第10話 過去と今と
…一部のゲームでは朝6時までが一日だからセーフ?いや、アウトか。
そして今更ながら魔法陣と魔方陣の違いを理解。修正しておきました。
あと闘いの書き方わからん。教えてくだしあ…
『明らかに私たちが強くなりすぎてる感じがするわ…』
一週間ほど、ミル、ウィウィ、ウィリーの三人が訓練した結果…
「坊主だからって一言で終わらせられるのか?あれ…」
「とりあえずひどいことだけはわかった」
『まあウィウィだしね』
ウィウィは、基礎を最初の一日程度で済ませてしまった。そのあとの数日は、常に体を動かし続ける訓練を自主的に行っており、体力においてはまず困難はないだろうと言えるレベルまで成長させてしまった。それだけだったら技術面で上回ればいいのだが、その訓練というものが…
『なんでファイアゴーレム使った模擬戦ってところに行きつくのよ…』
「坊主だし、深く考えてはいけないと思うぞ」
「攻守も魔術も格闘も、どれも最高クラスじゃないですかーやだー!」
自ら作り上げたファイアゴーレムにウィリーを乗せて、闘うことで、格闘戦技術と魔法技術を同時に強化する、というものだった。
「というかそもそもそんなに説明していたんだ?」
『いや、私が説明したのはあくまでも魔法の理論と、ウィウィが自力で創り上げた創炎魔法の効率化だけ、だったはずなんだけど…』
「どっかでトチ狂ってゴーレムができたっつーわけか…」
『もうわけがわからないわ…』
元々ウィウィが行っていた、あのマナを自分の体から炎という形で放出する魔法の式など、見つかってはいなかった。それを見たウィリーが創炎魔法という名前を付け、魔法の基礎と結び付けて効率化させようとしたのはいいのだが、何故か途中で炎が動き出したのだ。きちんとした形を持って。面白がったウィウィがそれを自力で解析、魔物であるはずのファイアゴーレムに類似していたことが判明。そこにウィリーを半ば強引に繋げて、闘って、というか遊んでいたのだった。
『いろいろとウィウィには振り回されているような気がするわ』
「奇遇ね、私もそう思った」
「あいつのことは深く考えたら負けだな…」
このとき、皆の意見は一致していた。
------------------
「さて、ミル。坊主もかなり強くなってるが、こっちだって何とかする必要はあるよな?」
「そうね…あれほどまで、とまではいかなくても、ね」
「ふむ。なら今日は闘ってからにするか?」
「そうしたほうがよさそうね」
ミルは、今日も訓練に来ていた。仕事云々は村長に説明したらなんとかなったらしい。
「じゃあ、いつものを使わせてもらうか…」
ルガルトが取り出したのは、金属でできた、片手で持てそうな剣と盾だ。剣の長さと盾の直径は、だいたいがルガルトの腕と変わらない。だが見た目の割に重いらしく、斬る、というよりは叩き斬る、といったほうが正しそうな動きで素振りをしている。因みに刃は潰されている。
「実戦使用可能レベル一歩手前ってかなり危ない気がするんだけどなあ…」
対してミルは、槍と大斧と大鎌を合わせたような、少し変わったハルバードを手にしていた。先端に付くそれらは、本来のそれぞれの武器が持つ大きさを、槍以外少しだけ縮めてくっつけてあったかのようだった。それ相応に重い武器のようだが、ミルはその重さを利用し、風を斬るかのような速度でハルバードを振っている。こちらも刃は潰されているが、ミルの言う通り実戦使用可能レベル一歩手前、つまり大剣ほどにまで重い武器だと、斬り殺すことは不可能でも殴り殺すことは可能なほど重く硬い武器なのだ。そして今回二人は共に重めの武器を使っているため…
「一歩間違えれば殺してしまうんだけどなあ…」
と、あまり気が乗らない状態のミル。
「仕方ねえだろ、力取り戻すにゃ実際の武器使うのが一番だろうに。あいつらのペースに追いつくために、早速だがやるぞ」
「ですねー…」
ニヤリと口元を歪ませるルガルトに、丸めた背中をゆっくりと戻しつつため息をつくミル。対照的な姿勢で向き合った二人だが…
彼らは、れっきとした炎溶人。
闘いにおいて、他の者に油断をすることなど、ありえないのだ。
「らあっ!!」
「!」
合図もなく動き出したルガルト。それにも特に動じず、ミルはハルバードを自然な状態で構える。右手に剣、左手に盾を構えた、ごくありふれた片手剣使いのように見える彼だが、見た目に反し重いそれは、時として武器をへし折ってしまう。そんな片手剣を暴風のように、ミルへ向かって振り回した。一撃一撃が重く、さらに素早い、純粋な動きを持った剣術を前にして、ミルは、時には剣を斧部分に合わせて逸らし、時には槍部分を相手に向けて牽制しながら避けていた。この守りは、すべてが重く、頑丈な武器だからこそできる芸当だ。
「うおっ?!」
「やあっ!」
そして鎌部分を剣にぶち当てるという強引な方法で暴風の如き剣裁きを止めさせた。バランスを崩したルガルトに、今度はミルが攻めに向かう。重量を乗せられる武器の一種であるハルバードの特性を活かして振り回すこともあれば、まるで慣性を無視したかのように動きが反転し、本来流れるはずの向きとは逆に刃が向いたりする、異質な闘いを行う彼女の武器を、こちらもまた重い剣を利用して、当てて流したり、また盾を使って受け流したりしながら闘う。
「せいっ!」
「はあっ!」
異質なる形でありながら、腕力と武器重量のバランスの取れた二人である。時としてお互いの得物をぶつけ合い、剣と斧による力比べを行ってさえいた。そのたびにガキンと音を出す刃。刃こぼれこそ起きないだろうが、それでも危ないものは危ないのだ。
「ぐぐぐ…」
「ううーっ!」
まあもっとも。
「おらあああっ!」
「わああああっ?!」
女と男、それも家庭的な女と物理特化な男が、互いの得物をぶち当てたところで、体力の足りない女のほうが飛ばされるのは必然である。ミルもまたその一人だった。
------------------
「むむむ…」
「…だいぶ弱ってるな」
「仕方ないでしょうに…。こちとらブレイクタイム数年入ってるんだもの」
「それもそうか」
元々ミルは、ここで育ってから一旦村を離れ、炎溶人の傭兵として国を暫く歩いていた。炎溶人は、成人してからしばらくを傭兵として過ごすことが多い。その時の間隔を思い出しながらやってたのに、と愚痴をこぼすミルに対し、仕方ない、と頭をがりがりと掻くルガルト。
「まあ、大体これを数日しておけば、筋力くらいは戻るだろう」
「え?それは早くない?」
「はあ…ここみろ、ここ」
「?」
「魔法陣。あるだろ?」
「あっ…」
そこに埋め込まれていたのは、強化系の魔法陣。強化系、といっても、これはマナ自体を根本から変えるかわりに、非常にゆっくりとしか進行しないというものであった。つまり、増加量こそ少ないながらも、これはブーストである。
「…ここまでする?」
「するぞ?俺は」
「…」
疲れとは別の意味で、膝から崩れ落ちたミルであった。
ありがとうございました。
(8月16日武器名修正しました)