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【書籍化決定!】転移した転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~  作者: 夢・風魔
2章

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40/49

40:戦略的撤退→隷属→首輪。

「ぐああぁぁっ」


 登場するや否や、ユラは尻尾を使って鈴木を薙ぎ払う。

 ぶんっと振り回された尻尾をモロに喰らった鈴木が、数メートル飛ばされた。

 いつやって来たんだ?

 あ、もしかしてひとつだけ遠くにあった気配って、ユラだったのか!?


「ユタ……ユタドラゴン……成体……」

「マズいんじゃないのか」

「アルパディカも六頭……自由を手に入れる前に、これじゃあ死んでしまう……」


 ユラの登場は獣人族に効果的だったようだ。

 ユタのスピードにも劣らない獣人族も、成体のユタドラゴンには勝てないってことか。


「ひいぃぃっ」

「ぎゃああぁぁっ」


 あちこちで悲鳴が上がる。獣人、人間。どっちの悪党もアルパディカの奥様方やユタ、そしてレイアの攻撃に逃げ回っていた。


「クソッ。ドラゴンだと? こんなチビがか!?」

「あら。チビというけれど、私よりあなたの方、が、チビじゃないかしら?」

「ぅぐ……クソッ、クソがっ。てめぇら! 一旦出直しだっ。獣人ども、俺たちが前略的撤退を成功させるまで、こいつらを押さえとけよっ」


 す、鈴木……戦略的撤退って、お前。カッコよく言ってるけど、それただ逃げるだけだろ?

 

「あら、逃げるの?」

「獣人ども、命令だ! こいつらと戦えっ。バンッ、バンバンッ」

「ぅぐ、ぐぎぎぎぎぎぎっ」

「う、うぐああぁぁぁぁっ」


 命令に逆らえないんだ。「バン」がスイッチなのか。

 無理やり従わせて、自分だけ逃げようって。あいつらしいと言えばあいつらしいが、人の命までかかっているんだぞ!


 無我夢中で襲って来る獣人たち。殺意はなく、ただただ苦痛に顔を歪めて襲ってくる。


「ガキども! あのデカい方のトカゲにしがみつけっ。行け! バンッ」

「痛いっ」

「うわあぁぁぁん」


 なっ。子供まで連れて来ていたのか!?

 見た目はニーナぐらいだ。七、八歳ぐらいの子だろう。もう少し小さい子、大きい子もいる。

 十数人の子供たちが、泣き叫びながらユラへと群がった。


「ちょっと、止めなさい。子供は――」

「ユラッ。その子たちは鈴木に操られているんだっ。だから」

「わかってるわ。でもこれじゃっ、あ、危ないから離れなさい」


 自分にも子供がいる。だからだろう。ユラは獣人の子供に手を出せないでいた。


「ちっ。大人はともかくだ、ガキはさすがにやれねぇ」

「そうね。種族が違えど、子供は……」

「なんって卑怯な人間なのよ。あぁん、逃げ足だけは速いんだからっ」

「とりあえず、子供たちを捕まえるとしようではないか」


 氷が得意なアルパディカのディアがふぅっと息を吹くと、傍にいた子供たちの足に氷でできた枷がはめられた。


「うわぁぁん、取れない。取れないよぉ」

「助けて。殺さないで。食べないで」

「食べないから安心なさい。あなたたちよりニンジンの方が、よっぽど美味しいに決まっている」


 ニンジンと比べるのはどうかと思う。

 他の奥様方も次々と子供たちを捕まえ、気づけば大人の方は大部分が逃げていった。

 鈴木を追いかけたのだろうか?

 あいつの「バン」の効果はまだ持続中なようだ。さっきよりは少し痛みは引いたようで、呻くほどではない。でも、顔は時々、苦痛に歪むことがある。痛みの波でもあるかのように。


「くっ……お、お前を……お前を捕まえて、連れて行けば……」

「もうやめよう。鈴木は逃げたんだっ。あんたらを捨てて逃げたんだよ!」

「だと、しても……連れて行けば……」


 そうか。鈴木がどこに逃げたのか知っているんだ。そこに俺を連れて行けば、あの痛みから解放されて自由になれる――そう、信じているんだな。

 でもな、悪党が約束を守るなんて思ってはダメだ。そんなの、現実でも漫画でも必ず裏切るって決まっているんだ。


「鈴木を信用するなっ」

「信用など、して、いない。だが、こうするしか……お前に恨みはない。すまないっ」


 そんな……信用はしないのに、奴の言葉に従うのか?

 飛びかかてきた獣人族。ユラは子供の相手で手いっぱいだ。

 俺が自分で――その時、小さな影が躍り出た。


「クアッ!」

「ぐっ」


 赤い鮮血が飛び散る。その血は……獣人族の腕から流れたものだった。


「クククククッ。シドー、オイラ、マモル! オマエ、ワルイ!!」

「オレが悪い……あぁ、そうだな。悪党の言い成りになるオレは、悪い獣人だ。だがこうしなければ、守れないのだ! 悪く思うなよっ」


 守れない。彼は守れないと言った? それは自分のことではない、他の誰かの事だろう?

 その誰かというのが誰の事なのか、すぐにわかった。


 再び襲い掛かる獣人の男。だが彼は突然、ガクっと体勢を崩した。

 その足からわずかに血が流れている。もしかしてさっきユタが腕を攻撃した時に、足にも一撃加えていたのか!?


「クアアァーッ!」


 鋭い爪を振り上げるユタは、そのまま跳躍。

 男は諦めたのか、それとも腕を犠牲にしてでもと考えたのか、顔の前で両腕をクロスさせた。

 その時、瓦礫の向こうから飛び出してきた影がある。


「兄ちゃんを殺さないでっ」


 女の子だ。獣人の女の子が両手を広げて飛び出してきた。


「ユタ、待つんだ!!」

「ンアッ」


 ユタは振り上げた腕をすぐに引っ込め、更にアルマジロのように体を抱えて丸くなった――で、そのままの勢いで女の子へ衝突。


「きゃあぁっ」

「グエェ」


 二人がごろごろと転がった。そこへ男が飛び出して、転がる二人を受け止める。

 

「パティ!!」


 女の子が飛び出して来た時、「兄ちゃんを」って言った。

 この二人は、兄妹!?

 そして男が守る相手とは、この子なのか。


 その男の首筋には、白銀の刃が添えられている。

 レイアだ。

 

「大人しくして。殺したくはないの。でも……あなたが志導くんを傷つけるというなら、私は……やらなきゃいけない」

「レイア……君にそんなこと、させたくない。なぁ、頼むよ。もう止めよう。鈴木はここにはいないんだし、もう」

「無理だっ。この……この隷属の首輪がある限り、オレたちに自由はない!」

 

 隷属の……首輪?

 あ、あぁ。首輪をしているな。全員同じ首輪……。

 その首輪を意識して見たことで、解析眼が発動した。


「あー、その首輪。外せるけど?」

 

 俺がそう話すと、男は女の子を抱きかかえたままこちらをじっと見つめる。

 それから。


「はあぁぁぁぁぁ?」


 っと、間の抜けた声で叫んだ。

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