第180話 お宿代は掛かりません。
新入生歓迎の日まで残り、三週間後となった。なのにいいアイデアは全く出なかった。アイデアは出ても予算等の問題で、実施するには困難が付きまとい、結局お蔵入りとなったりと、澪会長は追い詰められていた。
そして今開催されている役員会でも・・・・
「会長何かいいアイデアは思いつきましたか?」と反対派の役員が嫌味をたっぷり込めて言うと、澪は
「鋭意検討中ですので・・・・」と返すのが一杯だった。
「もう、時間も予算も難しいでしょう。やはり最初から無理だったのですよ。全く時間と手間だけかかさせて成果は無し。これは色々大問題になりそうですね。」と反対派の役員は語気を強くしていった。
そんな感じに何かと澪を攻撃しているこの反対派の役員、実は・・・・澪を会長から辞めされようとしていた。
教官の指名制である役員が止めた場合、後任は役員同士の合議で決める事になっている。そして役員の補充は会長にその権限が与えられており、反対派の役員は会長の座を狙っていた。
当事者である澪はそんな事には、全く気にしておらず何が出来るか、賛成してくれた役員達と協議を重ねながら、授業や課題等に忙しくしていた・・・・しかし・・・・
「・・・万策尽きた・・・」といつものメンバーの内、葵と司が所用で遅れていたが他のメンバーは喫茶店に集まりつつ、澪姉はテーブルに頭を付けながら、悩んでいた・・・・
「ほら、澪姉。これ食べて。」と紬が好物のショートケーキを食べさせていたが、やはり
「・・・もう無理・・・」と完全に諦めモードになっていた・・・・そこで自分が
「無理に何かしなくてもいいんじゃないの?」と言うと
「それはダメ。葵の代わりになったのに、ここで投げ出したら・・・・例え私に原因が有ったとしても葵はとても気に病んじゃう・・・そんなのあんたも嫌でしょ!」と言われたので
「・・・確かにそうだけど・・・」と葵の性格の事を考えると、今回の件を物凄く気に病みそうでと思っていると、ドアベルが鳴り、見るとそこには遅れていた司と、何故かそこには私服姿の内藤少尉が居た。
「内藤少尉、どうしてこちらに?」と聞くと
「いえ、有給休暇が溜まっていましてね・・・・ブラックな上司に平和的に相談したらまとめて消化していいよと、言われたので色々行きたかった場所巡りをしているんですよ。それで休憩がてらこちらの喫茶店の事を思い出して来たんですよ。」と言いながら、カウンターに座りながら店長さんに注文をしていた。・・・前世がブラック企業で有給という都市伝説かと思う程、存在を忘れていた自分としては
「そうなんですか。いいですね。溜まった有給休暇で色んな場所に旅行とは。羨ましいですね。」としみじみ思っていると、遅れていた葵が喫茶店に到着した。
「皆、ごめんさない。ちょっと・・・・教官・・・・と・・・・」と遅れた事を謝りながら、喫茶店に入ってくると、内藤少尉を見ながら
「・・・・お久しぶりです。内藤少尉・・・・・」と葵は内藤少尉に挨拶をしながら、店長さんに注文をしてから、いつものテーブル席に着いた・・・・その光景を見ながら内藤少尉は少し微笑んでいたが自分はあまり気にせず、目下の課題である新入生歓迎に何をするかを考える事にした。
しかし、皆で何度も案を出し合い、その度に色々な理由でできなかったのだ・・・・当然、新たに思いつく事など何もなかった・・・・そのうちに澪姉が
「・・・仕方ない。もう時間も無いし、次回の役員会でいつも通りの新人歓迎会でいく様に提案する、ありがとうね。皆色々アイデアを出してくれて・・・・」と澪姉はかなり悔しがっていたが最早、どうしようも無かった、その様な非常に重たい空気感の中で、事情を知らない内藤少尉が
「皆さん、何か空気感が重いですね。どうかしましたか?」と聞いてきたので、陽斗が要点をつまんで説明すると
「・・・確かに、面白い考えですね・・・しかし中々難しいですね・・・」と内藤少尉も一緒に悩みながら考えてくれたが、時間だけが静かに刻々と過ぎていった・・・やがて帰寮の時間になったので自分達は寮に戻る事になったが、何故か内藤少尉も一緒に付いてきた・・・・
「・・・あの~内藤少尉・・・お宿に行かないんですか?」と聞くと
「今日は、寮の空き部屋に泊まるんですよ。事前に申請は必要ですけど、魔法省所管の魔法学園は、職員は夕朝食お風呂付で無料で泊まれるんですよね。」と言いつつ、内藤少尉が寮に着くと、生徒の歓声が響いた。内藤少尉はその美貌から学生からの人気が高く、特に女生徒からの人気は絶大であった。
「人気者ですね。内藤少尉は。」と澪姉が言うと、
「ところで、学生会長さん。このような場合は会長が接待役をどなたかに、お願いして案内等をお願いしたいのですが。」と言うと
「私がやります。」と葵が立候補してきたので
「では、あ・・・いえ、川口さん。お願いします。」と言うと内藤少尉は
「・・・よろしくお願いいたします。川口さん。先ずは、学園長に挨拶に行きたいと思いますので。」と言って葵と内藤少尉の二人は学園長室に向かって行った。