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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第5章 Legend、開幕
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第19話 Power of Time ―流形―

力。それは時の流れと共に、増大していくもの。

その流れを見つけ、手にすることは何が為なのだろうか。

 辺りは一面、地の神が守るかの如き世界。地面から抉られ作られた黄土色の嵐は、風景という風景を完全に覆い隠している。

 砂に埋もれたかのような幾多もの文明の跡、それを蹂躙するかのように暴れまわる幾つもの影。

 とあるものは二つの頭を持つ、橙色の竜であり。とあるものはこの大地に相応しくないヒレやエラを持つ、巨大な緑の魚らしきものであり。とあるものは牙から濃い紫色の酸らしきものを垂れ流す、黒き大蛇であり…と、様々なものがいた。


 しかし、その彼らが狙うのは、その中心に立つ小さな小さな影。


「うわー」

『うわー、って!変なこと言ってる場合じゃないわ、すぐ逃げ…』

「無理そうじゃぞ?」

『…え、戦うんですかこれ』

「いいんじゃないかな?僕たちの力なら簡単だと思うよ?」

「計算途中だってのに…ティティ、とりあえずしばらくは隠れてて」

「ミュッ!『いいもん、私だってたたかえる!』」

「はいはい、行くわよ!この程度乗り越えられなかったら、中心なんていけないんだから!」


 すなわち、ウィウィ達であった。



『…よし。見た目に騙されちゃ行けないわね。最初っから飛ばすわよ、【第四形態(フォース)】…』


 皆の中でもひときわ小さいウィリー。しかしその真の力は、皆と同じ形になった時に始まる。


『・・・【魔装神形態(マナゴッド・フォルム)】ッ!!』


 魔装神形態(マナゴッド・フォルム)を起動し、幼き子供となったウィリーの周りに、マナによる天変地異が起き始める。火は水を食らい、水は地を呑み、地は風を覆い、風は火を纏っていく。すべては彼女の理解のなせる業だ。

 全てが相反する力でありながら、それが普通であるか(・・・・・・)のような感覚を持たせる形。それこそ彼女の得意とする魔術の最終形態なのだろう。



「やはり、その才能は中々じゃのう…どれ、妾も見せてやろう!【混合光明和黑暗(対なす光闇への調和を)】…」


 神龍と呼ばれる者の一人、フェイアン。闇の殻に閉じこもり続けた彼女もまた、変わる。


「【混亂(フー・ルァン)】…!」


 闇の神を模した体を持ちながら、その心に宿る光の魂を闇と共に操っていく。闇と光が対となるこの世界に向けた禁忌でありながら、彼女はそれを扱いきれると確信していた。何故なら、それが彼女にとっての現実だからだ。

 黒と白に包まれた彼女は、龍だった頃とは違う威圧感を…いや、龍ではないからこそ(・・・・・・・・・)扱える強大さを見せていた。



「ほんっと、凄いよね。みんなはさ。さて…【機関起動(スタート)】、【形態:波動常装(シュートフォーム)】…」


 二人のその変わり様に、ある種の感動と少しのあきれを含ませた言葉を贈るモノ。しかし、当の本人も気づいていた。


「"c;d@#3fd@/9Zt…{start}"」


 未知の言語ではない、彼女が導き出した最適解としての暗号。思考回路を言葉として表した「音」を発して、自分自身への流れとすること…それがモノにとって一番の力となり得ることを、知ったのだろう。自らもまた、超人である。生物学的にヒトであったとしても、今の自分を人ということはできないだろうが…。

 しかし、それを自覚する者(・・・・・)こそ、真に人を超えた力を手にできるということもまた、彼女は理解したのだ。



『…ふぅ。死んでなお、見て得るものがあるとは。それを知ることができて、幸福ですよ』


 対なる力を手にした龍の裏に、ふらりと現れる影。従者となったツェルは、自らを自覚する。


『壊れないよう、やらせてもらいますか。【偶像憑依(ケモノヤドシ)】…不肖ツェル、死人の身なれどなお侍!いざ参らん!』


 纏うのは過去の存在、嘗てのケモノ(オノレ)。力、いやその根源自体を自らの体に宿す、一つ間違えれば魂のすべてを闇に呑み込まれる技。それを容易く身に憑けることができるのは、彼が幾多もの輪廻転生をした自覚を持っているからだ。

