赤い風船
Smile Japan.参加作品です。
雲の薄い青い空に、真っ赤な風船が1つ浮いていた。
誰かの手から逃れ出たのだろう。
下に垂れる紐をユラユラさせて風に遊ばれるそれを、私は無造作に捕まえた。
うわっ、風船なんて久しぶり。
・・・じゃなくて、この風船は何処から?
見下ろして目を凝らすと、すぐに持ち主を見つける事が出来た。
いたいた、たぶんあの子だ。
必死に泣くのを我慢して、じっと顔を空に向け、立ち尽くしている赤い服の女の子。
うん、この風船を見てるから、間違いない。
4、5歳といった所かな?
うんうん、強くて良い子だね。
そういう子はお姉さん大好きだよ。
だから・・・特別にご褒美をあげようね。
私は風船を手にしたままゆっくりと降下し、少女の前に降り立った。
あんまり早いと割れるかもしれないし、少女がビックリするもんね。
フワフワ揺れる風船が、空に上がって行ったよりも、もっともっと、ゆっくりと。
あ、結構高い所まで上がってたから、手前まではもう少し早く下りたんだけどね。
最初からゆっくりだと、着く前に女の子が諦めて、何処かに行ってしまうかもしれないからさ。
ね、ほら、時間の短縮。
目の前の少女は、まん丸に開いた目を真っ赤な風船に向けて、しばらく呆然としていたけれど、
じきに私の掴んでいる紐に、ゆっくりと手を伸ばした。
「はい、どうぞ。お嬢ちゃんは泣かなくて偉いね。」
少女が紐を掴んだのを確認し、私は紐から手を離して微笑むと、
少女は不思議そうにしながらも、ニコリと可愛らしく顔を綻ばせた。
・・・あぁ、可愛い。
「何してるの?早く帰らないと、おじいちゃんをお家の前で待たせる事になっちゃうわよ?」
「あっ、おかあさん、待ってー。風船がね、一人で帰って来たの!」
少し離れてしまった母親に向かって駆け出した少女の後ろ姿を、私は目で追ってガッツポーズをとった。
よっし、今日も一日一善完了!
・・・って、おっと、私はお使いの途中だったんだ。
「早くしないと、私も怒られちゃうな。」
そう一人呟いて羽衣を翻し、再び空に舞った。
長寿の秘薬の材料を譲り受けに、師匠の兄弟子の所までひとっ飛び・・・。
それが私の今日のお役目。
ひたすら長生きしてるじーさま達ばかりなのに、気は短いのばっかなんだから。
いつ終わるともつかないお小言を、くらうのは勘弁願いたい。
私の日課の『一日一善』も、実はいい顔をされていない。
力を持つ者はもう人ではない。だから、もう人の世界に干渉するな。
と、そう言われてる。
・・・だけど、こんな事くらいなら平気だもんね。
お師匠様達みたいに一日中、自分の為の薬作ってるより、
私はこういう事がしたくてこの道を志したんだもん。
今は、まだまだ半人前以下だけど、いつか立派な仙人になれたら・・・
そう、立派な仙人になれたら、もっと沢山の人を助けるんだから!
やっぱり私、絶対あの人達は時間の使い方を間違ってるって思う!!
読んでいただき、ありがとうございます。
携帯でポチポチ打ってたものです。
とりあえず、(登場人物が)ファンタジー。
力を持つという事は、果たしてどういう事なのか?
若いという事は、こういう事だ。
そんな事が書きたかったんじゃないかな(きっと(^^;)
こういう短編、たぶん時々やります。
PCに触れない時に、携帯のメモ帳に色々打ってますので・・・