第164話 お風呂に入ると幼馴染が入っていた・・・みたいなラブコメは起きません。
帰省から二日目。
今日は12月28日 新年の準備をあわただしく行っていた。
母親と葵はおせち料理を、自分と雪代さんが大掃除をしてからの正月飾りをするなど朝から慌ただしく新年の準備に余念が無かった。朝から初めて、お昼ごろに一段落したので一旦昼食にする事にした。
「はい、ご苦労様でした。」と目の前のおにぎりとおかずをつまみながら、母親と雪代さんとの間で午後の予定が決まっていく。
「雪代さん、後はどこが残っています?」と母親の問いに
「そうですね。主だった所は終わりましたので、後は物置小屋ぐらいですかね。」
「そうですか。じゃ総、分かったわね。」と言われ、もちろん拒絶は許されなかった・・・
「畏まりました。」とただ一言しか言えなかった。
「そういえば、おせち料理の方はどうでしょうか?」
「ええ、もうほぼ終わりました。葵ちゃんの手際がいいので本当に助かりました。」
「いえ、そんな私なんて。」て葵は照れながらも喜んでいたのが分かった。
「まったく、葵ちゃんはいい子ね。後はおばさんに任せて、ゆっくりしてていいわよ。」
「大丈夫です。もう少しだけ朱鷺子さんのお手伝いをしたいんですけど・・・」と葵は言ったが
「大丈夫、大丈夫。おばさんの仕事をあんまり取らないで。後は任せておいていいから。」と固辞されたので
「そうですか、分かりました。」と葵は残念そうに返事を返していた。
(・・・本当に葵と母は仲がいいな・・・これなら嫁姑問題も・・・・て・・・何を考えているんだ俺は・・・・)と頭の中で妄想に耽っていると、それを察知したのか雪代さんが
「どうかしましたか?総一郎君?」と、物凄い言葉に出来ないほどの圧を感じつつ
「・・・いえ、なにも・・・」と答える事しか出来ない自分が居た・・・・
昼食も終わり、葵は自室に、母親はキッチンに、雪代さんが正月飾りをつけ始め、自分が物置小屋で整理をする事になった。一応雪代さんが定期的には整理整頓をしているが棚の上に荷物を上げる等は、流石にお願いしたかったらしいので、ここは若い自分の出番である。雪代さんに貰ったメモの通りに荷物の入った段ボールやコンテナボックスを配置していく・・・・結構あったがそうは若人の力。一時間程で終わり、雪代さんを呼びに行こうかとすると、物置小屋の扉が開いたので
「あ、雪代さん終わり・・・て、なんだ葵か。」と何故か物置小屋に来た葵に少しばかりビックリしていると
「総ちゃん、大丈夫?何か手伝おうか?」と聞いてきたので
「大丈夫、大丈夫、ちょうど終わったタイミングだったし。それよも葵はなんで物置小屋に来たの?」と素朴な疑問を投げかけながら、
「・・・えっと、その・・・総ちゃんや朱鷺子さんが一生懸命にお仕事してるのに私だけ何もしてないのも・・・とおもって。」
「なんだ、そんな事か。大丈夫だよ。元々母さんは葵の所で働いているんだし、俺も暫くの間お世話になるんだからこの位はしないとな。」と言うと
「でも、総ちゃん勉強の方は大丈夫?今回も結構課題あったけど?」と言われ、自分は少しの間、現実を直視した・・・何故なら・・・
(今回の課題はまた量が多い・・・非常に遅れ気味なんだよな・・・どうしたものか・・・)と思っていた所、葵が
「・・・しょうがないね。協力してやろっか。」と言うと
「そうだな、皆を呼んでやればなんとかなる。うん。」と力説している自分を見ながら葵が小さくボソッと
「・・・そうなんだけど・・・総ちゃんのバカ・・・・」と言ったのは全く聞こえなかった。
そうこうしている間に雪代さんが来ていたみたいで
「・・・葵様、ここで何を?・・・・」と雪代さんは葵がここに居た事に少し驚き、自分の方を見て少し不機嫌になった感じがした・・・
「え・・・っと・・・」と葵が答えに困っていそうだったので、自分が
「いや、自分の課題が遅れ気味なので皆と一緒にやろうと言う話をしていた所でして・・・」
「・・・それならば、この様な場所でなくてもよろしいかと思いますが。・・・まぁ、いいでしょう・・・ところで総一郎君、終わりましたかね。」
「あ、はい。 一応貰ったメモの通りにしておきました。」と言うと雪代さんは物置小屋の中を一通り見渡すと
「そうですね。ご苦労様でした。これで新年の準備は一通り終わりましたね。」と雪代さんから労いのお言葉をもらい、自分と葵は一旦お屋敷の部屋に戻る事にした。お屋敷の中に入ると、母親が
「総、お疲れ。・・・少しホコリぽいわね・・・一回お風呂入っちゃいなさい。」と言われたので、大人しく準備し、お風呂場に向かうと、葵がお風呂場の前で待っており
「総ちゃん、これ朱鷺子さんから。」と一本のスポーツドリンクを貰った。
「ありがとう。葵」と感謝を伝えながら貰うと
「朱鷺子さんから伝言。 しっかり綺麗になってかた出てきなさい だって、じゃあね。」と言って葵は部屋の方に戻って行った。葵を見送りながら心の中で
(・・・ラブコメみたいにラッキースケベ・・・・なんて起きないのか・・・・)と少しガッカリしながらお風呂に入る事にした・・・・