悪役令嬢からの年賀状
はじめまして。よろしくお願いします。
「悪役令嬢に転生したとわかったものの、断罪まであと三ヶ月だなんて」
冬休み初日。ビオラは婚約者である第一王子のグリブへの年賀状を書こうとした瞬間、自分の前世を思い出した。
この世界でも年賀状は一年の誠意を示す重要な社交手段の一つ。貴族も平民も関係なく、皆が毎年趣向を凝らした年賀状を出し合う。
ビオラは毎年、グリブに関係を良きものにしたいという気持ちを年賀状に書いていたのだが、彼は大魔法使いの末裔なのに魔法で火も水も出せないビオラを疎み、魔法が得意な男爵令嬢のシャローと浮気していた。
「意地悪してないけど、どうせ魔法で罪を捏造されるだろうし」
きっと、これが最後の年賀状になる。ならばとビオラは今年は前世で書いていたような年賀状を出すことにした。
年末年始、シャローと別荘にいたグリブは冬休み最終日に城に戻り、届いていた年賀状を見ようとした。
「何で今年は二枚だけなんだ? シャローのと……年賀葉書? どうして平民が使う葉書なんかが……送り主はビオラか。フン、どうせ今年も本当に想い合える婚約者になりたいなどと書いているだろうに葉書だと配達員に丸見えっ⁉」
グリブはビオラを馬鹿にしながら葉書を裏返し、目を見張った。
「何だ、これっ!?」
葉書の裏の下半分にはビオラの流麗な文字で年賀の挨拶が書かれていたのだが、その上半分にはグリブとシャローの密会風景が絵だとは思えない緻密さで描かれていた。
『新年明けましておめでとうございます。旧年中はグリブ様には色々と学ばせていただきました。特に婚約中の身でありながら浮気する不誠実さは、私のような常識人には到底真似することは出来ないと度々感じ入ったものです』
『私の映像目視転写魔法を用いた年賀状はいかがですか? 国王陛下は世界で私だけが使える特殊魔法を手に入れたくて宰相である我が父にグリブ様との婚約を願ったそうなので、お礼にグリブ様の浮気の記録並びに、グリブ様が国庫から盗んだ金で買ったシャロー様への物品の領収書を父を通じて献上させていただきました』
『これほど分かりやすい婚約破棄の理由は他にないと陛下から深謝の言葉と慰謝料を頂戴した後、誠実と名高い第二王子のアラン様から実は慕っていたと求婚され私はとても幸せです。グリブ様も廃嫡されてシャロー様と共に平民になるそうですね。お二人もお幸せに』
「ビオラァァ!」
グリブの絶叫が城に響き渡るのを、ビオラはアランと微笑みあって聞いていた。
読んでくれてありがとうございました。※ビオラは多分、前世では写真プリント印刷の年賀状を好んでいたのだと思います。




