第145話 婚約者?
「ねぇねぇ、葵さん、先程の殿方の仰っていた事は本当なんですか?」
「婚約者がいらっしゃったんですね、なんで秘密にしていたんですか?」
と、学園の女性陣の質問攻めにあっていたが、澪と紬が
「まぁまぁ、みんな凄く気になると思うけど、葵も疲れているから今日の所はここまでにしましょう。」
「そうそう、今日は解散、解散」と言うと多数の女子生徒から不満の声が聞こえつつも、お風呂や、明日の用意等、準備する事はいくらでもあるので、各自割り当てられた部屋に向かって行った。
そうこうして、葵に割り振られた部屋に入って落ち着いたタイミングで、葵は意を決して話し始めた。
「・・・ごめんなさい。皆に迷惑かけて・・・」と言ったが紬が
「親友である私達にも黙っていたなんて、ホントに葵は酷いね。もう信じられない。」
「え、・・・その・・・」と葵は今にも泣きそうになっていたが澪が紬を諭しながら
「紬もそんな事思ってないでしょう。イジワルはその位にしなさい。」と言うと
「は~い。ごめんね葵。ちょっと意地悪し・・・」と、葵の方を見ると涙をこぼしながら
「・・・ごめんなさい、私、わた・・し・・・」と号泣とはいかないが、ポロポロ涙を流している光景に、澪も紬も驚愕し
「大丈夫よ、葵、紬も私も決して葵の事を嫌いにならないから、ね、だから泣かないで。」
「本当にごめんなさい、本当に少しだけ意地悪し過ぎたわ。ごめんなさい。」と二人がなだめて少し経った頃に、やっと葵は落ち着きを取り戻した。
「ごめんなさい、少し混乱して、感情的にちゃった。・・・・もう大丈夫。」といつもの葵にもどったので二人は少し安心した。
「じゃ、今日の所は解散しましょうか。」と澪が言ったが葵が
「ううん、二人は聞いてほしい。」と葵が言ってきたので、澪と紬はお互いに顔を見合わせてから
「大丈夫、葵、ちゃんと聞くからね。」
「そうそう、このままだと気になって眠れないし」と澪と紬は、笑顔で答えた。
「ありがとう、二人共・・・・どこから話そうかな・・・・昔なんだけど、あの人、名前は
『 源 隆 』 (みなもと たかし)さんて言って
昔、実家の方でお世話になったんだけど、その時から何故か私と源さんの結婚て話が出たんだけど、戦争の影響でこっちに来てからは全く音沙汰が無かったからてっきり無くなった物だと思っていて・・・全く今の今まで覚えていなかったよ・・・」と、葵は語り終わると、澪と紬はお互いに顔を見合わせながら
「そうなんだ、まぁ葵もそんな感じなんだ、いいんだけど・・・」
「・・・そうね、問題は相手方と・・・・ねぇ・・・」と二人は、今ここにはいない、葵の事を思っている人物の様子が気になっていた。
その人物を思い出した時、その人物は
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたのを思い出していた・・・・・
ところ変わって、ここは総一郎に割り振られた部屋に、司と陽斗が集合していた。
自分は放心状態で二人からの問い掛けに
「なぁ、総一郎、腹減ってないか・・・」
「・・・いい・・・」
「風呂行って少し汗でも流さないか・・・」
「・・・いい・・・」
「これは、重症だな・・・・」と陽斗が言うと
「先生、見捨てないで下さい。」と司が揶揄する様に言ってきたので、陽斗は司のおでこにデコピンを一発喰らわせた。司は悶絶しながら
「・・・すいません、悪ふざけすぎました・・・はぁ・・・」とため息を吐きつつ
「なぁ、総一郎、一旦葵と話しないか・・・嫌だろ、直接聞くまでは・・・」と言われたが
「・・・いやだ・・・」
「なぁ、総・・・・」
「もういいだろ、放っといてくれ・・・」と半ベソになりながら、イジケて布団を被ってしまった。
そんな自分をみて二人はどうしようか考えていたがその時、陽斗の携帯にメールが来てそのメールを見た陽斗が、
「総一郎、イジケている所すまないが、緊急ミッションだ。」と言って被っていた布団を剝ぎ取った。
「なんだよ、陽斗、緊急ミッションなんて意味が分からない・・ほっといてくれ・・・」と剥ぎ取られた布団を取り返そうとすると、司と同じようにデコピンと喰らい、自分が悶えていると
「いいから行け、行かないと後悔するぞ!!」と言われ、陽斗のい言う通り、ロビーの方に行く事になった。
(全く、陽斗のデコピンは何故か物凄く痛いんだよな・・・)と色々考えながらロビーのに着くとそこには、今一番会いたくない人物 葵がロビーのソファーに座って待っていた。
その事に気付いて、葵からは死角になる位置で隠れてしまった。
自分は気まずい思いがあったので、部屋に帰ろうとしたタイミングでいきなり押し出された。
「うわぁ、」と変な声が出てしまい、当然ながら葵も気付いた。そしてお互いに顔を見合わせながら固まってしまった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」としばらくの間沈黙が続いた。
その沈黙に耐えられなかった自分はただ一言
「・・・・おやすみ・・・・・」と言って部屋に戻ろうとしたが葵が
「総ちゃん!・・・あの、その、、、おやすみなさい。」と言って葵も部屋に戻って行きそうになった。
このままでは、二度と葵とは話せない、離れてしまう・・・そう思った。
意を決して
「・・・葵、少しだけ・・話をいい?」と聞くと葵は小さく頷き、近くに有ったソファーに二人で座って話す事になった。