第162話 冬のトラブル。
総一郎が帰って来る前日 朱鷺子は非常に困っていた・・・・
「・・・参ったわね・・・」と給湯器のエラーメッセージを見ながら朱鷺子は途方に暮れていた。既に電気屋さんには連絡をし、見てもらったが部品の取り寄せも、新品への交換も年明けになってしまうとの事。冬の寒い時にお風呂も皿洗いも水で済ます・・・・考えただけでブルブルと体が震えてきた。取り敢えず新品の給湯器を注文しておいて、一旦勤務先である葵の屋敷に向かう事にした。
勤務先の葵の屋敷で仕事中でも、気が気では無かった。自分の息子が帰って来るのにどうしようかと考えていると、
「朱鷺子さん、あまり仕事に身が入っていない様ですが、何かありましたか?」との雪代の問いに
「・・・実はガス給湯器が壊れまして・・・どうしようかと思いまして・・・」と困っていると雪代が
「・・・それはお困りですね・・・・うーーーーーーーーーーーん、それではしばらくの間こちらの屋敷で過ごされてはいかがでしょうか?お部屋も空いてますし。」と言った雪代はとても苦々しい顔をしていた。
「・・・・雪代さん、お気持ちは大変嬉しいのですが・・・」と気持ちだけ頂こうとしたが、
「ですが明日から寒くなるようですし、困った時はお互い様ですよ。葵様もお世話になった事ですし・・・それに総一郎君の事を信頼してますから・・・」と言うと朱鷺子は
「助かります。では早速準備をしてまいりますね。」と言って、準備に向かっていた朱鷺子の後姿をみながら雪代は
「・・・・信頼してますよ、あなたの息子さんを・・・」と雪代は小さく呟いた。
その後、準備の終わった朱鷺子は葵にメールを送った。
『葵ちゃんへ、家の給湯器が壊れたのでしばらくお屋敷でお世話になります。』と送ると自分の息子にも送ろうとしたが、雪代に呼ばれたので
(・・・・後でいいわね・・・・)と仕事に戻ってしまい、その後はすっかりその事を忘れていた。
一旦自宅に戻り着替え等を用意していた朱鷺子だが携帯を屋敷に忘れた事に気が付いた。
(まぁ、葵ちゃんから聞くかな・・・・一応張り紙だけしておきますか・・・)と玄関に張り紙だけして翌日の葵と息子の帰省に備える事にした。
総一郎は準備を終わらせて葵の屋敷の前まで来ていたが、いきなりの事象に戸惑い
(・・・・ヤバイ、ヤバイ、・・・・なんか緊張してきた・・・・・)と、どうやってインターホンを押そうかとしていると
「あ、総。お帰り、早速なんだけど荷物置いたらちょっと手伝ってほしい事があるんだけど。」との母親の声に
(・・・・なんか、平常運転だな・・・・)と感じつつ
「・・・ハイハイ、荷物はどの部屋に?」と聞くと
「二階に上がっての、右手の客間。」と言ってきたので
「ああ、あそこ・・・」と言ったタイミングで思い出した。二階に上がって右手の客間・・・そこは昔小学生の時位にお泊り会で、よく使っていた場所である。よく覚えているなぜなら隣の部屋は葵の部屋であった。
「ちょ、っと母上殿、そこは・・」と母親に意見を述べようとすると
「おお、総一郎君、よく来たね。」と雪代がとても素敵な笑顔で出迎えてくれた。
「お、お久しぶりです。雪代さん。本日よりお世話になります。」とお礼を言うと
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。」との、雪代さんの笑顔の返事に圧力を感じつつ、早速部屋に荷物を置きに向かおうとすると、、何故か雪代さんも後を付いてきた・・・・・
「・・・・あの、何か・・・・・?」と聞くと
「いえいえ、場所が分からないと大変かと思いまして。」との答えに
「大丈夫ですよ、昔はよく・・・き・・・て・・・・」
「そうですね、昔はよくお泊り会とか、されていましたし・・・・ですが、もう大人ですからね・・・・一応・・・・ね・・・・」 と言う雪代さんの笑顔に物凄い圧を感じたので自分は早速部屋に荷物を置き、
「・・・・では母の手伝いに行ってきますので、・・・失礼します。」と言ってその場を離れる事にした・・・・母親の元に行くと
「あら、早いわね。じゃあ早速よろしくね。」と荷物の移動を手伝いながら時間は過ぎていった。