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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第5章 Legend、開幕
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第20話 Revelcross ―神―

リベルクロス。それは具現の意思。

力と感情、思考の流れが、ゆっくりと見えてくる。

「私たちの出番…案外早く出てきたね」

「こんなのが早く出てくるなんてなー。すごいところだね、壊世大陸って」


 暢気な顔をして、フェイアンの言葉に反応した二人。片方は水のように大人しく、スラリとした水色の女の子。片方は炎のように子供らしく、僅かながらしっかりとした体をもつ紅色の男の子。この場にいる誰よりもこの場に適していない落ち着きを持つ二人は、6人を押し退けて前に出た。

 本来ならこの程度の動き、彼らを狙おうとしている巨大生物たちにとってはどうでもいいこと。むしろ先ほどまで仲間(?)たちを吹き飛ばしていた6人を脅威と思い、そちらを狙いにいくのが定石だ。


 しかし彼らは気づいた。その赤青二人から感じられる膨大なマナを、強者に違いなく存在する、圧倒的な風格を。前に出てきた二人こそ、対するには明らかに危険な存在だと。

 彼らは僅かながら怯えた。そのためか、彼らを襲う牙が、爪が。一瞬だけ止まった。


「ありゃ?殺気は隠したはずなんだけど」

「隠しても隠し切れないものってあるから」


 その一瞬を見た二人は驚く。今までなら隠しきれたその力に気づく存在だと、理解したからだ。

 仮にもSSSランク、モンスターとの対峙は案外多かったりする。しかしそのほとんどすべてが、彼らの隠した力に気付かぬまま命を落としているか、気絶している。



「はっはーん、そんなレベルなんだ」



 紅き者は、嗤う。



「ま。ここでも強者なのはありがたいこと」



 蒼き者は、嘲う。



「「動け、【世壊】のマナよ。オレ(ワタシ)達の意思に従って、世界の理を捻じ曲げろっ!!」」



 二人の声に反応し、砂嵐が晴れていく…いや、彼らのいる場を中心に、『離れていく』。砂嵐はこの砂の大陸の外側を、球で包むように流れていった。

 そして、僅かに暗くなったウィウィ達のいる場にも、別の事象が起きていた。


「いっけぇ!!」


 ウィウィの足元からはマグマが飛び出し、自在に動くチューブのようになって、モンスターたちの体を縫うように貫通し蛇行していく。ウィウィはその流れに乗り、腕にマナを宿してマグマが貫いた肉体を粉々に砕いていった。

 砕いた体から飛び散る血を浴びてなおニヤリと嗤い続けるその目は、片方が闇に染まっていた。暴走とも取れるその動き。しかし貫いた位置が体の中継点ともいえる大切な地点であることを見れば、その考えが間違いであることが分かるだろう。


「貫け…っ!」


 フィフィの周囲には無数の水槍が作られ、同じく無数に存在するモンスターの頭を、目を狙っている。目が退化して無くなっているモンスターにさえ、その退化したであろう地点を…すなわち急所を狙っていた。

 槍たちは彼女の号令で周りから消え去る。と同時に、一瞬にして噴き出る血と体液の雨。何も分からずに命を消し飛ばされた者達の中心に立ち、なお穢れ一つ持たぬままに佇む姿は、ある種の神々しささえ感じられた。



 先ほどまで6人で吹き飛ばすのが限度だった状況から、多対二で二側が命を刈る側へと移っているような状態へ。もともと味方が吹き飛ばされたのを見た時点でそこそこ戦意を喪失していたモンスターも居れば、それに怒り狂うモンスターも居た。しかし、ウィウィ達にとってはいずれも障害。分け隔てなく炎と水の嵐に食らわれていった。

 それでも残るような強情な者も…なんてことさえないほどに、ウィウィ達の目の前に居たモンスターたちは、全員が消し飛ばされたのだった。


 ―――――――――――――――


 少しして。あっという間に目の前から消え去った障害を見て、皆は絶句した。


『…えっと、ウィウィ?』

「ん?」

『やりすぎじゃない?』

「えー、それ言うならフィフィに言ってよ」

「なんで私…」

「ミー『フィフィ、やりすぎ』」

「言われた」

「言われたねー」


「…おかしいのう。吹き飛ばすことまでなら予想できたのじゃが」

「消えてるよね、これ」

『……なんですかこれ?』

「あなたたち、本気出すとここまでできるの?」

「そういうものなんじゃない?」

「いやいや、今回が特殊な事例だから」


 恐怖を感じた表情をしている四人に対し、なんとなくの返事をするウィウィと、訂正を要求するフィフィ。


『…特殊?』

「そ、特殊。最初しばらく黙ってたでしょ?」

「まあ、最初は出れないといっておったからのう」

「あれの間に、いろいろ調整とかをしてたから」


 フィフィは、世界と繋がるために一度計算をする必要がある。言うなれば、思考と世界を繋げることで、思ったことや計算した事象を直接結果として出力することができる、というものだ。


「あれが普通になるのは、どちらかというとウィウィの方だけで…」

「あれ、そうなの?」

「未計算で結果の出力ができるのは、直感上で正しいイメージができるときだけよ…」


 ウィウィはどちらかというと、その感情や精神を世界と繋げている。そのため計算の過程が必要ないが、代わりに考えたことが直接飛び出るため、余分な動きも追加される可能性があるのだ。


「…思ったんだけど」

「?」

「それ、ウィウィとフィフィが合わさったら世界全部と繋がれるわよね」

「「…あー」」


 思考と感情。対となるわけでもないが、その二つがなくては思いの力は成り立たない。足りないところを補うという点では正しいのだろう。ウィウィとフィフィが同時に世界と繋がることで、実質一人のヒトが世界と繋がっている時と同じことになる、といえるだろうか。


「…もしかしたら、それが鍵かもしれないよ」

「モノ…その、鍵って?」

「堕天使のリーダー?が探してるって話の中の、アレ。ウィウィがその一人だって言うなら、可能性はないわけじゃないと思うよ」


 モノは、感情の制御の元となる存在として、ウィウィを選んだのではないかという。


「世界そのものに自分が繋がれば、すべてを知りえる…不可能じゃないと思うよ」

「…それってつまり、あの人は…神様か何かにでもなろうとしてるってこと?」

「それはまた…狂った者の考えうる発想じゃのう」

「もちろん、これは考えの域を出ない。けどその可能性は考えておくべきね」

『実際それだったら、フィフィも呼ばれるはずだしね』

『…フィフィが太陽の地に来ていることが想定外なせいで、堕天使さんのお仲間が月陰の地に向かっていて、すれ違っただけということもありえますが』

「…そっか、普通だったら俺たち二人はそれぞれの山の近くに居るんだっけ」

「一日二日でこんなところ来ないわよ」

「そーだね」


 砂埃の晴れた、ちょっぴり薄暗い砂漠のような場所を一行は進んでいく。

ありがとうございました。

今気付いたけど100話超えてんのね。案外続いてるのも皆さんのおかげです。

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