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04 / コミカライズ

「え、宝勘のコガネ生存ルート?」


 ページをスワイプする指を止め、疑問を口に出してみた。


 贅沢にも個室での入院などさせてもらった本日、落ち着かなさを何とかすべく、灰フロの公式サイトを覗いていたわけだが……新プロジェクトのWeb漫画、ストーリーが予想外すぎる。


 まず、なんで主人公がモブ兵士なんだよ。


 そりゃ確かに、モブにしてはデザインがいいよ? 治安維持軍の黒髪ぱっつんロングストレートの子。エイプリルフールにネタでメイン張ったこともあるよ。でもモブじゃん。


 しかも、第一話で<宝勘のコガネ>を救けるって何さ。


 まあ、いいキャラだよ? アホっぽくて可愛いというか、コンビニにいそうっていうか、鬱展開をものともしない感じがとっても素敵。ただゲームの雰囲気には合っていないから、それが未登場の理由なのかもしれない。案外シナリオライターのお気に入りだったりして。


 で、そのキャラ救命のためにって、まさかの新AP兵器登場ときた。


 あんなにファンから嘆願されても出し惜しみしていたくせに……せめて<破断のリョウ>にだけでもあてがってくれたなら、第四章の大惨事を回避できたかもしれないし、第三章だって流れが変わったのかも……あの死に様は名シーンとして名高いけれどもさあ! 俺も泣いたけれどさあ!


 ……アルファズル軍学校所蔵のFa型<グランヴォルド>か。いいね。


 重装甲で物理打撃ドローン装備とか、むさくるしいほどに男らしいじゃないか。

 

 戦い方も実に荒っぽい。捕食タイプ相手に正面からどつき合いとか作風からして違うレベル。週刊少年がジャンプする系というか、オラオラしたりドラドラしたりする系というかさ? 美少女たちが健気に頑張るも儚く散っていく……の結果が鬱展開なんだから、うん、大いにぶちかましてほしいな! 俺は支持するぜ!


「つまり、公式による原作改変……公式二次創作ってこと?」


 問うたところで誰に答えてもらえるわけでもない。いつものことさ。そういう時こそインターネットの出番である。


 コメント欄の反応はどんなものかなー?



>これパラレルワールドってこと? それともこれが正史になるわけ?

>ifストーリー大歓迎! モブキャラにももっとスポットライト当ててほしかったから嬉しい!

>ゲームでは詳細がわからなかった部分を補完してもらえるのいいね

>なんかゲームと世界観やトーンが乖離していて残念です

>チート兵器じゃん。死の重みを軽くするご都合展開。

>コミカライズ嬉しいけど絶望感がなくなったのはどうなんだろ

>これはこれとして面白かったけど、今後の展開しだいかなー

>シナリオライターの閃きで始まったプロジェクトなんでしょ? つまりは気分次第?

>美少女が一人でも救済されるなら純粋に嬉しいいいい!!



 うーん。肯定と否定が半々くらいか。そうなるのもわかる。


 っていうか、シナリオライターの閃きってなんだよ。人の心がないことに定評のあるアンニャロウめに、天罰でなく天啓が下ったとでも言うのかい。どっかに詳細は……ああ、これかな?



>「ピキーンとね、見えたんですよ。廃校の屋上で目を覚ました子が! イレギュラーが!」

>「時期的には第一章の終わりくらいですねぇ……前はひとりぼっちで衰弱死した子ですし」

>「でも、今回のビジョンでは違うんです! まるで鬼神が乗り移ったみたいに猛々しい!」

>「絶望しか見えなかった未来が変わる予感……これはもう発表するしかないですよね!」



 う、うーん……天才型の所業というか……ああほら叩かれているー。



>うわキモ

>灰フロの私物化やめてくだしあ

>派生してねえで第五章はよ出せ



 第五章についてはなあ……先の知りたさは同意できるけれど、バッドエンドになるくらいならここで止まっていた方がマシとも思うんだよね。


 どちらかというと、先に外伝の新章を公開してほしいな。本編主人公と外伝主人公の合流は熱いし。それバッドエンド回避の最善手ってめっちゃ言われているし。そのネタの二次創作にハズレなしだし。なにか不思議なことが起こったとかでもいいから、子どもには笑顔になってほしいよ。


 コガネの笑顔、良かったもんなあ……無邪気な綺麗さっていうかさ?


 声も良かったしね! 高すぎないハスキー系というか、抜け感のあるヒロインボイスというか……ナチュラルな…………ん? あれ?


 Web漫画なのに、なんで俺、声を……?


「をえっ」


 吐き気が。目眩もする。耳鳴りが、波みたいに、強くなったり弱くなったり……ダメだ、目を開けていられない。


 クラクラする暗さの中に、雪。音もなく降る。降りしきる。


 小さな手が額に触れてきた気がして……そのひんやりとした心地よさに、俺は眠りに落ちていった。

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