第189話 移動初日の出来事・・・
属性別演習に向かうべく、学園を出発し、フェリーに乗り、更にそこから電車移動・・・・
(え、待って熊本まで電車なの・・・新幹線も無いのに・・・・)と内心思いつつ、
(まぁ、札幌の火属性の人も、長距離フェリーと電車の組み合わせで40~50時間位掛かるし・・・それに比べたらましかな・・・・)少しだけ安堵した・・・・
新潟駅に着きそれぞれの行先別に別れて移動になったが発車まではまだ少し時間があるので・・・約2週間程離ればなれになる・・・葵達と知り合ってから約12年、こんなに長い期間離ればなれになるのは初めてで、少し寂しくなっていると、紬と陽斗が
「陽斗、その・・・」
「紬・・・俺も・・・その・・・」
と甘酸っぱい空気を漂わしていたので、ここは空気を読んで二人っきりにしてあげる事にした・・・
(・・・うん、僕空気読める子・・・)と思いつつ、自分自身の想い人を探して見ると、
「ねぇねぇ、彼女?今暇?」と早速ナンパされている葵を見つけたので、助け舟を出そうかと思ったが
「いえ、今から東京まで行きますので、忙しいです。」と、バッサリ切り捨てた。その光景を眺めながら
(・・・昔なら、必ず俺が助けに行かないといけなかったのに・・・・葵も強くなったんだな・・・)
と思いつつ、葵との距離が何故か物凄く遠く感じた・・・・少しして葵がこっちの方に来たので
「・・・大丈夫だった・・・?)と聞くと
「うん、総ちゃんが近くにいる事は分かっていたから安心して対処できたよ。」と言った葵の笑顔に自分の心の中でなんともいえない感情が溢れてきた・・・
「・・・総ちゃん?」と葵が顔を覗き込んできたので
「・・・ゴメン、葵、ちょっとクラスの奴に呼ばれているから、ちょっと行ってくる・・・」とその場から逃げ出すように離れていった・・・
(・・・カッコ悪すぎんだろ・・・)と思いつつ、火の属性のクラスに向かっている途中に、澪姉に呼び止められた。
「・・・ちょっと総・・・あんた、本当にバカよね・・・」と言われ
「・・・そりゃ、学業じゃ澪姉達には叶わない・・・」
「違う、違う、そうじゃない。あんた、まだこのままの関係でいいの?いい加減見ているこっちがイライラしてくるわ!!」と語気を強く言われ、
「・・・・仕方ないじゃん。まだ自分は葵の横に立つ事も・・・」といつも通りの言い訳をしていると
「まぁ、いいか。そろそろいい機会だし。」と澪姉は笑顔で言った。
「え、、、」と自分がポカンとしていると
「葵には幸せになってほしいから、いつまでもはっきり言わない人より、しっかり愛情表現してくれる人を探しなさいよ。って・・・どうしたのその顔・・・」と澪姉に言われた。澪姉の手鏡で自分の顔を見せられると悲壮感漂う顔をしていた・・・でも今はそんな事どうでもいい、葵の反応を知りたかった・・・なので・・・
「・・・それで葵は・・・なんて言ったの・・・・?」と恐る恐る聞いた・・・・
「・・・・・ん・・・・」
「え、」
「・・・ごめん、なんにも言って無い。ちょっと煽れば言うかなと思ったお節介でした。ごめんなさい。」と澪姉は頭を下げてきたので、自分はその場にへたり込んだ・・・・
「・・・全く、そんなに想っているならすればいいのに・・・全く困った弟ね。」と澪姉が言うと
「・・・・かなり心臓に悪かったよ・・・でも・・・いつまでも先延ばしは出来ないのか・・・・」と言いつつ、その場から立とうとすると、そこに葵がやってきて
「総ちゃん。大丈夫?ケガしてない?」と物凄く聞いてきたので、自分は大丈夫と答えようとしたが澪姉が
「葵、総一郎少し疲れたみたいだから、そこの日陰のベンチで休ましてあげてね。総一郎と葵が少し遅れるのは、私から各教官達に伝えておくから。後よろしくね葵。」と足早に去っていった・・・自分と葵が少し呆然としていたが、
「総ちゃん。とりあえずベンチ行く?」
「ああ、そうしようか。」と体調が少し悪いのは事実なので少し休む事にした・・・・