を思い出した。


 ――技術は発達してるから。昔に比べて注ぐ正確さは上がったらしいのよ…でも、さすがに人側の適正云々は全く調整ができないって言ってたわね。

 ――元々光であるのが前提の存在。それが人ですからね…。

 ――さすがにその辺りは、子作りとかそういったのも管理する必要があるらしいのよね…尤も私は知らないけど。

 ――子孫レベルの調整か…人道から外れてきたのう。

 ――あなた、人ではないじゃない。

 ――それもそうだのう。


「どうやらかの堕天使の言っていた、件の想定上のしすてむ?が完成した可能性があるのう…」

「子供まで闇と関わらせるって話だっけ?」

「大雑把に言ってしまえばそうじゃな。ということは、もしや遺伝子操作の類にまで手を出し始めたというのか?」

『少し遠く見すぎな気がしますね…。とはいえ、既にここで子供ができている以上、体制は整っているはず。そこまでの技術力は持っていてもおかしくありません』

「ますます危険じゃな」


 そうやって話し合う3人に、声をかけるイナゴヤ。


「えっと、もう一回聞きたいんだけど…ここはまだ監獄のなか?」

「だね。むしろ降りてる」

「外は?」

「いつもの景色があると思うよ、俺は」

「いつもって言っても、僕はわからないんだけど…」

「外の感覚は分かるんだよね。さっきの風で外と勘違いしてたし」

「うん、分かる」

「ということは、外出はしておったと」

『とはいえきちんとした外界を知っているわけではなさそうですね。やはり監獄内で育ったと見るべきです』

「んー…それなら俺がちょっと質問。太陽ってどんな感じだった?」

「太陽?えっと…白い丸!」

「『白い…?』」

「当たりー」

「なぬ?」

「じゃあ海は?」

「海?」

「そう。海」

「んー…こう、ぐにゃぐにゃって」


 そういって、手をありとあらゆる方向にぐにゃぐにゃ揺らすイナゴヤ。


「ふんふん」

「ウィウィ、何をしておる」

「見てきたものがなんなのかなーって」

『…今それ重要ですか?』

「話を合わせるのにはちょうどいいかなって。今だって、これで壊世大陸のどこかを指しているってことは分かったでしょ?」

「…う、うーむ…わかった。お主が何かしたいというのなら自由にするがよい。妾らも聞いていることにしよう」

「よし。じゃあ続き!」


 ―――――――――――――――

 ~フィフィサイド~


『あいつ等、いったい何を…?!』


 後ろを振り向けば、なぜか突然質問タイムを始めていたウィウィたちを見て、驚きの表情を隠せないウィリー。


「…相手が何かしでかそうとしているというのに、暢気ね」

「ミー…」

『こういうときでもこうする、それがあいつ等だって?そう…』


 何をするでもなく、ただ待機せざるを得なくなったウィリー達。


『…そうなると暇ね。フィフィが何か見つけてくれればいいのだけれど。こちらからは特に何も動かせないし』

「じゃあ、できる限り隅々を探索してみましょうか?」

『そうしましょうか。【第零形態(ゼロ)】・・・っと』


 ウィリーは炎でできた人型のゴーレムを霧散させ、元のファイアラット型に戻った。型というよりは、ファイアゴーレムの起動を切っただけだが。

 久しく魔物の姿に戻ったウィリーは、ひとつ伸びをした。


『…くあぁっ!この姿になるのも久しぶりだわ』

「…そういえばあなたは魔物だったわね。人間らしすぎて、ある種の自立型ゴーレムのようにしか見えてなかったわ」

『そこまで正確にできているってことは十分良いことね。よかったわ』


 トコトコと歩いていくウィリー、それについて行く堕天使。


『そういえば貴方の名前を聞いていなかったわね…ホント今更だけど』

「…本当に今更ね。今となっては、このままでもいいかなと思ってる位だわ」

『もう「堕天使」が名前よね。ってそうじゃない、違うのよ』


 首をプルプルと振るウィリー。


『名前がないって言うのは、ヒトの世界じゃ困ることなの。会話をする存在であるというのも大切だけど…私は個人を認識するのに専用の言葉がある。そのことが、自分を自分たらしめるってことになるんじゃないかなって』

「難しいこと言うわね…まあいいわ。気に入った名前があったら教えて」

『そうするわ…』


 そう話しながら、パネルのすぐ手前まで来た二人。


『っと、貴方はこの乗り物?足場?のことを知っているの?』

「使い方くらいしか。これがマナ以外の力で動いているってことも一応は知っているけど…」

『え、これマナ以外で動くの?』

「そうよ?」

『それ、結構ポイントよね。これ、外部の影響とかを受けて動いたりすることはあるの?』

「あるわ。このエリアの所々にあるパイプ。その入り口には全部これに似たパネルがあるのだけれど、そこからなら遠隔で呼び出せるわ」

『へぇ…でも時間はかかるの?』

「そうよ。さすがに瞬間移動みたいにはできないわ」

『ふーん…あれ?』

「どうしたの?」

『これ、どうやって燃料の供給をするの?』

「?」

『この足場、さっきそっちが言った通りで、マナ以外を使って動いているっていうなら…それ相応の燃料がどこかにくっついているわけよね』

「そうね」

『なら何処にあるのよ?パイプでどこかと繋いでいるなら、今この段階で、私たちの目にとって普通に動かせるはずはないでしょ?』

「んー…ああ、確かに。もし時間差のない別の場所とつながっているのなら、現実との時間差のある私たちには遅く見えるはずなのに。それもそうね」


 端っこでは、いまだに普通の速度で回転をしている歯車が。

 引っかかる部分はおそらく通常より遅くなっているはずだが、そこは魔法で暗く、見えなくなっているようだ。パッと見た違和感はまったく無い。


『じゃあこれにくっついて、幻覚を見せるのに不都合無い状態にしているはずなのだけど…』

「…目には入らない、と。なら底じゃないかしら?」

『底?この床の?』

「仮にエンジンの類で動かせているというのなら…きちんとした大きさを持つエンジンとタンクをどこかにくっつけなくちゃいけない。側面は無理ね、ここは壁沿いに下りていく構造なわけだし」

『ふむ』

「そして、もしこの足場の上にあるなら、私たちの目には見えているはず。幻惑がかかって見えないにしても、この人数では確実にぶつかっているはずよ」

『で、消去法で考えて、下にぶら下がっている、と』

「そういうこと。私はここで待っているから、少し見てきたら?もし何かあれば、そこをいじって動かせるように、場所くらいは把握しておきたいの」

『一応チェックくらいできないわけじゃないけど…あんまり期待はしないでね』


 そういうと、ウィリーはわずかな床の隙間、通気のための穴からスルリと下に降りていく。


「…ふぅ。待っていてください、我が主(・・・)。貴方が望む世界の為に、貴方を元の【()】へと返り咲かせられるよう、私は尽力いたします」

ありがとうございました。

忙しいね…。

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