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「桐間様と一緒のクラスなんて嬉しいですわ!」

「………………」

「昔一度、桐間様のお母様のパーティーでお会いした時、桐間様とお話したのが私の思い出で、」

「………………」

「桐間様のお母様、私のこと覚えて下さっていたみたいで、入学式の時、」


「さっきからお前、何が言いたいんだよ」


不機嫌そうに彼が言うと、明らかにクラスの空気が変わった。

必死に彼に話しかけていた女の子はハッと顔を青くし、小さな声で謝って教室から逃げるように出てった。


おおぅ、キレッキレだな桐間諒太(きりまりょうた)。あの子多分トイレで泣くと思う。

桐間家にはあの程度の家の娘がいくら騒ごうと、どうということはないということか。


もうお気づきだと思うが、彼は「登場人物」である。


桐間諒太。


漫画の設定上では、超大きな財閥の御曹司……………とかなんとか、ちょっと記憶があやふやで覚えていないんだけど、実際にネットで調べてみたら喉から変な声が出た。

世界各地になんとなく聞いたことがあるような子会社を持つ、日本屈指の財閥系グループの御曹司。

桐間一族がもつ総資産はとんでもなく、間違いなく、この学園で最も敵に回してはいけない人間。

それが彼である。


ヒロインは最後、桐間と結ばれる。

と思いきや、主人公に「私、諒太先輩のこと、大好きです、けど。桐間家は流石に重いです」と言われて、桐間家の人間に認めてもらうために主人公は桐間諒太のオトモダチから再スタートするという、衝撃的な展開で物語が終わる。


そう、そこのめんどくさそうに頬杖ついてる超美形の小学生は、数年後好きな女の子にバッサリ振られるのだ。今みたいにずっと振る側の立場だと思うなよ桐間。ぐふふ。


あっ、目があった。ごめんなさい見てないです。


急いで顔を逸らした後、おそるおそる桐間の様子を見るとめちゃくちゃ機嫌悪そうだった。



わが校には「特別生徒」なんていう、特権階級が存在する。

いやぁ、名前からしてすごく選民意識の塊。


「特別生徒」これは名前の通り、「特別」な、生徒ってことだ。


初等科にいる生徒は、中学や高校から入ってくる生徒とは違って、生徒たちは大抵良家の子女たちだ。

要するにみんなお坊ちゃまお嬢さまなのだが、その中でも更に格が違う家の子たちが「特別生徒」として扱われる。


様々な場面で普通の生徒より優遇され、先生からも一目置かれ、なんなら校内に特別生徒専用のサロンだってある。ただでさえこの学校設備凄いのにサロンとかどんだけ金がかかってるんだろう。


登場人物だと、桐間諒太や神子戸つばきなどが特別生徒だ。




神子戸…………つばき。神子戸??

あっれー、おっかしいぞー?と、脳内で眼鏡の少年が言っている。



今気づいたが私の制服はなぜかネクタイがつやつやしたワインレッドだ。他の子皆紺色なのに。

なんで気づかなかったんだろう、つまり、つまりそういうことなのかもしれない。ああやだ。

あっ、桐間ぁ。お前もワインレッドだなぁ!おそろっちだ全然嬉しくねー!


「失礼。特別生徒の子はいらっしゃる?」


教室の前の扉を叩いて、堂々と六年生くらいの先輩が入ってきた。

今日はもう各自帰宅の時間とは言え、先生が教卓に立っているというのにつかつかと入ってくる。


やはり、その先輩のネクタイの色はワインレッド。

先輩は真っ先に桐間が目に入ったらしく、ニコニコしながら桐間に近づいた。


「貴方がそうね、お名前は?」

「……桐間」

「きり、ま。……………………もしかして、桐間諒太様ですの?」



「ふっ」


一瞬で先輩がお嬢様モードに切り替えた。

ですの?だって。ですの?だってよ!5歳年下の小学生に敬語とか初めて見たわ。

あ、やばい。面白すぎて笑いが漏れてしまった。後ろに座っていた子にはギョッとされたが、二人には聞こえておらず、先輩は桐間に優雅に自己紹介をしていた。


桐間、お前はさっきからめちゃくちゃ退屈そうだな。小学一年生とは思えない雰囲気漂ってるから忘れてたけど、お前と同い年は普通公園で遊んでるよ。


「あぁそうそうこのクラスはもう一人いたと思うのよ」


うわっ


「先生、どの子かわかりますか?」

「あ、あぁ、神子戸さんなら窓側の一番後ろの席に」


うわっ


「あら、………………………………貴女が神子戸さん?」


「…はい、神子戸梢です、先輩」


ちょっと腕で隠していたネクタイ。観念して腕を下ろすと、先輩はじろじろ私を見てにこりと微笑み「サロンで会長からお話があるの」とついてくるように言った。


…この人一瞬、「えっコイツが?」みたいな顔したな。わかるよ、ぼさっとした髪にパッとしない顔だもんね。桐間を見た後じゃあくすむに決まってんでしょ。

だからってクラス全員おんなじ顔しないで欲しい。


ちなみに桐間は私を一瞬見て、ため息を吐いた。

おいなんだよお前ムカつくなぁ!!


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