46:男→女→再会。
慌てて外に出ると、ユタが先に起きてて俺たちを待っていた。
「コッチ! ドッチ!」
「いや、どっちかなんてわからないって。ニーナ」
『南西の方角、なの。ユラ、もう向かってるの』
「いきなり殺したりしないだろうな。ユタ、お前先に行ってかーちゃんに捕まえるだけだと伝えてくれ」
ユタは一声上げると、一気に加速して南西の方へ走り出した。
あのスピードはどう鍛えたところで追いつけないだろうな。
「志導殿。俺たちも行こう」
「わしもいくぜ」
「獣人族の大人は三人だけ。残りは子供たちを。あと奥さんたちも残ってほしいんだけど」
「えぇ。子供たちのことは任せて」
「にゃ、志導くんっ」
レイアが俺の肩に飛び乗り、それからバサラたち三人とアッパーおじさんとで走り出す。
時折、光の玉が道を教えるように現れ、すぅーっと移動しては消える。
俺たちはその方角へと走り、やがて――。
「ま、ままま、ま、待ってくれ。ユタドラゴンなら言葉がわかるよな? な?」
瓦礫の向こうに男の姿が見えた。
若い。高校生ぐらいか?
けどこの声、どこかで聞いたことがあるような……。
男の後ろには女がいて、こちらも高校生ぐらいだ。
男の方は剣を腰にぶら下げ、軽装だが鎧も身に着けている。
鈴木の仲間なら、あの女の子は――まさか奴隷!?
「ユラ、女の子を助けるんだ!」
「わかったわ。じゃ、このオスは殺してもいいのね――」
それも止む無し、か……。
「ダ、ダメーッ! ユラ、殺しちゃダメっ」
そう叫んだのはレイアだった。しかも俺の耳元で。
「レ、レイア、どうしたんだ?」
「ダメよ志導くん。だって彼――」
彼? 彼……もしかして、レイアの恋人!?
どんな奴だ!?
「どうするの? 殺すの? 殺さないの?」
「殺しちゃダメなんだってばっ」
レイアの……風見さんの彼氏はどんな奴だ!?
ユラがいて顔がよく見えない。近づいて行って、男の正面に立って奴の顔をじっくり……ん?
派手な青い髪だけど、この顔は見覚えが……。
「えぇ? と、渡錬くん!? う、嘘ぉ。若返ってなぁい」
「渡錬? え、うっそだろマジか!? シドじゃん。お前……お前、転移したのか!?」
俺を、知っている……。
あ、あぁ……見覚え、あるはずだ。なんで俺、忘れていたんだ。
高校三年間。友達と呼べる奴はこいつともうひとりしかいなかったじゃないか。
「大沢……お前だったのか」
「やっぱシドじゃんか! うわぁ、十七年ぶり――あ、お前にとっては数日か数十日ぶりかも?」
「はは。そんなところだ。ってことは、後ろの子は日下部さん?」
「覚えててくれたんだぁ? うれしい~っ」
覚えてるよ。そのなんともゆる~いしゃべり方とかさ。
思わず駆け出し、大沢とお互い肩を叩きあった。
「ふにゃっ」
「あっ。ごめんレ……」
そ、そうだ。レイアと呼ぶわけにはいかないんだ。
「大丈夫よ、志導くん。エリちゃんには私のことを伝えてあるし、大沢くんにも話していいって言ってあるの。大沢くん、こっちの世界では初めましてだね」
「おぉ~。エリサから話は聞いてたけど、本当に猫だ。あ、初めましてだったな。こっちじゃアルトって名前なんだ。レイアだっけ?」
「えぇ。でもどうしたの、エリちゃん、アルトくん」
あ、俺も二人を呼ぶときは、こっちの世界の名前で呼ぶべきなのか。
日下部さんがエリサで、大沢はアルトか。
どっちも元の名前をもじった感じだな。日下部さんが恵理って名前だったし、大沢は彰人だ。「き」と「る」を入れ替えただけ。なんとも覚えやすい。
「いやさ、かざ――レイアが戻ってこないのが心配だってエリサがうるさくって」
「だって心配だもぉん。本当はアルトも一緒に行ってあげて欲しかったのにぃ、そんなときに限って聖都にいないんだからぁ」
「もっと前もってわかってたら一緒に行ってやってたさ。ったく。いくら英雄の孫だからって、ひとりで無茶し過ぎだぜレイア」
「で、でも、これは私の問題だから」
英雄の……孫?
「アッ」
「ん? どうした、ユタ」
「カッチャ、カタマッテル」
あ、しまった。
「ユタ、ごめん。この二人、俺の……俺の友人、なんだ」
「そ、う? そうね。悪いニオイではなかったもの。よかったわ、殺さなくて」
「ひぃっ。シ、シド。お前、テイマーのスキルを取ってたのか?」
「いや。なんか成り行きで名前を付けたら、契約しちゃっててさ。それより、懐かしいなぁ。な、水戸は?」
水戸圭太。大沢と一緒に、よく三人でゲームをした仲だ。俺が友人と呼べる、もうひとりのクラスメイト。
あの日、あの時、水戸もそこにいた。
「あぁ、水戸もこっちの世界に来てるよ。それがさぁ、ウケるんだけど。あいつ、貴族のぼんぼんなんだぜ」
「え!? マジかっ」
「まぁ男爵家の次男坊で、爵位継げないんだけどな」
はは。せっかく貴族転生したのに、次男坊とはな。かわいそうだけど、どこか運がないのは水戸らしい。
「なんでぇ。敵じゃねえのか」
「え、敵――うわぁっ。ア、アルパディカ!? シ、シド。まさかこのアルパディカも?」
「名前は付けたけど、どうなんだろう? 契約してるのか?」
「かーっかっかっか。してやってるぜ」
してるのか。ということは、奥さんたちともだろうな。
「し、志導殿の、ご友人?」
「あ、うん、そうなんだよ、バサラ。紹介するよ。俺の――古い友人でアルトっていうんだ。彼女はレイアの友人で」
「エリサって言いまぁす」
「よろしく! 俺は冒険者やってんだ」
「よ、よろしく、お願いします」
「えー、そんな敬語なんていらないって。俺の方が若いんだし。タメでいいって」
「た、ため?」
どうやらこの世界には、タメ口という言葉はないらしい。
ほんと、明るいやつだな大沢――おっと、アルトは。
ブクマ!!
★!!
お願いしまっす!!




