第85話 5月なのに怪談?正体は!
憲兵さんとの素敵なデートを乗り越え、日々の授業を一生懸命にこなしていく。自分に出来るのはそれだけだった。幸い、この件は無罪放免になったので、自分自身は問題無かった。クラスメイトも笑い話にしてくるだけで日々の生活には問題無い様に見えた。
しかし、佐々木さんはそうはいかなかった。入学初日に勘違いとはいえ、一人の先輩に対して大問題発言をしてしまった。自分自身も謝罪を受け入れこの件は終わった話になったはずだった。しかし、他の新入生とはそうは見なかった。面倒くさいタイプの人と思われ、クラスでも孤立し元々いた友達とも疎遠になってしまったようだった。そんな佐々木さんを見掛ける度に気にしていたが佐々木さん自身が
「私は大丈夫です、私のせいですので加治先輩は気にしないで下さい。」と言って、すぐに離れてしまうのでどうしようも無かった。そんな状況が一ヶ月近く過ぎた頃、いつも通り放課後の自主勉強も終わり寮に戻ろうとした時、教室に課題の資料を忘れたのを思い出した。司や陽斗は
「いいぜ、その位一緒にやろうぜ。」と言ってくれたが、何故かその時は無性に取りに戻りたくなり
「ありがとう、でも一回教室に戻るから先に戻っててくれ。」と言って資料を取りに戻った。教室の自分の机の中を見るとすぐに資料は見つかった。
(なんで、ここにあったのに忘れたんだろ?)と疑問に思いつつ、急いで寮に帰ろうとして廊下を歩いていると、普段は使っていない教室からすすり泣く声が聞こえた。
(え、・・今は5月だし怪談には少し早いけどな・・・)と教室を覗いてみると佐々木さんが泣きながら魔法のの詠唱を唱えながら泣いていた。
「・・なんで、・・・なんで、使えないの・・・なんで・・・」と悲痛な声を出しながら何回も詠唱をしていたが全く魔法は出なかった。
(・・・なるほど、ね、・・・あれでは出ないよ・・・どうしようかな・・・)
何故魔法が行使出来ないか、大体の見当はつく。それを俺が教えるのが、正解なのか?少し考えたが答えはすぐに出た。
「その精神状態では魔法は使えないよ。佐々木さん。」いきなり入って来た自分にビックリして
「・・・え・・・なんで・・・・いるんですか?・・」と聞いてきた。基本放課後は部活や自主勉強に充てている人が大半で寮には門限がある。基本は門限に余裕を持って帰れるようになっており、今から出ても門限ギリギリである校舎に残っているのは珍しい。
「ちょっと忘れ物をしてそれを取りに来たところで気づいたんだよ。」と偶然である事を強調した。
「・・・そうですか・・・もう、こんな時間ですか、・・・私も帰ります、失礼します。」と帰ろうとしたので
「今の精神状態では決して魔法は使えない。」と強く言った。
「・・・・なんでですか?・・・分かるんですか・・・あなたに、あなたなんかに!!!」と涙目になりながらも聞いてきた。
「・・・分かるよ、・・・俺もそうだった・・・皆が次々と魔法を行使出来る様になっていたのに自分だけ出来なくて、焦って、焦って、皆を先に帰してからコッソリ、今の佐々木さんみたいに空き教室でこんな風に特訓したから・・・分かるよ・・・だから言える、今のままでは決して使えない!」
「・・・・なら、・・どうしたら・・・いいんですか・・・・」と泣きながらも聞いてきたので
「・・・ちょっと付き合ってほしい場所がある。」と言って佐々木さんの手を握って歩き出した。




