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「大変申し訳ございませんでした」


「うわ、いきなりなんだお前怖い、やめろ」

「ほんとうにした…五体投地……」


「桐間様がサロンに誘ってくださったにもかかわらず、腕を振り払い、挙句の果てには挨拶もせず逃げるようにその場を離れてしまったこと、頭の冷えた今では猛省しております」


「いやだからやめろよ土下座」

「土下座じゃありません、五体投地です」

「俺は高僧か」


なんだと?せっかく最上級の敬意と謝罪の意を表しているというのに。

あと小学生のくせに、こいつら精神年齢おばさんの私の発言についてきている。なんならツッコミも含めて。なんて可愛げがないんだ。


羽澄に頭を上げてとうるうるの瞳でお願いされたのでよっこらせと立ち上がった。

私が立ち上がった瞬間、羽澄の瞳のうるうるが元の状態に戻った。君もしかして子役かな?



私が今いるのは西棟の一階の空き教室だ。

ここは漫画の中でもかなりファンの中で印象深い場所である。そう言えばヒロインと桐間が最初に話したのはここだったな。


羽澄に「多分ここ」と言われ、なんで入学して二週間ちょいでこんな人気のない場所知ってるんだと喉から出そうになるのを抑えて扉を開けると、窓から入る春風に吹かれ、椅子に座って頬杖をつく、まるでそこだけ絵画のようなマジ美しすぎる桐間がいた。


あまりの美しさに、推しではないのに一瞬私でも見とれてしまった。


その後すぐにやるべきことを思い出し、スライディング五体投地をして今に至るが。



「――で、なんでお前たちがここに来た」

「諒太こそ、読書をやめてなんでこんなところに来たの?」

「質問を質問で返すな生馬」


うわーー、生「諒生」の会話だーー!!

………え?何言ってるんですか?カップリングじゃないですよコンビ名ですよ??


「はぁ、俺は…………なんとなくだよ、特に理由なんて」

「嘘つけ。僕が神子戸さんに話しかけたら出てったくせに。大方、神子戸さんに僕が話しかけて気まずくなったんでしょう?」

「は、そんなわけあるかよ、理由になってないぞ」

「なに言ってんのお前、この間から神子戸さんに―――」


小学生の会話かこれは。

え?違うよね?作中トップクラスの頭脳を誇っていた妹のつばきですらのほほんとした、ちょっと賢いよな?くらいの年相応の喋り方をするのに、なんてお前らは可愛げがないんだ。


そう言えばこいつら、海外の有名大学に合格するんだっけ。

最終話の小っちゃい一コマにさらっと書いてあったから忘れてたけど、そう考えるともしかしてこいつら天才か?


「―――というわけで、神子戸さんが言いたいことがあるらし………あれ、神子戸さん聞いてる?」

「え?あ、ハイ聞いてます」

「………なんだ、俺に言いたいことって。土下座せずに言え」


頬杖をしていたのを、顔を上げて神様が作り込んだような目で私を見る桐間。


なんだろう。コイツが座っているパイプ椅子が玉座に見えるぞ。後光が射してるぞ。

ちょっと幻覚が眩しいので、私はのそのそと後ろに下がった。


「桐間様、先日は驚いて逃げてしまい申し訳ありませんでした」

「……………驚いたのか」


深々とお辞儀し、簡潔に謝罪をすると頭上から美しい声が降ってきた。


「はい」

「…本当にそれだけか」

「はい、多分ですが」


「多分ってなんだよ」


ムスッとした表情になる桐間。

あっ、それ年相応っぽくって可愛い。思わずキュンときたんですけど。


コホン、違う違う。目の前にいるこの少年は桐間家の御曹司だ。

そして今私はこの人にしてしまった粗相を謝る為にここに居る。よしよし、アイムアンダスタンド。


「私、桐間様のような方に話しかけられて驚いてしまって///」

「「………………」」

「何ですかその顔は」


頬に手を当ててもじもじした私を誰か女優と褒めてほしい。決してこいつらのような冷めた目で見ないで欲しい。傷ついた。


「あーもうわかりましたよ、すみませんが桐間様、握手してください」

「え、は?………………ほら」


いきなりなんだという顔で、手を差し出してきた桐間。

そっとその手を握る。アッやわらけ。流石小学生。


「ほら、見てください桐間様。今は大丈夫ですので、本当にあの時は驚いただけなんです」

「……………そうか、ならいい」


手を放して、自分の両手をまじまじと見つめる。

自分でもびっくりしたが、大丈夫だったな。なんでだ。部位によって違うのか?


………………あ。


前世の最期の記憶。

そう言えば彼氏に刺された時、腕を掴まれたわ。


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