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転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔


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8/12

8:猫→兎→覚醒?

「ユタ。おいユタッ」

「ンア。クアアァァァァ」

「呑気に欠伸をしている場合じゃないんだってっ。な、昨日の女の子、見なかったか?」

「クゥ?」


 寝ぼけ眼のユタは、レイアが眠っていた場所――そこにいる猫を見つめた。


「違うって。猫じゃなくってレイアだ、レイア。まさかひとりで魔法都市を目指して出発したんじゃ」


 でも昨夜の話だと、数日はここで休むような感じだったし。

 何も言わず出ていくなんて、そんなことはないと思うけども。


「もしかして外かな?」

「シ、ドー。人間の、雌、ならここ「にゃぁーっ」ムグ」

「ユラ、なんだって? うわっ。おいおい猫、ユラの鼻先にぶら下がるんじゃないっ。うっかり牙が刺さったら大変だろうっ」


 ユラの鼻先にしがみついた猫を抱き上げ、そのまま床へと下ろす。

 こいつ、やっぱり昨日の猫だよな。

 この猫、どことなくレイアっぽいな。銀色の毛並みに青い瞳。

 うん。色だけはレイアそっくりだ。


「俺、ちょっとその辺を探してくるよ。ついでに――」


【対象・ユタドラゴン(成体雌)/  状態:重度の貧血。新鮮な血肉の摂取が好ましい】


 解析眼がそう表示する。

 

「出来るかどうかわからないけど、狩りをしてくるよ」

「クアッ。ンククククク」

「ん? お前も行くのか?」

「クアァーッ」


 任せろ――と言っているのか、ユタが胸を仰け反らせる。そして後ろ向き倒れて、足をバタつかせる。

 ここまでワンセットか。バカかわいいなぁ。


「連れて行って、あげて。きっと、役に立つ、わ」

「ユラ……まぁお前がそう言うなら」

「にゃーん」


 猫がこちらへとやってくる。


「お前はダメだ。ユラ、悪いけどこの猫のこと頼むよ」

「……わかった、わ」

「にゃっ。みにゃ~んっ」


 猫をユラに預けると、彼女はその手を猫に乗せてしっかりとホールドしてくれた。

 よし、これで安心して行ける。


「おっと、忘れろところだった。ニーナ、おはよう。ちょっと出かけてくるよ」


 石像――昨日見た時はなんとなく石像に見えるかもって形だったが、不思議と今は、ニーナとわかる形に変わっている。

 声をかけると、ニーナの像がほんのり光った。


「よし、行くぞユタ」

「クーッ」






「いないなぁ」

「クア?」


 教会の周りを探してみたけど、レイアの姿はどこにもない。

 もちろん、モンスターの姿もだ。


「魔導装置が起動しているし、町の中にモンスターはいないはず。狩るなら外に行かなきゃならないのかな?」

「クックック」


 もしかしてレイアは、狩りに行ったのかもしれない。食料は誰だって必要だもんな。


「よし。町の外れの方まで行ってみよう。レイアもいるかもしれないし」

「クアーッ」


 町の端までやって来ると、一部の地面が薄っすらと光っているのが見えた。その光はぐるーっと、この町を囲むように伸びている。よく見ると、なんか幾何学模様が描かれた光の帯のようだ。


「もしかしてこの光が、モンスターを寄せ付けない頭キーンの効果範囲なんだろうか? ユタ、お前は平気そうだよな?」

「ク。クアァー」


 人間を餌だと認識するモンスターにしか効果がないようだし、ユタやユラには無害なのか。


「クッ」

「どうした、ユ……兎!?」


 光の帯の向こうに、兎が立っていた。

 いや、あれ兎か? 後ろ足で立ってるし、俺の腰ぐらいの高さまである。

 あと……古びた鎌を構えてんだけど!?


 その兎が――跳ねた!

