第161話 他人からは評価されていない・・・・
教室には自分と教官の二人っきり・・・・・そして・・・
「そこまで。」との合図で鉛筆を置く
「では、少し待ちなさい。」と試験役の教官が採点をしていたが、自分は既に結果が分かっていた・・・
「また明日再試験を行います。」との無慈悲な宣告を受け、皆の待つ自習室に向かう事になった。
自習室に着き、皆が自分の顔を見て結果は察してくれた・・・・
早速、葵は自分の答案用紙を見てから・・・
「・・・総ちゃん、やっぱりスペルミスが多いね・・・でも基本は出来てるし次は大丈夫な・・・はず・・・・」と弱弱しく言っていた・・・・そんな中、陽斗が
「総一郎は本当に英語が苦手だね。でも前回よりも良くなっているし、次は大丈夫だよ。」とエールを送ってくれ、自分は感謝しつつ
「ありがとう、陽斗。次こそは合格できるように頑張るよ。」と言うと葵が
「じゃあ、総ちゃん早速間違えた所の見直しをしようか。」と葵との個人授業が始まった。
葵の教え方は非常に分かりやすかった。それなのに・・・と自分の不甲斐なさを噛み締めながら見直しに余念が無かった。
次の日・・・・再び教官と二人きり・・・・・そして・・・・・
「よし、合格だ!お疲れさん。」とギリギリ合格の答案用紙をもらいやっとこの苦労から解放された・・・・
(・・・やっと、合格か・・・・前世からどうも英語は苦手だな・・・・)と考えつつ、廊下を歩いていると、空き教室から話し声が聞こえてきた。
「なぁ、聞いたか?あの加治って奴、こんな簡単な試験で赤点なんだと。」
「マジで!ありえねー 今回の試験マジで楽勝だったのに、赤点とか笑う。」
「しかも、追試を三回も」
「馬鹿じゃねぇの。マジで! それに交流戦で勝ったといっても殆ど押されっぱなしで、最後にまぐれで勝てただけだしな」
「それそれ、あんな奴が葵さんの幼馴染とか羨ましすぎるぜ。まぁ、付き合うとかはなさそうだがな。」
「そうだな。入学当時は色んな奴がアタックしたが全滅だったしな。」
「お前もその内の一人だけどな。ウケるし。」
「・・・チ・・・嫌な野郎だぜ・・・おい、そろそろ帰ろうぜ。もうすぐ飯の時間だ。」と教室を後にしていた。自分は見つからない様に隠れていたが心の中では
(・・・・やっぱり、まだ無理だよな・・・・)と未だに葵の横にすら立てない そんな自分の不甲斐なさを感じながら、何も無かったように皆の待つ自習室に行き、結果を報告して帰る事にした。
寮までの道中、本当に少しだけだが自分の足取りは重たかった・・・・
(・・・ハァ・・・どうして・・・こんなに俺はダメなんだろう・・・・)と思っていると葵が
「・・・総ちゃん、さっきからなんか考え事でもしてるの?」と聞いてきたが
(・・・言えないよ、自分の不甲斐なさで、葵に告白出来ない事に悩んでいるなんて・・・)と思いつつ
「なんでもない、なんでもない、追試が終わって疲れが出たのかな? ほら早く行こう。」とカラ元気で何事も無かったようにするのが精一杯だった。
(・・・・総ちゃんの嘘つき・・・・何か悩んでいるのに、それを表に出さないのは昔からだよね・・・)と 葵が思っている事に自分は気付く事は無かった。
自分の追試も終わり、終業式も終わると、自分達は地元に向かうバスに揺られながら、久々に家族に会えるのを楽しみにしていたが葵が少しだけよそよそしくしていたのを疑問に思いつつ、最寄りのバス停に着くと、それぞれの家族が出迎えてくれていたが、相も変わらず、自分の親は現れなかった・・・・
(・・・またか・・・)と思っていると
「・・・じゃ総ちゃん、またね。・・・」と言って早々と帰っていった。
自分も自宅の方に向かっていたが、途中で葵の一言が気になった。
(・・・またね?・・・まぁ、正月には会うかな?)と深く考えずに家に着き玄関を開けようとするとそこには張り紙がしてあり、
『 給湯器故障につき、葵ちゃんの家まで来ること。着替えなどを忘れずに。
母 より 』
との張り紙を見て
(・・・・・・なんで、張り紙????てか連絡してよ・・・)と疑問を思いながら、荷物の整理をする事にした・・・荷物の用意をしながら
(・・・・・ちょっと待って・・・・葵の屋敷に泊まるの・・・)と気づき、葵がよそよそしくしていた原因が分かったと同時に、自分の理性が試される事に気付いた・・・・・