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自称Cランク剣闘士は勇者に抜擢された  作者: 結城 からく


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2/2

後編

 剣と盾を持って闘技場の中心部へと赴く。

 周囲をぐるりと囲む観客席はほとんどが埋まっていた。

 普段と比べて明らかに人が多い。

 一体どうしたのだろうと思っていたが、正面に立つ対戦相手を見て納得する。


 銀色の鎧を着た剣士がそこにいた。

 魔力を迸らせた剣を構えるのは金髪の美男子だ。

 あの特徴的な装備は俺でも知っている。

 聖騎士アイル――国内最強と名高い剣士であった。


(レゴリックさんが心配してた原因はこれか。そりゃ気にするよなぁ)


 それにしても、なぜこんな場所に聖騎士がいるのか。

 俺が不思議がっていると、向こうから話しかけてきた。


「やあ、君がニコルだね」


「あー……そうだけど」


「君の評判を聞いてね。気になって出場を志願したんだ!」


「まあ、その、期待するほどじゃないですよ。聖騎士様がわざわざ戦うような人間じゃないです」


「その判断は戦いの中で決めさせてもらう」


 大地を蹴ったアイルがまっすぐ突進してくる。

 剣の振り下ろしに伴い、噴き出す魔力が斬撃となって飛んできた。


(あーあ、容赦ないなぁ)


 俺は後ずさりながら斬撃を躱す。

 そして距離を詰めてきたアイルの攻撃を受け流し、軽く脛を蹴った。

 驚いた様子のアイルが刺突を繰り出してきたので、ひょいと跳んで回避する。


 俺はなるべく苦戦しているように見せかけて戦う。

 実際はアイルを倒さないようにギリギリの手加減をしていた。

 なぜなら、この男の剣技を盗むためだった。


 俺には生まれつき祝福がある。

 五感で覚えた技を瞬時に習得できる【模倣】の祝福だ。

 成長性で言えば、歴史に名を残すほどの英雄になれる能力に違いない。


 だがしかし、それは面倒なので俺は実力を隠していた。

 剣闘士をダラダラと続けているのも、気楽に過ごせるからだ。

 華やかな冒険なんてものは、目立つのが好きな連中にやらせておけばいい。


 そんなことを考えながら聖騎士アイルの攻撃を捌くこと暫し。

 僅かに息切れするアイルの目に、苛立ちと困惑、そして焦りが浮かび始めていた。

 俺の実力に勘付き始めたのだろう。


(技はだいたい盗めたな)


 俺は「おっとっと」と言って躓いたフリをした。

 その勢いでアイルの懐に潜り込み、絶妙な角度から剣を突き出す。

 刃はアイルの喉を貫いていた。

 彼は驚愕した様子で崩れ落ちて息絶える。


 突然の決着に観客席は静まり返る。

 そして次の瞬間、爆発したような歓声で盛り上がった。

 俺は耳を塞いで苦笑する。


(多少は注目を浴びるけど、まあこんなもんでいいだろ)


 俺が控え室に戻ろうとしたその時、観客席から誰かが飛び降りてきた。

 そいつは全力疾走でこっちまでやってくる。

 よく観るとこの国の姫だった。

 姫は俺をビシッと指差して命じる。


「あなた、勇者になりなさい!」


「……は?」


 この日、俺の平穏な剣闘士生活が終了した。

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