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滅びかけの異世界で、万能クラフトと解析眼による再生スローライフ~古の魔法王朝をめぐる開拓譚~  作者: 夢・風魔


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9/10

9:ミッション・トレーナー→イド→出来る事。

「ミション・トレーナー? 神様ギフトってこれ――」


 輪廻転生課の天使が言ってた、神様から贈られたスキルってヤツ?

 発言させられるかどうかは俺次第って言ってたけど。


「いったいどんなスキルなんだ、これ」

「クゥー?」


 視界には今もメッセージが浮かんでいる。そこへ今度は、解析眼も加わった。


【ミッション・トレーナー:対象にミッションを与えることによって、クリア時に能力を底上げすることが出来る、指導系スキル】

【同種の効果を得られるミッションは、一日二一度しか行えない】

【スキル所持者には一切恩恵がない】


 ……え?


【スキル所持者には一切恩恵がない】


 ……え?

 ま? 俺自身には恩恵がないぃー!?

 な、なんで。え?

 他人の能力アップだけ? 俺には何もなし?


「う、嘘だろ」

「クアァー?」

「いやあの……あ、お前にミッションを与えているのか。えっと、シドーと発音させる……」

「ドーッ」


 なんだこの脱力感。スキルを手に入れたのに、俺は一切強化されないって。

 俺にとっていったい何の得がある?


「ドー。ドォ」

「あ、ごめんごめん。そうだよな。お前とコミュニケーション取れるようになるなら、それはいいことだよな。よし、言葉の練習だ。シ・ドー。シィ」

「イ……ギィ……ド」


 ギド。誰それ。


「シドーだ。シドー。シが難しいのかな」


 ユタも一生懸命、シと発音しようとはしているが……。意外と難しそうだな、このミッション。

 それにしても、マジかぁ。


「はぁ。そろそろ帰るか。レイアも戻って来てるかもしれないし。それに、獲物も手に入ったしな」

「クアァーッ。ド、イドー」

「イドじゃなくってシドー」

「イ……ィシ……シドーッ」


 お!

 ユタを見ると、本人も驚いたようにピョンと跳ねている。


「シドー! シドーシドーシドーシドシドシドドドド」

「待て待て待て。シドーだ。変な覚え方するんじゃないっ」

「シドー。チ、チ、ダメ」


 え? こいつ、たった今シドーって言えるようになったのに、もう言葉を!?


 ポォンと音がいて、またメッセージが浮かんだ。


【ミッションクリア。個体名『ユタ』の言語能力が向上した】


 向上って、たった二文字言えるようになっただけで!?

 何このゆるゆるミッション。

 しかし「ち、ち、だめ」か。……ち……乳、ダメ?

 え?

 ユタ?


「チーッ、カーチャ、カーチャ、イル」

「え? カーチャ――母ちゃん? あっ。チって、血だったのか。つまり、血抜きするなって言いたかったのか?」

「クアァーッ」

「うわっ。ごめん、ごめんって。血抜きしきった訳じゃないから大丈夫だってっ」


 そ、そうか。首を振っていたのはそういうことだったのか。

 あぁー、言葉がわかってよかった。じゃなきゃ血抜きする気満々だったし。


「はぁ、ま、戻るか」

「クゥーッ」


 教会の方へと歩き出すと、向こうから緑色の光球が飛んで来て、中からニーナが姿を現した。


『志導お兄ちゃん……ニーナ、大事なお話、あるですの』

「大事な話? どうしたんだい、ニーナ」


 ニーナは少し俯き、目をぎゅっと閉じた。


『全部の魔導装置を稼働させることは……たぶん無理、ですの』

「え……無理って、どうして?」

『都市の……都市の魔導装置、暴走してる、みたいです』

「暴走って、え、まだ装置が生きてるのか!?」






『レイアお姉ちゃん、言ってた。地下の迷宮で、勇者召喚の魔導書見つかったって』

「あぁ、そんなこと言ってたね」


 教会へと戻りながらニーナが話してくれた。

 昨夜、姿を消したのはこの話をするべきかどうか迷ったからだそうだ。

 そしてここにその話をするのは、何かを探すためにやって来たレイアを悲しませたくないからだと。


『その時……誰かが、変な風に、一部の装置を動かしたです、の』

「マジか。正しい扱い方も分からず、うっかり起動させたとかそういうのなのかな」

『ニーナも、よくはわからないです、の。ニーナはここから、動けないですから。でも、都市の魔導装置が暴走しているのは、わかったです。昨日、志導お兄ちゃんが起動してくれて、繋がったから』

「暴走って、どんな風に暴走しているかわかるかい?」


 コクンと頷いたニーナは『侵入者、全員排除』と、このタイミングでは一番聞きたくない内容だった。

 防衛システム的なものが暴走したのか。

 クソ。厄介だな。


「その暴走を止める方法ってないのかな?」

『……ごめんなさい、なの。ニーナ、この町を守るのが役目だから、他の事、あんまり知らないですの。ごめんなさい……ごめんなさい』


 ニーナはその場に蹲り、肩を震わせながら泣き始めた。


「ニーナは悪くない。悪いのはどさくさに紛れて、何かを盗んで行った連中だ」

『うっ。うっ。でも、レイアお姉ちゃんの探し物……』

「なんとかなるさ! な、俺には解析眼がある。解析して、暴走を止める方法を見つけよう。な?」

『志導、お兄ちゃん……』

「ニーナも手伝ってくれ。この町からだって、何か出来ることがあるはずだ」


 ニーナは繋がったと言っていた。都市の魔導装置とどこかで繋がっているんだろう。

 なら何かできるはずだ。


「さ、教会へ帰ろう。ユタが凄い獲物を捕まえたんだぞ」

『ユ、タ……ユタ、お手柄、なの?』

「クアァーッ」

「ユヤに栄養を取って貰わないと。そうだ、レイアは戻って来てるかな」

『レイア、お姉ちゃん……えっと……』


 ん? なんか歯切れが悪いな。どうしたんだろう。


 教会へと戻ってきた俺は、直ぐにレイアの名を呼んだ。


「レイア、戻って来たかい!?」


 けど、そこに彼女の姿はなかった。


「ユラ。彼女、戻ってこなかった?」


 そう尋ねたが、ユラは黙ったまま。

 伏せた姿勢のまま、ユラは腕に抱えた猫の頭に手を乗せポンと叩く。


「大丈夫、よ、シドー。彼女、あとでちゃんと戻って、くるから。ね」

「ふにゃっ」

「そう、だといいけど……大丈夫かな」

 

 ひとりで都市の方へ行ってなきゃいいけど。


ドラゴンが狩る獲物に乳はなく、男は逃がした魚を追い求める。

果たして男が求める乳は見つかるのか!?

ドラゴンの乳ではダメなのか!?


次回

【猫→レイア→解析。】は明日20:10更新!


絶対見てニャン♪

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