電子辞書
星新一大先生に(勝手に)敬意を表して、、、
「できたぞ!」
マンションの一室でT氏は声を上げた。何ができたのであろう。すばらしい薬か、それとも人間を助けてくれる機械か。
T氏はこう言った。
「これはAIをとうさいした辞書だ。どんな分からないことも質問すれば答えてくれるぞ。」
まだそのころはパソコンでも音声の登録ができなかったので、音を聞いただけで理解して検索してくれるのは便利だった。
「ただその機械はここでは作れないしな。工場にたのまなければいけない。」
そしてT氏はその工場に二千万円の資金を出し、辞書の完成を祈った。
しばらくして、完成した製品が送られてきた。
「予想よりも大きくなったな。まあいいか。さっそくためしてみるとしよう。」
T氏はためしに、「茨城」といってみたよ
するとどうなっただろう。不思議な機械音声で、「茨城のいばら、木が大きい。」とだじゃれをいった。
「なんだ、いきなり故障か。」
そう言って機械の角をたたいた。
「よし、もう一度だ。今度こそちゃんとなるかな。」
そう言って「ゴッホ」というと、またあの不思議な機械音声で、「ゴッホが咳をした、ゴッホゴッホ。」と言うではないか。
T氏は工場に文句を言った。ところが政策関係者はいった。
「あなたの設計図通りに作ったんですよ。あなたが間違っているんじゃないですか。」
その通りだった。T氏は資金を返してくれと言った。ところがもうないというのだ。無理もない。あれだけの機械なのだから。
それからT氏は何も作らなくなった。でもあの機械は気休めのために使っている。
龍蛇⋯超短編を得意(?)とする、新人(素人)小説家。




