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Cosmos Girl

作者: Pomme




遠く遠くの遥か昔、そこには真っ黒な闇が在りました。




音も、光も、ぬくもりも、そこには何も在りません。


ただ、闇が在るだけでした。





その闇に唯一人、少女が在りました。



少女もまた、ただそこに在るだけでした。




彼女は長い、長い時間を闇の中で過ごしました。




しかし彼女にとって、それは苦痛ではありません。




闇には、時間でさえも存在しないのですから。




長い長い闇の中で、彼女は考えました。





何故、此処には闇が在るのかを。




何故、自分は此処に在るのかを。




長い長い闇の中で、彼女は自分に唯一与えられた"存在"を考え続けました。




やがて、彼女は一つの答えに辿り着くのでした。







自分の(おわり)が、(すべ)ての始まりだということに。





それから彼女は、自分の(おわり)を恐れるようになりました。




自分が終わると、自分は何処へ行ってしまうのか。




自分は消えてしまうのか。





彼女に考えることは出来ませんでした。






そんな時、少女の前に一つの紅い実が存在しました。



突然に、しかし元から在ったかのように。




淡く光をたたえ、ただ、そこに存在しました。




初めて見る自分以外の存在であったのに、少女が怯えることはありませんでした。





彼女は吸い込まれるように、紅い実をひとくち、小さく噛みました。





途端、彼女の頭の中にあらゆる存在が飛び込んできました。




青い海、時間、太陽、音、愛、そよ風、輝く星空、温もり、青空、様々な命―――――――――――





彼女の目の前に、たくさんの美しい存在が鮮やかに映し出されました。




そして彼女は、頬をもう一つの新しい存在で濡らしました。




彼女は知りました。





自分の瞳から溢れ出している"涙"という存在を。




自分の心に溢れた"感情"という存在を。





少女の涙が紅い実に一滴、小さく滴りました。




刹那、紅い実は真っ白な光と共に弾け、少女を呑み込みました。





真っ白な、しかし温かな光の中で、少女は小さく微笑みました。




少女はもう怖くありませんでした。




静かに目を閉じた少女の心の中には、確かに新たな"存在"への希望が在ったのです。




少女は光に包まれました。






やがて光は小さくなり、(あた)りに闇が戻りました。




しかし、それはもうただの真っ黒な闇ではありません。






小さな、されど確かな光が散りばめられた、"宇宙"という存在でした――――――――――





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