 だ、だだ、大丈夫。こっちには魔導装置の結界――じゃない、これシールド的なものじゃなくって、モンスターが嫌いな音を出しているだけの装置だった!?

 だから……だからっ。


「うわぁぁっ。入ってきた!?」

「ギュピッ」

「……って、倒れた? あ、そうか。音の範囲に入れば、頭がキーンってするんだよな。助かったぜ」


 とはいえ、死んだわけじゃない。

 今のうちに石を素材に槍でもクラフトするか。

 そう思って落ちている石を拾うよりも先に、ユタが――吠えた。


「クアックアァーッ」

「ユタ?」


 長い尻尾をピーンっと伸ばし、足の鋭い爪をカッカと鳴らすと、ユタが飛び出した。


「ちょ、ユタ!?」

「クシャアァァァーッ」


 は、速いっ。なんて速さだ。

 止めようとしたが、まったく手が届かない。

 飛び出して行ったユタ。そしてふら付きながらも起き上がる兎。

 その首に、ユタの鋭い爪が――食い込んだ。


「ギュッ」


 止める必要なんてなかった。

 ユタは、圧倒的に強い。

 短い断末魔だけを残し、兎は力なく項垂れ――そして。


「ククククククッ、クアァーッ」


 誇らしげに吠えるユタに覆いかぶさるようにして、絶命した兎が倒れた。


「クッ。クゥゥ、クウゥゥゥ」


 助けを求めるように、情けない声を上げて俺を見る。

 

「最後のオチまで完璧だな、ユタ」

「クウゥゥゥゥゥ」

「はいはい。今助けてやるよ。まったく」


 ほんt、バカかわいい奴。

 ユタに覆いかぶさった兎を持ち上げると、爪を指したままのユタも一緒に持ちあがる。

 その爪を抜いてやると、兎の首から血が噴き出した。


「うっ……ちょっとグロ……いや、これも生きていくためには慣れなきゃな。血抜きと思えばいいんだ」

「ククックククックク」


 ユタが俺の周りをぐるぐる回りだす。

 

「なんだ、仕留められて嬉しいのか?」

「クアァーッ」


 あれ? 違うのかな。首をぶんぶん振ってるな。

 うぅん。なんとなく伝わる時もあるんだけど、そうじゃない時もある。ユラみたいにこいつも言葉を話せればなぁ。


「ユタ。言葉の練習でもするか?」

「クッ。クアァー」

「とりあえずこいつを……そういえば、あの天使は万能クラフトで料理も出来るって言ってたよな。じゃあ……その素材になる肉も――」


 インベントリに入れられないかと思って、クラフト画面を開く。

 死体……い、いや、素材だ。うん、素材!

 ぐっと画面に押し当てると、しゅるんっと兎の死体が中に入った。


「おぉ、やった! これで持ち運ばなくて済む」

「クォォ」

「よし、その辺を歩き回りながら言葉の練習をするか。レイアのことも探さなきゃいけないし」


 もう教会に戻って来てるかもしれない。それでもこの辺りだけでも探してみよう。


「よーし。じゃあまずは……そうだ。志導。し・どー。俺の名前、シドー、だ」

「ク……クアァー」

「うぅん。やっぱり上手くいかないか。ユラはどうやって喋れるようになったのか」

「クゥ、ド……」

「おっ。ユタ、今『ド』って言えたのか!?」

「ドッ。ドドォーッ」


 おおぉぉ、お、おおおおおおおぉぉぉぉ!?


 ポォンっと音がして、突然目の前にメッセージが浮かんだ。


【神様ギフト、スキル『ミッション・トレーナー』が覚醒しました】


 ――と。

 

遂に男は覚醒した!

鞭をしならせ、猛獣を従える!

ドラゴンが火の輪を潜り、猫は玉乗り。空中ブランコは幼女神!!

これぞ異世界サーカス!!


次回

【ミッション・トレーナー→イド→出来る事。】は明日20:10更新!

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