第43話 射撃の結果
いつからこの想いを自覚したのだろう。
高校入学時、同じクラスの女子達の会話で、陽斗の事が話題になっていた。
誰にでも分け隔てなく優しく接してくれ、困った人をほっとけない性格も非常にポイントが高い点であり、
付き合うなら陽斗みたいな人がいいよね。そんな会話が耳に入って来た時、自分の胸の中でモヤモヤとした気持ちが沸き上がってきた。
しばらくはその気持ちに気付かなかったが、彼のまっすぐな人柄や、普段の言動に少しづつ心が惹かれていった。そんな中、ナンパの絡みの時に総一郎と一緒に守ってくれたが、陽斗は自分の目の前に立ち塞がって守ってくれた。些細な事ではあった。しかし今までの気持ちの積み重ねでやっと自覚した。
(私は陽斗の事が好き。)
そう自覚したが、どうすればいいのかわからない。
葵には散々煽ったりしていたのに、いざ自分の事になると奥手になった。
今まで一緒に行動していた。同じクラスの女子達よりも長い時間を過ごしてきた。でも幼馴染と彼女とでは見える光景が全く違う。どうすれば彼と関係を進展できるかと考えたとき、昔からの花火大会を使って告白するとド定番な考えしか思いつかなかった。今までは皆で一緒に行動してきた、でも今の関係性を変えたい、そう思って二人に相談したら応援された。涙が出そうになったが泣くのは告白が成功したらと決めた。
そんな覚悟を持って陽斗と一緒にお祭りを楽しもうとしたが、緊張のあまり普段どうりの対応が出来なかった。二人とも意識しておりギクシャクしながら屋台を巡っていた。
「なぁ、紬・・その・・なにか食べるか?」
「・・うん、大丈夫・・」微妙な空気の中二人は屋台を見ながら散策をしていると、紬が射的屋の景品に目が留まった。
可愛らしいクマのぬいぐるみだった。密かにぬいぐるみ集めや自作が趣味を紬はそのぬいぐるみを見てボソッと
「かわいいな。」と呟いた。そのセリフを陽斗は聞き逃さず
「それ欲しいの?・・よし!大将一回チャレンジする。」
「え、でも、・・」
「いいの、いいの俺からの誕生時プレゼントだから。」
「じゃ、お願いしようかな。」との返事に気合十分の陽斗であったが、ぬいぐるみは幾らコルクを当てても落ちる気配すらなかった。追加で3回分コルクを追加した時に見かねた店の大将が
「兄ちゃん、諦めな、他の景品にしたほうがいいよ。それともなんだ、彼女のお願いに無理に付き合ってるのかい、それなら止めとくんだね。」との大将の発言に
「俺が取りたいから取るだけだよ。」との返事に
「なんだ、彼女のハートでも射止めたいのかね?」との茶化しに
「そうだね。」と一言真剣な返事をした。そうして最後の一発を込めて発射する
しかしながら無情にも景品は微動だにしなかった。
「・・・兄ちゃん、残念だったな、、まぁ、いいや。兄ちゃんの心意気に免じて景品はサービスしてやる。」と、ぬいぐるみを袋に入れてくれた。
その光景にビックリしていると
「ほれ、持ってきな、あと彼女さん顔真っ赤にしてるからどこかで休ましてやんな。」振り返ると紬がこれ以上無いほど顔を真っ赤にして俯いていた。陽斗と紬は視線を感じつつ少し離れたベンチに座った。
「・・・これ・・・・誕プレ・・・。」
「・・・ありがとう・・・・・・。」暫くの間沈黙が二人を包んだ。やがて陽斗が意を決して
「好きです。付き合て下さい。」との告白に紬は涙を流しながら
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」と眩しい笑顔で返した。
「大将、粋な事するじゃん!!!」
「いいんだよ、あのぬいぐるみ場所を取りすぎで邪魔だったし、中々あれ狙う人もいないからな。」
「そういう事にしておきますか。」と屋台の親父たちの会話を陽斗達が聞くことは無かった。




