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【書籍化決定!】転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

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58/68

58:鈴木と高崎。

 鈴木が案内されたのは、ゼザーレ聖国の首都。その中でも、王侯貴族や高位の司祭のみが住まうことを許された場所だ。

 ゼザーレは元々国ではなく、五大神のひとり、光の神フォーリスの大神殿があった町だった。

 光の神フォーリスが魔王に討たれた際、最後の力を使って自らの大神殿のあった町に浄化の加護を与えている。

 ゼザーレはそんな大神殿のあった町のひとつで、元々大きな町でもあったことから大勢の人間が避難し、国となった場所だ。


 大神殿がある都の中心部は、当然ながら最も浄化力の強い場所。

 首都はぐるりと囲む巨大な壁に覆われているが、その中心部にもう一枚、壁はある。

 その壁の内側に、ゼザーレの王侯貴族、高位の司祭らが暮らしていた。

 最も警備が厳しく、さすがの鈴木でもここへの侵入など考えたこともない。


「はっはっ。俺様が内壁の中を歩いているたぁな」

「お静かに。他の方々から怪しまれますぞ」

「ここで俺様が騒いだら困るのは、そっちじゃねえのか?」

「いいえ。困るのはあなたさまだけでございます。ここでの信用のあるわたくしや、わたくしの主の言葉と、何の信用もないあなたさまの言葉。どちらを信じると思われますか?」


 そう言われて、鈴木は冷めたように口を閉ざした。


(ハッ。さすが委員長の腰巾着だぜ)


 苛立ちもするが関心もする。そんな感情の中、大神殿の脇を過ぎ、その後ろに建ついくつかある屋敷の中のひとつへと入っていった。

 

「へぇ。神殿の後ろの物件ってことは、随分といいご身分みてぇだな」

「坊ちゃま、お連れいたしました」


 鈴木の言葉を無視し、初老の男が扉をノックした。


「入れ」


 すぐに若い男の声で返事があり、その声に鈴木は聞き覚えがあった。

 扉の向こうにいた若い男。その顔にも見覚えがある。


「なんだ。やっぱ俺ら全員、外見は前のまんまみたいだな」

「あぁ、そうだね。僕も君を見て確信したよ。もっとも、もうひとりの彼を見た問いにも思ったことだけどね」

「もうひとりってのは、どいつなんだ? 高崎」

「その名前は止めてくれよ、鈴木。僕の今の名前は、アディオン・タッカー。タッカー公爵家の嫡男さ。君は?」

「……デュークだ」


 特に握手を交わすわけでもなく、しかし委員長の高崎ことアディオンは、部屋の隅を指さした。

 その方角へ鈴木=デュークが視線を向ける。

 それまで太々しい表情だったデュークの顔に、歪んだ笑みが浮かんだ。


「おいおいおいおい。十夜(とおや)じゃねえか。若白髪か? 髪の色薄すぎねえか?」

「鈴木さん、止めてくださいよ。これ白髪じゃなくって、グレーっすから。あと『とおや』じゃなくって『トーリャ』っす」

「ぶはっ。あんまかわんねぇじゃねーか」

「鈴木さんは随分変わりましたね。デュークとか、なんか強そうっすよ」

「だろ?」


 大宮十夜。鈴木とつるんでいた不良グループのひとりで、同窓会の二次会へと向かう道中、彼とふざけて道路に飛び出したひとりでもある。

 

「お前、今まで何してたんだ?」

「あー、実はオレ、こっちじゃなくってシュットラン出身だったんすよ」

「なんだ、あっちの聖法国か」


 それからデュークとトーリャは、お互いの身の上話を続けた。アディオンは机に向かって書類の整理をしていたが、聞き耳はしっかり立てている。


「なんだよ。五歳で農奴として売り飛ばされたのか。俺なんざ三歳だぜ」

「えぇー。デュークさん、めちゃハードやん」

「ま、そこで例の贈り物っつぅスキルが覚醒してよ。他の農奴も監督官も、みんな俺様の下僕だったんだがよ」

「なんっすか、そのスキル。オレ、贈り物スキルはまだ覚醒してないんっすよ」

「へぇ。まだかよ。俺のスキルはボス属性だ。まぁカリスマ系スキルだな。従えるヤツの数が増えれば増えるほど、俺の能力もアップするのさ」


 その言葉に、アディオンの目が光る。


「鈴木、いやデューク。従えさせるののもスキル効果かい?」

「あ? まぁな。ただ抵抗もされるから、誰でもとはいかねぇ。俺みたいなワルなら簡単に従わせられるんだが、そうじゃねえ奴はほぼ確実に抵抗される。ただし、隷属契約を結んでると、抵抗力が失うみてぇでな」

「従えることができる、と?」


 デュークが頷く。


「なるほど……。じゃあ、君のように人の道を踏み外した外道でもく、隷属契約もしていない者が君を慕った場合はどうだろう?」

「は? 知るかボケ。さりげなく人をバカにすんな。てめぇは前世からそうだったよな」


 遠回しに人を見下す。委員長はそういう人物だった。

 裕福な家庭に生まれ、幼いころから自分は周りの子供たちとは違う。高みから見下ろすべき、選ばれた者だと彼は――高崎徹は自負していた。

 そして周りを見下ろすため、わざわと中程度の高校へ通い常に成績TOPを独占し続ける。そんな青年だった。

 常に笑顔を絶やさず、正義感の強さをアピールすることも多々あった。

 鈴木のような不良に大金を握らせ、演技をさせるのだ。

 自分を『痛くないように』殴れと指示し、何度もそれを繰り返させる。

 暴力に屈しない姿を周囲に見せ、ついには不良グループの方が退散するという演技だ。


 そうして教師や他生徒の信頼を勝ち取り、高校一年生にして生徒会長になるような男であった。


「わからないなら、やってみなくちゃね」

「ふん。まぁた何を企んでんだ、高崎」

「はは。だから今はアディオンだって」


 アディオンはそう言って笑う。その屈託のない笑顔とは裏腹に、彼の中には野望が渦巻いていた。

 より高い頂に登る。

 それが彼の、アディオン・タッカーの野望であった。


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