第68話 梅酒
自分が部屋で恥ずかしさで悶え苦しんでいる時、リビングで母親は日課である晩酌を楽しんでいた。
「う~ん、いい出来ね、流石わたしが育てた梅酒は最高ね♪」とイキイキしながら飲みながら、先程から気になっている事があり
「ところでいつまでそこにいるんですか。雪代さん。」と声を掛けた。
そう、先程の音の主は雪代であった。
「・・いえ、喉が渇いたので水を一杯頂きに・・・」
「違うでしょ。さっきの会話、聞こえてましたよね?分かってますから・・晩酌付き合って下さいよ。」
と言って、グラスを差し出してきた。
「・・・・では、お言葉に甘えて、頂きましょうか。・・」
「また~、いつも晩酌用にお裾分けしているじゃないですか。」
「・・・そうですね・・・」と、大人二人、雇用主と雇われ人の奇妙な晩酌が始まった。
「・・相変わらずの味ですな・・私も何年も作っているが中々、ここまでの味が出ないのに。」と感心しながら楽しんでいた。
「・・・そうですか、ところで何か聞きたい事があるのではないですか?」と朱鷺子の問い掛けに
「・・・何故、そう思うのですか?」
「そりゃ、暗闇で息を潜めて、私達の会話に聞き耳立てていればね。」
「・・では、率直に聞きます。あなたは、葵様と総一郎殿の関係をどう思いますか?」
「・・・母親としてはあんなにいい子が総のお嫁さんになってくれればいいとは思います。でも、葵ちゃんは何故か踏み出そうとしない。何故か・・・私としてはその理由が聞きたいんです。」
「そうですか、葵様には・・・いえ、これ以上はお答えできません。」
「・・・やっぱり、貴族の娘、だからですか?でも今はそんなの関係なくなってきていますよね。」
「これ以上はお答えできません。」
「・・・そうですか、分かりました。取り合えず今日の所はここまでにして、軽くおつまみでも用意いたします。」
「・・・すいません、お願いします。」と雪代は答えた。
(・・・やはり、葵様は総一郎殿の事を・・・しかし・・・)雪代は心の中で考え事をまとめようとしたが、答えは出なかった。
一方、キッチンでは朱鷺子が
(・・・やっぱり、一筋縄ではいかないか。まぁ、後は若い二人に任せましょ。)とおつまみを用意して
リビングに戻り、楽しい晩酌が再開された。




