第170話 世界には二人だけ・・・・
只今、大晦日の午後11時30分過ぎ、部屋には自分の葵の二人っきり・・・・
(え、なになに、なんかした俺?でも、葵もさっきからなんか無言だし・・・・)と色々な妄想をしていると
「あの、総ちゃん・・・その・・・オデコ大丈夫?」と相変わらず顔を近づけて確認してくる
(近い、近い、葵さん・・・ここには雪代さんも母上殿もいないから・・・頼むよ、自分の自制心・・・・・)と思いつつ
「・・・・葵、大丈夫だから・・・その、ちょっと近い・・・かな・・・」と言うと葵はハッとして静かに離れていった・・・・
再び部屋を静寂が包み込んでいった・・・・
「・・・あの、葵・・・こんなに夜遅くにどうかしたの?あんまり褒められた事じゃないのは、葵なら分かると思うんだけど・・・・」と聞くと
「・・・あの、謝ろうと思って・・・」と小さく呟いたので
「え、何を謝るの?」
「その、ちょっと・・・嫌な態度取っちゃって・・・・ごめんなさい。」と葵は謝ってきたが自分はポカーンみたいな顔になっていた。
「・・・え?なんか有ったっけ?葵に嫌な態度なんて取られていたっけ?」と本気で考えていると
「・・・夕食前にちょっとあったでしょ。」と葵が言うとやっと思い出したが
「ええ、全く気にしていなかったのに。・・・でもなんで葵が少し機嫌が悪くなったかは分からなかったな。」と余計な一言を言ってしまった。 恐る恐る葵の方を見ると
(あ、これ怒ってる・・・)と少し頬を膨らましながら、プンプン顔な葵がそこに居た・・・・
「ごめん、ゴメン葵。」と謝るが
「総ちゃん、私がなんで怒っているか分かるの?」と聞かれ
「・・・・・・・・」と沈黙で答えると
「・・・もう知らない!!」と完全にご機嫌斜めになってしまった。
(・・・どうしたらいいんだろう・・・全く葵が怒っている原因が分からない・・・でも、ただ単に謝るだけでも許されない・・・・)と、どうしたものかと困っていると葵が
「・・・総ちゃんて、本当に鈍感だよね。それでいてデリカシーも無い。」
「・・・はい、おっしゃる通りです。」
「でも、いい所はいっぱい知っているから。・・・・うん、今回だけ特別に許してあげます。」と葵に言われたので、取り敢えず一安心したので
「そしたら、葵・・・そろそろ、自室に戻った方がいいと思うんだよね。」と時計を指さして言うと
「・・・・一緒に年明けを祝いたいだけど・・・ダメ・・・?」と聞いてきた・・・・
(・・・・ダメと言いたい、でも言えない・・・・)と心の中で葛藤しつつ、最終的には
「・・・まぁもうすぐ年明けだし・・・年明けたらすぐに自室に戻る事。」と、言うと
「うん、ありがとう。総ちゃん。」と、とびっきりの笑顔で言われると、自制心の限界チャレンジかと思うぐらいに心がうごめいた。
携帯の時計を見ながら、二人で小声でカウントダウンをしていった・・・
「あと、1分だね・・・・」と葵が言って
「あ、どうしよう。葵大変だ!!」と自分がわざとらしく言うと
「・・・なに?思うに物凄くくだらない事だと思うんだけど・・・・」と自分が今からするくだらない事を既に的確に捉えられていた・・・
「年明けのタイミングでジャンプしない?」と言うと
「・・・いいね!やろうか!!」まさかのノリ気に自分も驚いていると、
「ほら、総ちゃん、こっちこっち。」と葵に呼ばれて部屋の真ん中辺りに呼ばれたので行くと、いきなり葵に手を掴まれた。しかも、俗に言う恋人繋ぎで・・・・
(・・・え、なにナニ何・・・・葵さん、ちょ・・・っと・・・)と頭の中は混乱状態だった・・・
「ほら、総ちゃん、もうすぐだよ、10,9,8,7,6,5,4,3,2,えーいー。」と自分が混乱している中、葵と同時にジャンプをした・・・・その瞬間、世界は自分と葵だけは皆とは別世界に居た・・・・
なんて事を考えていると
「・・・・本当に、総ちゃん、くだらないね・・・」と葵は笑いながら言うと、自分もつられて笑ってしまった。でも、大きな声で笑う訳にもいかずにクスクス笑いながら、しばらく二人だけの世界に入り込んでいたが、時間が時間である
「じゃ、そろそろ部屋に戻るね。」
「ああ、そうだね。」
「あ、忘れてた総ちゃん。」
「ん、なに、葵?」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。」と新年最初の挨拶をして葵は部屋に戻って行った。葵が部屋に戻った後、ベットに横になると、葵と繋いだ手を見ながら
(・・・葵は、きっと、無意識になっただけだよな。うん、そうだ、そうだ・・・寝よ・・・・)と言って眠りに就く事にした・・・・
葵は部屋に戻ると、すぐにベットにダイブし、総一郎と繋いだ手を見ながら
(・・・・いいよね、この位・・・・)と思いつつ、葵も眠りに落ちていった・・・・・