第151話 応援の力
交流戦会場に着き、一息ついてから扉を開けた。
そこは、すでに異様な熱気が籠っており、自分達はその空気感に一気に飲み込まれた。
既に対戦校は試合の準備を始めており、自分達も慌てながら始めていたが、全く集中は出来なかった。
心の中では
(・・・マズイなこれは、すっかりこの雰囲気に飲み込まれた感じだし・・・)と思っていると鈴木も佐藤も
「全く、燃えてくる展開だな。」
「ああ、これで勝てば値千金の勝利で、評価爆上げ間違いなしだぜ。」と、結構打算的な事も言っていたので、心配は要らないと思っていた。むしろ自分自身の心配をする必要があった。向こうの大将の名前を見て驚愕したが、大将の名は : 源 隆 : と書かれていたので困惑していたが自分自身を信じて挑む事しか出来ない。そう思って自分も準備をしていた。
交流戦会場から少し離れた中庭の片隅で葵は俯いていた。
(・・・結局、言えなかった。だた一言。頑張って・・・それだけでよかったのに・・・)と何故、自分の気持ちに素直になれないのか、それだけを後悔していた・・・
もう間もなく交流戦も開始されるが、今いる場所から動ける気がしなかった。
どれだけの時間が経ったのか、ふと自分の前に誰かの存在を感じたので目を上げてみると、目の前には司が立っていた。
「ハァ、ハァ、やっと見つけてよ。葵。全く、ほら早く会場に行って総一郎達の応援に行こうぜ。」と言うと葵は
「・・・なんで、司君が・・・ここに?・・・」と鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたので、司は葵のおでこに、デコピンを一発くらわした。そのデコピンに葵は悶絶していた。
「何するの!司君のデコピンは昔から何故か痛くて、痛くて、しかも女の子に手を挙げるなんて・・・」と言った所で葵は言葉を詰まらせた・・・
「・・・なんで、葵こそ、こんなところで何をしているの?そんなにあの、自称婚約者の事を気にしてるの?葵はもっと気持ちを正直に出していいと思うよ。そうじゃないと人生損だもん。」と言われ葵は、少しの間考えてから、司が
「・・・葵、ガンバって。・・・」と言うと
「・・・・司君、デコピンのお礼はきっとするからね。・・・・」と、言って交流戦会場に向かって行った。
葵を見送りつつ、司は、おでこの辺りを抑えつつ、
(・・・大丈夫だ、葵のデコピンはそんなに痛くないし・・・)と思いつつ、自身も交流戦会場に向かって行った。
葵が交流戦会場に入ると大きな声援が聞こえてきた。葵はほんの少しだけホッとしたが直ぐに気付いた・・・・その声援は、総一郎達ではなく、相手方の学園の応援という事に。
「いっけー、押せ押せ 源 ファイト。」と応援団からなる声援と
「源君、ファイトーーー」と女生徒の声援とまさに源の応援一色であり、自分達の学園は既にお通夜状態になっていた。
葵は自分達の学園の応援席に着き、陽斗に状況を聞いた。
「陽斗君、どうなてるの?」と聞くと
「・・ああ、葵、いや、同じ訓練生かと思う位の力の差で・・・鈴木と佐藤は開始五分位で負けてしまって、総一郎も圧倒的に追い詰められていて・・・・」と総一郎の方を見てみると、葵は目を奪われた。
圧倒的に押し込まれている総一郎、しかし巧に攻撃を躱していた。その頃実際に戦ってていた二人の間では、剣を交えながらの戦いが行われていた・・・
「全く、いい腕ですね。私の攻撃をここまで防ぐのも第三学園に数人もいませんよ。」
「・・・それはそれは、光栄ですね・・・ちぃ・・」
「まだまだ、私の方は余力がありますが、貴方は最早限界でしょう。さっさと降参してくれませんか?」
「・・・へ、断るぜ・・・」
「何故です?気絶より降参の方がまだ言い訳がたちますよ。お仲間も既に降参してますので早くお願いしますね。」と言われ
「・・・俺にも意地があるんでな・・・少しでも可能性が有れば勝利を手につかみたいんでね・・・」
「そうですか・・・ではそろそろ、終わらせますかね・・・」とより一層攻撃のテンポが上がった。
(・・・これは、もう・・・)と内心諦めかけた・・・・
「総ちゃんガンバレーーーーー!!」と葵の声が会場中に響いた・・・
その瞬間、源は動揺した。その一瞬を見逃さなかった・・・・・・
相手の剣を弾いた・・・・・・そして相手の喉元に剣を突き立てた・・・・・
しばらく会場に沈黙の時間が過ぎた・・・・・審判のコールがあり
「そこまで、勝者 第六学園 加治 」