 吠えていくのは、重ね(・・)積み上げた過去(・・・・・・・)の存在。幾多もの心が、魂が。彼をただ動かしていく。



「ミィ…!『フィフィにばっかり、手を使わせない!』」


 4人の足元にひょいとでた、一匹の黒猫。ティティと呼ばれた彼女も変化を理解していた。


「フゥゥゥ…『氷のチカラを・・・!!』」


 辺りの砂が、ゆっくりと氷へ変わっていく。フィフィの能力である直接干渉とは違い、氷を砂に纏わせるマナのチカラ。マナのチカラと自然の力、その双方には利点と欠点がある。見た目が同じでも、言葉で表すと違うその相違点を、ティティは言葉を知ることでより理解したのだ。

 他の皆にだってできることでも、その真意を、本当の形を知る(・・・・・・・)ことができれば皆にできないことに変わることもあるのだ。



 5つの力…魔術、闇術、秘術、霊術、氷術が混ざり、黄土色の霧のなかを暴れまわっていた魔獣の殆どを、文字通り吹き飛ばしていく。四属性が噛み合うマナの風が、光と闇の相反する矛盾の圧が。機械の如く繰り出される魔槍の嵐が、過去と未来を重ね得た波が。そして真の形を得た魔法の力が、自分たちの背丈と相手の目の大きさが同じであるほどの格差を、瞬く間に消していく。

 それは、この世界にとっての普通を見ていた堕天使にとっては、異様な光景だった。


「あなたたち全員規格外なのね!?」

「むしろこうでもしてないと、追いついていけないんだよねっ!」

「まあ抑えるのが役目じゃからな、この程度が限度であろう」

「あなたたちの言う『普通』がわからなくなってきたわ…」


 マナの刃を飛ばしながら話すモノ、僅かに満足そうなフェイアン、困惑する堕天使。それを傍から見るツェル、ウィリー、ティティ。和やかな風景のようだが、実際その外側で起きているのは天変地異もびっくりな攻撃の大嵐。なかなかな風景だった。

 しかし、そうして進めるのも僅かな間。中心に向かうにつれ数は増え、一体一体に保有されているマナの量が上がり…ついにはこの波状攻撃に運よく耐える者が現れはじめていた。


『っとぉ!ティティ、そっち行ったわ!』

「ニャ!『止まれっ!』」

『ふむ…なかなか強くなってきましたね?』

「まあ、一度に攻撃できる数はどうしても限られちゃうし、斬りきれないよねー…」


 いくら余裕を持っているとはいえど、それは一撃も貰っていないからこそ言えること。ウィリーやティティは魔獣であるが、強い魔獣特有のはずの筋肉や剛毛を持っていないため、潰されれば死ぬ。守るための力があるモノも、マナによる生命機関の加速があるとはいえ毒には弱い。フェイアンや堕天使は・・・まあこの地出身である以上逃げ道はあるだろうが、仲間を見捨てることはできないだろう。ツェルに至ってはフェイアンから逃げられなくなっているし。

 いうなれば、こちらは火力一筋でぶっ飛ばしているような状態。ダメージを気にしている今、これ以上捨て身の行動はできず…実質手詰まりとなっていた。




 しかし、この戦いの戦況をひっくり返せる存在が、ここにはいた。


 世界の力の具現、流れの具現。この世を司る、二つのある存在が。



「…そろそろじゃろう、炎の(・・)!そして水の(・・)!壊世とはいえ、ここもまたおぬし等のいる世界!

 宿してみせよ、世界の意思を!」

ありがとうございました。

5月病の季節?だけど案外小説は書けるもので。

普通の更新にも戻せそう。

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