49:出発→錬金→出番!
「じゃ、行ってくるよ」
「あぁ。みんなのこと、頼むよ。アッパーおじさん」
「おぅ。任せとけや」
「いやいや、そこは俺に頼むんじゃないの? ね? ね?」
十日後、バサラと大人の獣人族十八人とアルト、それからユラユタ親子にアッパーおじさんと奥さん三人が出発した。
十日間で全員分のお守りをニーナが用意してくれたので、汚染された魔素対策は万全だ。
「でも驚いたわ。土地神様を移動させる方法があったなんて」
「あぁ。伊達に趣味で冒険者してたわけじゃないみたいだ」
「趣味って、渡錬くん……。うぅん、まぁたぶん趣味なんだろうけどぉ」
『ニーナも、知らなかったですの。土地神がお引越し、できるなんて』
そう。土地神様は引っ越しが可能だった。
ただ、引っ越しにはかなりの神力を必要とするようで、バサラたちの里を守る土地神様にその力がまだ残っているかどうかだ。
土地神様の像には、媒体となる大きな魔石が埋め込まれている。
ニーナが像から出てくるのは、その魔石の中に普段はいるからだ。そのことをニーナも知らなかったらしい。
ただ、そこにいると力の消費を抑えられるから、そこが心地いいから、戻るべき場所だと感じるから像の中へ入る。ニーナはそう話す。
きっと特別なものなんだろうな。
土地神様はその魔石の中へと入り、その土地との繋がりを断てば引っ越しが可能になる。
繋がりを断つのに、力を結構使う――というのを、アルトはどこぞの遺跡で見つかった石板で見たそうだ。
その石板はアルトが文字を読み終えると、刻まれた文字そのものが消えたらしい。
「そういうことって、あるのか?」
「えぇ。ほとんどの場合、古代魔法王朝の魔術師たちが残したものでね。隠匿性を強めるために、誰かが読んだら消える仕組みにしてるの」
「でもそれって、読んだ奴次第で悪用されるだけなんじゃ」
「まぁ、そうなんだけどね」
アルトでよかった。もし最初に石板を見つけたのが鈴木みたいな奴だったらと思うと、ぞっとする。
さて、居残り組もしっかり働かなきゃな。
「じゃあみんな。俺が一気に瓦礫を撤去するから、残った小さな石なんかをこの木箱に入れてくれるかい?」
「任せて志導! アタシ、志導のために頑張るから!」
「あ、うん……が、頑張って、パティ」
「うん!」
随分とパティに懐かれたなぁ。
バサラたちが出発してから特にだ。兄がいなくて不安なんだろう。
「ふぅーん。渡錬くんって、小さい女の子が好きなんだぁ?」
「え? 何言ってるんだエリサ。はいはい、ここで暮らすっていうなら、君もちゃんと手伝って」
「手伝うけどぉ。なんか子供たちと違ってぇ、扱い雑じゃない?」
「雑な扱いなんてしてないさ。でもほら、エリサとは初対面でもないし」
「こっちじゃ初対面だったしぃ~」
まぁそうなんだけどさ。
明るいオレンジ色の髪と緑の瞳は日本人離れしている。だけど不思議と髪型は俺の記憶にある日下部さんのままだし、容姿そのものもまったく同じだ。ただ色が違うだけ。
日下部さんとは仲が良かったわけじゃない。でも風見さんとよく一緒にいたし、彼女を通じて話をすることもよくあった。
だから、見知った顔、知ってる人って印象が強いんだよ。
「頑張って働いてくれたら、ご希望の家を建てるからさ」
「え、本当ぉ!?」
「あ、ただし建材はその辺で手に入るようなものじゃなきゃダメだけどね」
「うん、わかってるぅ~。でもさでもさ、渡錬くんとはスキルがちょーっとだけ被ってて、わりとショックぅ」
日下部=エリサは錬金術だっけ?
「錬金術って、具体的に何をするんだ?」
「んー、主に液体系のお薬作りかなぁ」
話をしながら、インベントリを開く。
山積みになっている瓦礫にインベントリを押し付ければ、いっき収納されていった。
ただ地面に接した面に落ちる石――といってもビー玉以上のサイズはある――はなかなか収納されない。
そこで子供たちに、小さな小石以外は拾い集めてくれと頼んである。
更地にして、次の家を建てるためだ。
最初にクラフトした家は、もう少し工夫を凝らすために再び瓦礫にしてインベントリに収納済み。
里へ向かうメンバーのために、この十日間は非常食作りを優先させた。そんなわけで、家はまだ一軒も建っていない。
「志導くん。結局どんな家にするの?」
「んー、何パターンか用意しようと思っているんだ」
家族と再会できる人は少ないと思う。だからって子供たちひとりひとりに家を建てたって寂しいだけだろうし、子供の一人暮らしなんてそもそも見たくない。
だから、家族との一軒家の他、学生寮みたいなものもクラフトしようかと。
「でもそうなるとさ、建物自体が大きくなるだろう?」
「そうね。魔力の方が心配になってくるかも」
「そこなんだよ。一度にクラフトできない予感がするんだ」
「じゃあぁ、部屋をひとつのブロックとして捉えたらぁ、どうかなぁ?」
ブロック?
エリサが地面に絵を描き始めた。左側に大きな四角形を描き、右側には上下に小さな四角形をずらりと並べていく。
なるほど。一度にクラフトするのは部屋一つのみ。後付け設置が可能なんだから、部屋や廊下と合体させていけばいいんだな。
「小さな子たちは、一人部屋より二人の方がいいと思うんだぁ。ね?」
エリサに問われ、子供たちは顔を見合わせ頷いた。
じゃ、ベッドは二段かな?
左側の大きな部屋がリビングダイニング。まぁ食堂だ。
「あ、ねぇねぇ渡錬くん。各部屋の寒さ対策、何か考えてるぅ?」
「寒さ対策か。全部の部屋に暖炉は無理だし、ストーブとか? 薪ストーブなら町にあるから、それを解析すれば同じものをクラフトできるし」
「ちっちっち。それだと小さな子たちに、火の扱いをやらせるのは危険でしょう?」
た、確かに。火傷をさせる可能性も大だな。
「そこで私、錬金術師エリサの出番なのですぅ~」
え、どういうこと?




