第167話 将来の事・・・・
とても有意義な夕食の時間を過ごした自分は雪代さんの執務室にご招待された。基本的にこの雪代さんの執務室には、何人も入る事は許されていない。葵もここで働く自分の母親でさえも・・・・全く素晴らしく名誉な事だ・・・・・目の前に怒りで震えている雪代さんが居なければ・・・・・何故か自分は土下座をしながら・・・・
「・・・・総一郎君・・・・私は、全く怒ってはいないよ・・・・」と言われたが
(嘘だ!!そういう人はもの凄く怒っている。 前世での経験上間違いない。)と内心思いつつ
「・・・私はね総一郎君、色々経験をしてきたよ、色々ね・・・・」と全く目は笑っていなかった・・・
「・・・あの、雪白さん・・・別に自分は葵と・・・」と事実を述べようとしたが、雪代さんは机を叩くと
「君に発言を認めていない。黙りたまえ。」と雪代さんの雰囲気に飲み込まれてしまった・・・・
(なんでなんで、俺ナニもしてないに・・・・ナニも・・・・)と思っていると扉がノックされ
「雪代さん、葵です。今よろしいですか?」とまさに、救いの天使かと思ったが
「葵様、後でお願いします。今は総一郎君との語らいの時間ですので・・・・」と一蹴された。
その後しばらく沈黙が部屋全体を包んだ・・・・壁に掛けて有る時計が刻む音のみが音を発していたが
その沈黙を破る者が現れた。
「雪代さん、朱鷺子です。失礼します。」と許可も得ずに執務室に入ってくる。
「朱鷺子さん、今は・・・」と雪代が止める間もなく、雪代さんに詰め寄って行く・・・・
「・・・・雪代さん、葵ちゃんの事が大切なのは分かります。私だって葵ちゃんが可愛くて可愛くて仕方ないですし、娘にしたい位素直でいい子ですし・・・・」と言いながら土下座している自分を見ながら
「でも、総一郎の事も大切な息子です。そんな息子が意味も無く、土下座させられ、怒られている。そんな状況を見過ごせるほど、私はいい人ではありません。息子が何も言うならそれを信じるのが親の役目だとおもっていますので。」と雇い主の雪代さんに言い放った・・・・
(・・・お袋・・・・ありがとう。)と涙が出そうになったが
「ほら、葵ちゃん。雪代さんに言いたい事があるんじゃないの?」と部屋の外に居た葵に呼びかけると
葵が部屋に入って来て
「・・・・雪代さん・・・・総ちゃんとは一緒に課題をしていただけです。なのにこんなに総ちゃんだけ責めて、・・・本当に・・・・酷いです。」と言いながら、目には涙を溜めていた・・・・・
二人から言われたのがよっぽど堪えたのか、雪代は少し考えながら立ち上がり
「総一郎君、すまなかった。私の早とちりのせいでご迷惑を掛けたね。」と深々と頭を下げた。
「・・・いえ、誤解が解けたなら大丈夫です。」と言って立ち上がろうとしたが、足が痺れて中々立ち上がれなかった。見かねた葵が
「ほら、総ちゃん掴まって。」と手を差し出してくれたので無意識にその手を握りながら、立ち上がると雪代さんの顔が鬼の形相になっていたが、自分と葵はそれには気付かなかった。
自分と葵はそのまま、雪代さんの執務室を後にし、後は大人の話し合いになっていた。
「先程は失礼しました。」と朱鷺子が謝罪をすると
「いえ、こちらもご子息に大変無礼な対応でした。申し訳ありませんでした」と双方に謝罪をして一応この件は決着した形になった。
「しかし、雪代さん。あまり過保護なのもどうかと思いますよ。」と苦言を言うと
「・・・・申し訳ないですね。・・・・」と苦々しい顔つきで答えていた。その後雪代は朱鷺子に聞いた
「・・・・もし、もしですが、葵様と総一郎君が、その、・・・・」と何かを言うとしていたが
「葵ちゃんと総が結婚するかですか?」と朱鷺子がはっきり言うと
「・・・・朱鷺子さん、はっきり言われると・・・・私にも心構えと言うものがありまして・・・・」と雪代が呆れながら答えると
「二人の関係が今後どうなるかは分かりませんし、それに対しては私は何も言いません。あの子達の決断を見守るだけですから。」と朱鷺子が答えると
「・・・・・そうですか・・・・・分かりました・・・・・少し考え事をしたいので、お風呂の順番が来るまで一人にして下さい。」と雪代が言うと
「畏まりました。失礼します。」と言って朱鷺子も執務室から出て行った。その後雪代は考え事をしていた。
(・・・・・葵様と総一郎君が結婚か・・・・・)と考えながら悩める夜は更けっていった・・・・