第149話 夜更かし厳禁!!
中庭のベンチに座っていると意外な人物が現れた・・・源さんだった。
「・・・あれ、君は・・・・確か・・・葵さんと一緒にいた・・・」
「ああ、確か、源さんでしたっけ?どうしてここに?」
「いや、緊張で寝付けなくて・・・そういう・・・え、っとお名前は・・?」
「あ、すいません、自分 加治 総一郎 と言います。」と今更ながら自己紹介をすると
「そうでしたか、加治さん・・・私の名前を知ってるとは葵さんから経緯は聞きました?」
「ええ、大まかには・・・」
「全く、今時、許嫁なんて時代錯誤も甚だしいと、父には言ったんですけどね・・・まぁ、少し悪戯心が出てしまい葵さんには迷惑を掛けてしまいましたがね。」と悪びれることなく言ってきた事に自分は少しカチンときたが、転生者である自分は、大人な対応でやり過ごす事にした。
「悪戯で、手の甲にキスをしてはいけないと思いますけどね・・・下手したら痛い奴かと思ってしまいますよ。」
「・・・そうですか・・・確かに許嫁では無いですが、好意は持っていますからね。特に問題は無いでしょう。あなたにどうこう言われる筋合いも無いですけどね。」と言われ自分は何も言い返せなかった・・・・
「あなたはただの幼馴染じあって、恋人ではないはず。それなのに私の行動や葵さんの事でとやかくいわれたくないですね。」と止めを刺された感じがした・・・何も言い返せずにいると
「では、もう失礼します、明日の交流戦に影響を及ぼすといけないので、ではこれにて失礼します。」と言って自室に戻るであろう、源を見送りつつ、自分も部屋に戻ったが、なかなか眠りにつく事は出来なかった・・・・
翌朝、目が覚めると、体がだるいかった・・・・
(・・・やっちまった・・・こんな時に寝不足とか・・あかんやろ・・・)と自分自身にツッコミを入れつつ、いつも通りに身支度を整え、朝食を食べて、徐々に襲ってくる緊張感に、心が押しつぶされそうになっていった。皆には平然を装いトイレに行く振りをして、一旦皆の元を離れた・・・
しばらく歩くと中庭のベンチを見つけたので一旦座る事にした。座ると急に眠気が襲ってきた。
(ヤバイ・・・眠気に緊張で・・・色々・・・ヤバい・・・かも・・・)と思いつつ、ベンチに座り俯いていると、声を掛けられた・・・知っている声を・・・・顔を上げるとそこには葵が居た・・・・
「総ちゃん、大丈夫?さっきから顔色が悪そうに見えたけど?」と見透かされていたので
「ああ、・・緊張で寝れなくて・・・参ったよ、全く・・・」としょげながら言うと、葵が
「・・・総ちゃん、緊張してるの?大丈夫だよ。いつも通りにすればいいんだし。ほら、リラックス、リラックス。」と葵は励ましてくれたが、源のセリフが頭を過ぎった。
(恋人でもないはず。) その言葉を思い出すと胸の中が苦しくなった。
「・・・ちゃん・・・総ちゃん。本当に大丈夫?」と葵が心配そうに聞いてきたので
「ああ、大丈夫、・・・そろそろ行くよ・・・」と強がっていたが急に立ったせいか立ちくらみがした。当然葵は更に心配になって駆け寄って来て
「ねぇ、総ちゃん無茶は・・・」と言い掛けのところで、自分は
「・・・無茶でもやらなければならない。男には引くに引けない時も有るんだから・・・」と気合を入れ直していこうとしたが、葵が手を離してくれなかった。
「・・・あの、葵、手を離してほしいんだけど・・・」と言っても葵は無言のまま手を離そうとはしてくれなかった。
「・・・・・・・・あの、葵、おねがいだから手を離してほしいんだけど・・・・」と言ってから、しばらくして、やっと葵は手を離して言った・・・
「・・・怪我しないでね・・・もう嫌だからね・・・」と切ないお願いを言って葵は戻って行った。
葵を見送りつつ自分は
(・・・葵、それは中々難しい注文だよ・・・)と思い天を仰いでいたが、覚悟を決め、控室に向かって行った。