第179話 味が違うには理由があります。
司のエスコートをやんわりと断って、いつもの喫茶店に向かっていたが、頭の中で考えが堂々巡りしていた。
(・・・・どうしようかな・・・・全く思いつかない・・・・無謀だったかな・・・)と自分自身が発案した事に悩んでいた・・・・
司も澪姉が何かで悩んでいるのは分かったが、今聞くべきタイミングでは無い、と思いそのまま黙って一緒に歩いていた。
そうこうしているうちに喫茶店に着いたので、司が
「では、こちらで少々お待ちください。」と言ったが澪姉は
(・・・何か用意でもしているのかな?全くカワイイ妹弟たちだ事。)と思いつつ敢えて司の静止を振り切る形で
「なんで?さっさと入るわよ。」と入ろうとした。司が
「ちょっと、澪姉。」と司は止めようとしたが、それにもかかわらず澪はドアを開けた・・・・そこにはいつも通りに過ごしている、いつもの面々がいつのも席に座っていた。
(・・・あれ?何も無い・・・の?)と思っていると
「全く、澪姉。ちょっと待ってて言ったのに・・・では、澪新会長も来られたので、早速始めて行きますか。」との合図で、マスターが少し・・・いや、かなり不格好なケーキを持ってきた。澪姉は率直に
「・・・なにこれ?」と聞くと紬が
「私達が作った澪姉好物のショートケーキ・・・なんだけど・・・デコレーションは私がやったんだけど・・・この様な姿に・・・・」と紬は恥ずかしそうにしていた。その様子を見ていた澪姉は、何も言わずに一口食べ、
「・・・味が違う・・・」と言うと陽斗が
「俺がマスターに手伝ってもらったんだけど、上手くいかなくて」と言いながら二人揃って
「「ごめんなさい。澪姉が大変なのに揶揄って。」」と言ってきたので、澪は先程の事を思い出しつつ
「ふ~~ん、だから好物のケーキでご機嫌取り。でもそれなら店長さんのケーキの方が良かったのに何で手作りしたの?」と澪が聞くと
「一応、謝罪なので誠意を見せようかと思いまして・・・」と陽斗が言うと、澪は笑いながら二人を見ながら
「・・・全く、カワイイ妹弟ね。いいわ許すわよ。」と言うと二人の顔に笑顔が戻った。その光景を見ていた店長さんがキッチンから出てきて
「仲直り出来たらよかったわ。はい、これは私からのサービスよ。」と言って店長さんお手製のショートケーキを持って来てくれた。澪が
「すいません、キッチンまでお借りして。ご迷惑ではなかったですか?」と聞くと店長さんは
「なに、二人が澪ちゃんの為に一生懸命に取り組む姿を見れたのでいいわよ。」と言われ澪もまんざらでもない気がした。
「・・・そうですか。本当にありがとうございました。」と澪は店長さんに再度お礼を言うと、店長さんは照れながらキッチンに入って行った。
そうして陽斗と紬、澪の件は一件落着したので自分達は再び、お茶会をする事にした。しかし澪姉の表情は少し暗かった。それに気づいた葵が
「・・・・澪姉・・・・やっぱり嫌だったの?」と聞くと
「違う、違う。実はね新入生歓迎の時に何か新しい事をしようとしたんだけど、一部の役員から反対意見を貰っちゃって・・・まぁ、彼らの言い分も分かるんだけど・・・・でも、・・・・」と澪姉が言うと
「それじゃあ、皆で考えようか。」と司が言ったので、自分が
「・・・そうだな・・・皆で考えれば何かいいアイデアが出るかも。」と言うと
「うん、そうだね。」と葵もその気になり、自分達はアイデアを出し合いながら時間だけが刻々と過ぎていった・・・・・そして気付くと・・・・店長さんが・・・・
「・・・・あんた達、そうゆう事は寮で集まってやりなさい・・・・もう店閉めるわよ。」と語尾強く言ってきたので、自分達は再度お礼を言い、寮への道をダッシュする羽目になった・・・・・