18
三年生になった。
一学年上がり、サロンにまた新入生が入ってきたらしい。
行ってないから知らないけれど。つばきが教えてくれました。
それより悲報だ、私の視力が悪くなった。
要するに、地味女が地味眼鏡女にレベルアップしたのである。
わーい、嬉しくねぇー!!
すっかりお友達になったと私は思っている津々楽朱莉ちゃんに教えてもらったヘアケアで、私の髪はみるみる見違え、艶のある黒髪ストレートに変貌した。
せっかくなので三つ編みからポニーテールに変更した。
下ろすのは嫌だ。妹と被る。
流石に私も妹と比べられるのは嫌だ。勝てると思ってないし、勝てるわけがないし、実は興味もそんなにないのだが、それはそうとてヤダ。
私はちやほやされている、お姫様のような可愛らしいつばきを見るのが幸せなのだ。
私と比べられて「姉より上」というレッテルを付けられてしまえば、つばきはどこか濁ってしまうような気がして少し嫌だ。
そんな事を考えていたら。
コンコンコンと、可愛らしいノック音の痕に扉から天使が現れた。
「お姉さまー!!見てくださいな、私、お友達にお茶会に誘われましたの。それで、このワンピースを着て行こうと思いますの。似合いますかぁ?」
うん、今日もつばきは可愛い。
ツインテールにサテン生地の小さいリボンをつけて、ふわふわとワンピースを手に持って揺らす妹。
よすよすと頭をなでると、嬉しそうに私にすり寄ってくる。あっ、駄目だ、昇天する。あばよ今世。
・
今年は実に平和である。
二年の時は教科書なくされたり、色々しましたが。あれは結局庵君が弁償してくれたというか、私が自費で買いなおした分のお金をくれた。
九重ちゃんは捨てたのではなく隠していたらしく、色々あった後に涙目で返されたが、もう新品を買ってしまったので特に使い道もなく、私の部屋のクローゼットの奥にしまってある。
メル●リで売ろうと思う。私立のうちの学校専用テキストなので高く売れる。
とにかくあまりに平和なので、ゆっくりと時が進んでいく。
最近は、桐間のことが好きなとある女子がじわじわとこの学年の女子を取り込んで、この学年の女子のカーストトップに立とうとしていることくらいしか話題がない。
………………ん?
「梢様、梢様!!先程!桐間様のクラスに柚木さんが!」
「まぁ!なんて図々しいの?!ここ最近ずっとじゃない?」
「桐間様も困ってらっしゃるはずよ!しかも柚木さんったら羽澄様にまで色目を使って!」
「えっ、そうなの?なんてふしだらなのかしら!」
「ここは桐間様と羽澄様と同じ、サロンメンバーである梢様が柚木さんに………!!」
「……えぇ」
えぇ??
きちんと?を語尾に着けたはずが、彼女たちには了承に聞こえてしまったらしい。
皆目の奥に燃える炎を宿し、いつ柚木を潰すか話し合っている。
ふしだらとか、色目を使うとか、そんな単語、小学三年生って知ってたんだぁ。
知っててもすぐ言葉に出てくることがないような、古臭い言葉なのかと思っていたんだが、その考えは間違っていたらしい。
小学三年になって、私の周りには津々良朱莉ちゃん、九重灯香ちゃんとほかに数人、女の子たちが集まってきた。
朱莉ちゃんと灯香ちゃん以外は柚木が気に入らない女の子が私を筆頭に柚木に対抗するための派閥を作ろうと集まってきた子なのだが。
柚木日葵。
原作ではつばきの一個上の先輩なのに、つばきの取り巻きをしていた。
サロンメンバーがどれほどの権力を持っているか、そして神子戸つばきの恐ろしさを読者に思い知らせた、割と重要なキャラである。
神子戸つばきの「柚木先輩?」にはゾクッとしたなぁ。
つばきのカリスマ性を感じるために必要なキャラだった。
で、そのキャラがなぜか私に敵意があるらしい。
………………今年も、波乱万丈な一年になりそうだ。